軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17.【side勇者パーティ:オリヴァー】金持ち

ルーナがリビングから出てしばらく経った頃、ようやく記者が数名屋敷にやってきた。

彼らをリビングに連れてくる。

記者は微妙な反応をしていたけど、人数多いし、この部屋で問題ないよな?

「い、いやぁ、オリヴァー様自ら我々の取材に応じていただけるとは、非常に光栄です」

「なに、取材を受けるのも俺たちの務めだ。それに今日は話したいこともあったからな」

「話したいこと、ですか? それは非常に気になりますね!」

「ふっ、隠しておいてもしょうがないから、早速教えてやる。それは、パーティメンバーを1人入れ替えることにした」

それから俺は記者に包み隠さず全てを話した。

オルンが無能の付与術士であったこと。

その代わりに、西の大迷宮で活躍していたフィリーをパーティに迎え入れたこと。

足手まといが一人居た状態で、九十四層に到達していたこと。

欠点が無くなったこのパーティなら九十五層到達、いや、南の大迷宮の攻略もそう遠くない未来に達成できるであろうこと。

その全てを。

「いやぁ、まさかここまでの話を聞けるとは、明日の一面は決まりましたね!」

「あぁ、大々的に報じてくれ」

大々的に報じてくれれば、それだけ貴族から金を貰えるしな。

この話を聞いて、俺に投資しない貴族なんかいないだろ。

そうすれば、オルンが金の無駄だと言って買っていなかった魔導具も買える。

普段は各々勝手に夕食をしているが、今日はフィリーの歓迎会をするために、全員で食事をすることにした。

この街で有名なシェフを屋敷に招いて料理を作ってもらった。

その時に「毎日のように使われているのに、手入れが行き届いていますね!」と褒められた。

ここのキッチンを使う奴なんて居ないのに、なんでこのシェフはそんな意味のないことを言ったんだ?

ルーナも流石に歓迎会をほっぽり出すことはしないようだ。

まだ、元気は無いようだけど、明日には調子を取り戻しているかもしれないな。

「それじゃあ! 改めて! フィリー、ようこそ勇者パーティへ! これからよろしく!! 乾杯!」

「「かんぱーい!」」

「ありがとうございます。このような高そうな料理まで用意していただいて」

「なぁに。問題ねぇだろ。口うるさい金庫番も、もういねぇんだしな! 知ってるか? あいつが管理していた 帳簿(チョーボ) だっけ? 金が書いてある紙を見たんだけどよ! その金額見たら目玉飛び出すかと思うほど金があったんだよ!」

「あれは驚いたわよね! あれだけお金持ってたのに、なんでアイツはあんなにケチだったのよ! お金あるなら使わなきゃ損じゃない!」

ん? 帳簿?

確かに金の管理はオルンに一任していたが、俺たちってそんなに金を持っているのか?

そういえば、いくら貯金があるかとか、知らないな。

「いや、あれはあいつが一人で遊ぶ時のための金だね! あいつに金の管理をさせていたのは間違いだった! 追い出して正解だったな! 俺たちの金が知らず知らずのうちに使われるところだったぜ!」

「あの、それはパーティの活動資金では?」

デリックの発言にフィリーが質問を投げかける。

「ん? 活動資金? 俺たちは必要なもんは自分たちで金を払って用意しているぜ?」

「いえ、そうではなく、迷宮探索以外にもお金が掛かるでしょう? 例えばこの屋敷の家賃とか」

「あぁ。家賃か。なるほど。そういうのにも金は掛かるもんな。でもあれだけ金があるなら、いっそこの屋敷を買っちまったほうが早くねぇか? どうだ、オリヴァー。この屋敷買っちゃわねぇか? どうせしばらくここを活動拠点にするんだしよ。出て行くことになったら売っぱらえば良いんだしな!」

「デリック、天才! そうしましょうよ! そうすれば残ったお金は好きに使っても問題ないんだし!」

「それについては追々考えていこう。とりあえずは直近の予定だ。明日は一日フリーにして、明後日九十二層に潜ろうと思う」

早速九十四層の攻略、と言いたいところだが、流石にそんな無謀なことはしない。

九十二層で連携を確認して問題が無ければ、満を持して九十四層の攻略に乗り出すつもりだ。

「はぁ? なに 温(ぬる) いこと言ってんだよ。九十四層の攻略一択だろ!」

「そうよ! フィリーが加わった今なら九十五層到達も簡単なはずよ!」

「お前たちの気持ちもわかる。でもフィリーは初めての南の大迷宮なんだ。これまで深層に潜ったこともない。であれば俺たちも初見の階層ではなく、フォローできる階層で連携の確認をするべきだと思うんだ」

「確かに、フィリーは深層に潜るの初めてだったな」

「そうね。なら最初はオリヴァーの提案通り、九十二層の探索をしましょ」

「皆さん、私のためにすいません」

「気にするな。俺たちは仲間だ。これからのフィリーの活躍に期待しているからこそ、九十二層に行くんだ」

「私は反対です」

話がまとまりかけたところで、反対するものが現れた。

先ほどまで眉間にしわを寄せながらも、口を挟んでこなかったルーナだ。

「テメェは、また! パーティの輪を乱してんじゃねぇよ!」

「デリック、落ち着け。ルーナなんで反対なんだ?」

「単純な話です。私に自殺願望はありません」

自殺だと?

まるでこのまま九十二層に行ったら死ぬようないい方しやがって。

「ルーナ、俺たちは九十二層に行っても死なない」

「……何故そう言い切れるのですか?」

「俺たちはオルンを含めて九十四層まで到達している。そして今はオルンよりも数段優秀な付与術士であるフィリーが居るんだ。このメンバーなら俺たちのレベルは数段上がることになる」

「私はフィリーさんの実力を知りませんが?」

そういえばそうだった。

ルーナには今日フィリーが加入したことを告げた。

フィリーの実績を教えれば、考えも変わるか。

「彼女は西の大迷宮で活動していた探索者だ。そして西の大迷宮の百層まで到達している」

「西の百層まで……。確かに優秀な付与術士と言えるかもしれませんね。百層というと《英雄》のパーティに所属していたのですか?」

《英雄》とは、西の大迷宮を攻略した探索者の異名だ。

なぜ英雄と呼ばれているのかはわからない。

「い、いえ。そことは別のパーティです」

「そうですか。彼女が優秀な付与術士だということはわかりました。――それでも私は九十二層に行くことに反対です。」

こいつはいつまでオルンのありもしない幻想を見ているんだ!?

いい加減現実を見てほしい。

「ルーナ、これは決定事項だ。拒否は許さない」

「はぁ……。わかりました。………………もう終わりのようですね」

ルーナが承諾した後、小さく呟いた。

恐らく近くにいた俺にしか聞こえなかっただろう。

そうだ、もう終わりだ。

明後日の探索でオルンの実力が如何に低かったかを理解するはずだ。

そうしたらルーナも目を覚ますだろう。