軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【コミック3巻発売記念SS】かんちがいと温もり

「こんにちは」

ある休日。王宮の中庭を散歩していたクレアは、目の前でキースの後ろに隠れようとする小さな男の子に微笑みかけていた。

「……こん……にちは」

男の子も、頬を赤くして恐る恐る挨拶を返してくれる。

柔らかな彼のブロンドの髪をわしゃわしゃと撫で回しながら、キースが笑った。

「俺の甥っ子だ。事情があって、今日だけ特別に預かってるんだ」

「まぁ、そうなのね。……初めまして、クレアと申します」

まだ3歳ほどに見える男の子は、クレアの挨拶にそっと手を伸ばしてくる。

「……ロイド」

(か、かわいい……)

「ロイドというお名前なのね。今日はキースお兄様と一緒の日なのね?」

「……うん……」

視線を合わせると、ロイドは目を輝かせてクレアの手を掴んだ。

「でも、クレアともいっしょにあそぶ」

「……!」

(なんてかわいいの……!)

「こら、ロイド。クレアにも予定ってものが」

「いいの。だって、今日のヴィークはリュイやドニと一緒に公務にお出かけだもの。時間はたっぷりあるわ」

ということで、王立学校の課題を終えて時間を持て余していたクレアは、その日一日をロイドと一緒に過ごしたのだった。

それからしばらく経ったある日。

クレアの部屋を、微妙な顔をしたヴィークが訪ねてきた。

「……どうしたの? そんな顔をして」

「クレアのところに行くと言ったら、キースにこれを渡すように言われた」

「……?」

ヴィークの手の上に載っているのは、ピンク色のリボンがかかった小さな箱だった。あきらかに誰かからの贈り物とわかるそれに、クレアは首を傾げる。

「キースから私にプレゼントかしら……?」

「いや、違うらしい」

「ではどなたから」

「ロイド、という男だと」

「!」

クレアは、ヴィークの表情の理由を理解した。ヴィークの中では、この箱は見知らぬ男からクレアへの贈り物なのだろう。

(キース……どうしてそんなに誤解を招く言い方をするの……!)

ヴィークの勘違いを正すため、クレアは慌てて弁解する。

「違うの、ヴィーク。この前、ヴィークが不在だった休日にキースの紹介でロイドっていう男の子と一緒に遊んで、」

「不在中にキースの紹介?」

良くない部分だけを切り取られてしまったようだ。

「ええと……一日一緒に遊んだだけなの」

「……一日一緒にいた!?」

「……あの、まあ」

どうやら、これはダメなやつらしい。すっかりやきもちを焼いているらしいヴィークの前では、どんな弁解も新たな誤解のもとだった。

困り果てたクレアは、ヴィークにぎゅっと抱きつく。

「あなたが勘違いするようなことは何もないわ。これは、キースの甥っ子が、」

「何か事情があるんだろう。最近忙しくて一緒にいる時間が少なかった。……寂しい思いをさせて本当にすまない」

「えっと、あの、」

ヴィークの腕がクレアの背中に回り、髪が優しく撫でられる。クレアを気遣い、謝罪をくれるヴィークに「違うそうじゃない」とは言えなかった。

(……どうしよう……)

クレアは、とりあえずヴィークの腕の中で幸せに浸ることにする。彼が忙しくて、なかなか二人の時間が取れないのは本当のことだったから。

箱にかけられたかわいらしいピンクのリボンを解き、中から出てきたどんぐりに二人で微笑みあうことになるのは、その三分後のお話。