軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1.追放

「オルン・ドゥーラ、お前には今日限りでパーティを抜けてもらう」

俺は耳を疑った。

いつも通り大迷宮の探索が終わり、先ほどパーティの拠点として借りている屋敷へと帰ってきた。それから今日入手した魔石や魔獣からのドロップ品を確認していると、突然パーティリーダーであるオリヴァーからクビを通告された。

青天(せいてん) の 霹靂(へきれき) とは、まさにこのことだな……。

「……なんの冗談だ?」

「冗談でも何でもない。今まではお前を、同じ村出身の昔馴染みということでパーティに入れていた。だが、もうお前の実力ではここから先の階層では戦えない。端的に言えば実力不足だ。だからパーティから抜けてもらう」

現在このパーティは、未だ誰一人として 最下層(百層) まで到達したことの無い南の大迷宮の、九十四層まで到達している。

九十四層まで到達したことのあるパーティは、歴史上でこのパーティのみ。

前人未到の記録を叩き出したこのパーティは勇者パーティと呼ばれ、多くの人たちから注目を集めている。

「俺の実力が足りていないことはわかっている。だけどそれは、パーティメンバー全員に言えることだ。今のままだったらこれ以上の攻略は――」

「それはテメーの支援魔術が 雑魚(ざこ) だからだろうが!」

俺とオリヴァーの会話にパーティの盾役であるデリックが口を挟んでくる。

「……雑魚?」

確かに俺の支援魔術は他の付与術士が使う支援魔術に比べれば、効果が低いことはわかっている。だからこそ、いくつものオリジナルの魔術を開発して欠点を補ってきていた。

そのおかげもあってか、 九十一層以降(深層) に行っても生き残っていられている。

雑魚とまで言われる筋合いはない。

「あぁん? 自分が雑魚だって自覚が無いのか? ははは! まさかここまで図々しいヤツとはな! お前がこれまで探索者としてやってこられたのは、単に俺たちが優秀だったからだ!」

開いた口が塞がらないとはこういうことか、初めて知った。

デリックが呆れてものも言えない俺を見て、勝ち誇ったような笑みを浮かべている。

図星を突かれて反論できていないとでも思ったのか?

「俺たちは付与術士というものがどれだけ重要な存在だったのか、よく理解していなかった。だから今まで最低レベルの魔術しか使えなくても、お前をパーティに入れていた。でも、先月の合同討伐の時に初めて付与術士の重要性を理解した。自分の体が羽のように軽くなって、力も防御力もあんなに上がるなんて。本物の支援魔術があんなにもすごいものだなんて想像もしていなかった!」

口を挟んできたデリックの話が終わったと思ったら、オリヴァーが当時のことを思い出しているのか、目を輝かせながら話し始める。

先月、突如地上にドラゴンが現れた。

早期討伐が必要であったことからSランクパーティ3組が、合同でドラゴンの討伐に当たった。

先月の合同討伐とはこの時のことだろう。

合同討伐では参加したメンバーの中に『大陸最高の付与術士』と呼び声の高い天才がいた。

確かに彼女と比べると俺の支援魔術では物足りなくなるかもしれない。

だけど、

「俺は付与術士が本職じゃないんだ。本職と比べて劣るのは当然だろ。だからオリジナル魔術を開発して――」

「言い訳してんじゃねぇよ!」

また、デリックが口を挟んできた。人の話は最後まで聞けよ!

「お前が付与魔術士にコンバートしたのは、オリヴァーよりも剣の腕が劣ってたからだろうが! それに探索者に求められるのは結果なんだよ! 過程なんざ関係ねぇ! てめぇがどんな経緯で付与術士になろうが、今は付与術士としてパーティに所属していて、その実力が劣ってんだ! 文句言える立場じゃねぇんだよ!」

「俺たちは勇者パーティなんだ。更に先へと進まなければいけない。既にオルンの代わりの付与術士は見つけている」

デリックの言い分は正しいが言い方ってもんがあるだろ。

これがこれまで苦楽を共にしてきた仲間に対する態度か?

とはいえコイツらにとって俺が不要な存在であるってことはわかった。

後任も既に決まっているなら、もうここは、俺の居場所ではないんだな。

「……わかった、出て行くよ。今まで世話になったな」

そう言いながら屋敷から出て行くために背を向けると、

「やっと抜けてくれるのね! はぁ、清々するわ!」

今まで俺のことをバカにしたような表情を向けてくるだけで、何も発言していなかった魔術士のアネリが満足気な声を発した。

「剣術も魔術も中途半端! 色々できるって言っても所詮は全てがAランクに届くかどうか程度の実力しかないくせに、あれこれ意見してきてムカついてたのよ! アンタみたいな奴を何て言うかわかる? 器用貧乏よ! そんなアンタが勇者パーティに居た、今までがおかしかったの! これからは身の程をわきまえた行動をしなさいよね!」

俺が振り返ってアネリを視界に捉えると、さっきまでの強気な発言が嘘のように黙りこくり「な、なによ」と弱弱しい声を発する。

こいつらは今まで俺のことをそんな風に思っていたのか。

このパーティに尽くしてきたつもりだったんだけどなぁ……。

何で俺は今までこんな奴らとパーティを組んでいたのだろうか。

心の中でため息をついてからドアを開けて外へと歩き出す。

さて、まずは寝床の確保をしないとな。

俺は気持ちを切り替えてから、適当な宿屋を探すために街を歩き始めた。