軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

204.全力の激励

ダルアーネを出た俺は、フウカと一緒に北へと歩を進めていた。

そして、南下してきている魔獣の群れを視認したところで、セルマさんに念話で状況を伝える。

『あと五分ほどで第一波の群れと接触する。距離はダルアーネから北北西に一五〇〇メートルだ』

『了解した。ハルト、魔獣の群れの動きはどうだ? 未だに全員ダルアーネに向かっているか?』

俺の念話に応じたセルマさんが更に状況を掴むために、単独で別行動をしているハルトさんに声を掛ける。

『予想通り魔獣の一部は近くの村へと進路を変えている。そっちは俺が間に合うからこっちで迎撃しておく』

『よろしく頼む。先ほどの打ち合わせでも伝えたが、最前線の攻防はお前たち三人に任せる。好きに暴れてくれ。討ち漏らしが居ても私たちが絶対に街に被害を出さないから安心してくれ』

魔獣との戦闘が間近に迫っているところで、改めてセルマさんから自由に戦って良いと許可が下りた。

その声音はいつもの彼女だった。

ここ最近、セルマさんの俺に対する態度がどこかよそよそしかった気がしていたが、もしかしたら俺の考えすぎだったのかもしれない。

考えれば、実家で色々とあったんだから、ナーバスになっていても仕方ないだろうしな。

「フウカ、予定通り最初は派手に行く。生き残った魔獣は全部ぶった切れ!」

俺が隣のフウカに声を掛けると、フウカはいつもと変わらない表情でコクリと頷く。

「そういうのは、大得意。任せて」

フウカの応答を確認してから、俺は向かってくる魔獣の群れへと近づきながら、脳内で術式を構築する。

術式が完成したところで、氣を乗せた声を発する。

「――【 封印解除(カルミネーション) 】」

俺の言霊と体内を巡る氣が、俺を縛り付けるものを取っ払う。

初撃は派手に広域を一気に消し飛ばす。

俺が知っている攻撃の中で、それに一番適しているのは、《アムンツァース》のシオンがレグリフ領で竜群に対して行った連続爆撃だ。

あれの仕掛けを説明するのは簡単だ。

【 超爆発(エクスプロード) 】を一瞬のうちに連続発動することで、まるで誘爆して周囲に爆発が広がっているように見えていただけのこと。

シオンの術式構築が速いとはいえ、特級魔術を短時間であれだけ発動することは、人間の脳が耐えられるわけがない。

通常のやり方では不可能だと言い切れる。

それを可能にしているのがあいつの異能、【時間遡行】であると思っている。

その異能をどう解釈することで、連続で特級魔術を連発しているのかわからないが、これなら俺の異能の拡大解釈で 再現できる(・・・・・) 。

俺の異能である【重力操作】、それを深く 識(し) ったときに気づいたことがある。

重力は 時間に干渉できる(・・・・・・・・) 、と。

まぁ、タイムスリップをしたり、時間を停止させたり、なんてことまではできないが。

「――【 時間膨張(インフレーション) 】」

それを識って、編み出したのが、俺の時間を引き延ばすこと。

要するに、全てがスローモーションに見えるということだ。

これの使用にはいくつか制約があるから、常に使うことはできないが、条件さえ揃えば、そのアドバンテージは計り知れない。

今回はそのアドバンテージを術式構築に回す。

「――【 超爆発+連鎖(エクスプロード・チェイン) 】!」

俺は術式構築が完了した都度、【 超爆発(エクスプロード) 】を発動していく。

しかし俺以外の者には、短時間で大量の【 超爆発(エクスプロード) 】が発動されたように感じるはずだ。

大量の爆発が魔獣の群れを襲う。

「まだまだ! 【 千刃の竜巻(サイクロン) 】!」

【 超爆発(エクスプロード) 】を連発しながら、並列構築していた風系統の特級魔術である【 千刃の竜巻(サイクロン) 】を、範囲を可能な限り広げて発動した。

自分の体感時間を周りに合わせてから、前方を確認すると、壊滅状態になった第一波の魔獣の群れを視界に入れる。

「ふぅ……。少し休憩。残党はフウカに任せる」

「……派手に、とは聞いてたけど、ここまでする必要あった?」

後ろに居るフウカに後処理をお願いするために振り返ると、彼女がジト目をこちらに向けてきていた。

いつもマイペースで、我関せずといった感じのフウカであるが、流石に今回はツッコミを入れてくれた。

うん、俺もやり過ぎたとは思っている。

「まぁ、これは俺なりの弟子たちへの激励だから。全力で行かないとな」

「それだと、逆に委縮しそうだけど。……じゃあ、私は残党を斬ってくるからオルンは休憩してて」

フウカがやや呆れたように俺に言葉を残すと、鞘から刀を抜いて魔獣の残党たちの元へと駆けて行った。

『オルンさん、迷宮に到着しました! これから攻略を始めます!』

相変わらず舞のように美しいフウカの戦いを眺めながら、次の作戦を考えていると、脳内でソフィーの声が響いた。

本当は「無茶するな」、「厳しかったら戻って来て構わない」と言いたかった。

だけど、そんなことは弟子たちも百も承知だろう。

だから今の俺から掛けられる言葉は――。

『あぁ。わかった。お前たちの健闘を祈っている。お前たちなら迷宮を攻略できるよ。地上のことは気にせず、攻略に全力で当たってくれ!』

『はい! 行ってきます!』