軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エピローグ:スライムは旅に出る

スラ風船を繰り返してなんとか陸にたどり着いた。

ニコラたちと共に陸にあがる。クリスはまだ気を失っているようだ。

「ぴゅふぅー(疲れた)」

クリスとニコラを引っ張って数十キロも泳ぎ切った。

体力回復ポーションを大量に使っていたが、辛いものは辛い。

陸地にあがると、オルフェとシマヅが待ち構えていた。

俺が近づく方角を感じ取っていたのだろう。

「ニコラ、スラちゃん、無事だったんだね」

「ん。レヴァイアタンは倒した。それに、クリスも無事。ちゃんと脈がある」

「よかった。じゃあ、帰ろうか。来るときに使った船を用意しているよ……ゲオルギウスは?」

「海の底。残念だけど。あの子はちゃんとニコラとスラを守ってくれた。絶対、また作る」

「がんばったね。今日はニコラの大好物を腕によりをかけて作るよ」

「楽しみにしてる」

ゲオルギウスを一から作るのはかなり厳しいだろう。

とくに、コアを作るには一年以上かかる。

錬金術士の腕の問題ではなく、月日しか解決できない問題だ。

だが、ニコラならやり遂げるだろう。

「オルフェ、ニコラ、とにかく船に乗りなさい。明るいうちに海を渡らないと危ないわ」

「だね、おしゃべりは船の中でやろうか」

「ん。スラもおいで。スラはすごくがんばった。今日はたくさんなでなでしてあげる」

「ぴゅいっ!」

スライム跳びして、ニコラの薄い胸に飛び込む。

抱かれ心地の良さならオルフェだが、がんばったニコラに俺からのご褒美だ。

ニコラは俺にご褒美をあげているつもりだが、ニコラもまた、俺にご褒美を与えられているのだ。

そうして、俺たちはクリスと共に船に乗り込む。すでに荷物は積み込まれていた。

オルフェがクリスを検診し、邪神の残滓がないことをしっかり確認する。

……船に乗り込む前に、俺はこっそり【分裂】し、偽スラちゃんを無人島に置き去りにしている。

【分裂】したスライムに、無人島に取り残された邪神を食べさせるのだ。なにせ、レヴィアタンは全長が一キロ以上あり、重量は二〇〇〇トン近くある。一日十トン食べても二百日もかかる。

さすがにそんなことはやってられない。

とは言っても、栄養と魔力たっぷりの邪神の肉は食べれば食べるだけ強くなる。捨て置けない。だから、【分裂】させた偽スラちゃんに変わりに食べてもらい、あとで合体するのだ。

偽スラちゃんは、遠隔で操作できるし食べれば食べるほど大きくなって、大きくなれば、【分裂】できる。【分裂】した個体がまた【分裂】して、指数関数的に食事のペースはあがる。俺の見立てでは三日か四日ですべて食べきれる計算だ。

「ぴゅふふふ(楽しみだ)」

あれを全部食べ終わった偽スラちゃんと合体したら、とてつもなく強くなりそうだ。

邪神素材がたっぷり手に入るのも素敵だ。

「スラ、そんなになでられて気持ちいい?」

「ぴゅい♪」

そんな内心を隠しつつ、かわいいペットなスラちゃんを演じる。俺はできるスライムなのだ。

「ニコラ、スラさんを撫でるまえに着替えなさい。風邪を引くわよ。クリスは私が着替えさせるわ」

「ん。わかった。スラ、一度お別れ」

ニコラが、俺をおろして荷物を置いてあるところに向かった。

ちょっと休憩、そう思ったら、後ろからスライムボディをわしづかみにされた。

……どうやら、信じられない速さでクリスを着替えさせたシマヅに持ち上げられているようだ。

「父さん、私から距離をとるのに、どうしてオルフェや二コラには、あんなにスキンシップをとるのかしら?」

「ぴゅいぴゅー(愛情が重いからだよ!)」

シマヅのスライムの可愛がり方は雑で力任せなのだ。

猫と一緒で、スライムは可愛がられすぎると疲れてしまう。

「何を言っているかわからないわ。でも、ニコラが返ってくるまでは私の番ね」

シマヅが激しく、もふもふのキツネ尻尾を振りながら全力はぐしてくる。

「父上をこうしてぎゅーっとできるなんて夢みたい」

「ぴゅぐーーーー(つぶれる、埋まるー)」

あまりに強く抱きしめられて、いろいろと大変なことになっていた。

改めて思う、早く人間の姿を取り戻して父の威厳を取り戻さないといけない。

船はからくりと魔力で進む。ニコラに運転を任せ、オルフェ、シマヅと共にクリスを見守る。

クリスが薄く目を開ける。

「ここは、どこですか?」

「船の中だよ。クリス、どこまで覚えてる」

オルフェが問いかけると、クリスは自分の手をじっと見て、それから頭を抱えて息を荒くする。

「クリス、大丈夫!?」

「大丈夫です。……そう、ですか、夢じゃなくて現実だったのですね。全部、覚えてます。【嫉妬】の邪神になってからも、意識がありました。ニコラ様に助けられるところまで記憶しています」

ある意味、それは不幸だ。

覚えていないほうがよかったかもしれない。

「そう、なら状況はわかるね。デニスさんも、騎士団の人たちも全員死んで、私たちは邪神を倒し、クリスを救い出して街に戻るところだよ」

「……ごめんなさい。オルフェ様。せっかく力を貸してもらったのに父のわがままで無駄にしてしまって」

「それはいいよ。むしろ、デニスさんを止められなくて申し訳ないと思ってる。私はデニスさんがあんなことを考えているなんて気づけなかった」

オルフェも同じ感性だ。デニスの気持ちに気付けないのも無理はない。

「謝る必要はありません。すべては父の責任です。……それに、きっと父は満足してますから。何十年もがんばって、その結果がちゃんと出たんです。たとえ失敗でも、その結果を見れたんです……たぶんこうなることは父も、わかっていました」

そこには同意見だ。

失敗するとわかっていたから、オルフェの邪神弱体化の儀式は妨害しなかったし、シマヅやニコラが同伴することを認めた。

たぶん、あいつは俺たちなら復活した【邪神】を止めて、クリスを助けてくれる。そう、信じていたからこそ、あんな無謀なことをしたのだ。

なにより、デニスの研究は何もかも無駄だったわけじゃない。

たった、一つだけ成功したものがある。

それはクリスだ。

クリスの病が消えていた。邪神が宿主を守るために癒した。今の医学じゃ治せない不死の病をデニスは消してしまった。

思えば、……クリスが海に行くことを許可した時点でおかしかった。

あるいは、これこそがデニスの求めた最高の結果かもしれない。自身のすべてをかけて挑み、結果を受け入れて、娘を助けた。

なんて身勝手な兄弟子だ。

「ぴゅい(ばかめ)」

「スラちゃん、どうしてそんなに悲しんでるの?」

「ぴゅいっぴゅ!(なんでもないよ!)」

油断して、感情がオルフェに伝わってしまった。

このことは俺の胸にしまっておこう。

「これから、どうしようか」

「私はアッシュポートに戻れば今回の件を上に報告しないといけません。すべてを正直に話します。……ただ、ことがことだけにかなり大ごとになります。オルフェ様たちが拘留されて尋問を受けるかも」

「ぴゅい(ありえる)」

なにせ、デニスは国家プロジェクトと言っていた。

それなりに面倒なことになるはずだ。

「なんとか、私だけで片付けます。……一か月ほど、アッシュポート、いえ、この国を離れていてください。一か月もあれば、オルフェ様たちが無事に帰ってこれるように調整できます。オルフェ様たちにこれ以上、迷惑をかけられません」

そういって、クリスは頭を下げた。

一番つらいのはクリスだ。デニスを失い、これから父と共に戦犯扱いされて責められる。

それなのに、オルフェたちのことを心配してくれている。

きっと、彼女は彼女なりに覚悟があるのだろう。

「ねえ、クリス。私たちと一緒に逃げちゃうってのもありだと思うよ。クリスは、死刑になってもおかしくない」

「逃げるのは駄目です。ちゃんと後始末を終わらせないと、父の研究は終わりません。それは私にしかできないことだから。それに心配しないでください。こう見えても公爵家の娘ですから。自分の身は自分で守れます」

クリスは気丈な笑みを浮かべる。

……デニス、おまえの娘は強い子に育ったぞ。なにより、おまえは娘に愛されている。

「わかったわ。私たちは陸についたら、旅の準備をしてからアッシュポートを離れる」

シマヅがすべてを察して、クリスの言う通りにすると宣言した。

「でも、シマヅ姉さん。行くところなんて」

「私の故郷にいきましょう。一か月なら、ちょうどいい休暇になるわよ。……それに今は特別な時期よ」

俺にはその意味がわかる。

たしかに、あそこに向かい、この時期なら、うまくいけば【進化の輝石】の材料を手に入れられるかもしれない。

クリスと話し込んでいるオルフェたちを後目に、ぴゅいっと抜け出す。

船の倉庫にたどり着く。誰もいないことをしっかり確認した。

そして、ようやく意識を失ってもいい状況になったので、とっておいたごちそうに手を付ける。

小さなトカゲになったレヴィアタンのコアだ。

「ぴゅいぴゅい(いただきます)」

【収納】から取り出し、即座に【吸収】する。

「ぴゅひっ!?」

邪神の肉を食べていたときとは比べ物にならない衝撃が体を襲う。

ぼこぼこと、勝手にスライムボディが変形し膨らむ。

全身の細胞が活性化し、知らない何かに変わっていく。

まぶしく体が光る。

存在が次のステージに進む。間違いない。これは、【暴食】の邪神ベルゼブブを食べたときと一緒だ。強化ではなく、進化。

「ぴゅいいいいいいいいいいいい!」

内側で暴れまわる何かを吐き出すように悲鳴を上げる。

永遠とも感じる時間が過ぎて、ようやく邪神の力が体になじむ。

「ぴゅふぅ(危なかった)」

相変わらず、邪神はとんでもない。

だが、力は得た。

飛行系のスキルが、新たに【飛翔Ⅱ】に進化した。

当然のように、やつの代名詞、【嫉妬】も手に入れた。汎用性が高い最強クラスのスキルだ。

さらに、魔力の総量が桁違いにあがり、魔術回路もだいぶ増えた。

そして……、体の色がさらに変わる。青から赤に変わり、今度は深紅に。

より、高次元のスライムになったのだ。

感覚でわかる。今までよりすべての能力を強化できる。また一歩人間の姿に近づいた。

だが、同時によくないものに染まっていく。その恐怖も同時に感じていたのだった。

船が陸地につく。

オルフェたちは旅に必要なものを買い込み、ゴーレム馬車に積み込んだ。

街を出る街道で俺たちはクリスと向かい合っていた。

「クリス、元気でね! 一か月後、私たちは屋敷に戻ってくるよ! でも、一人でどうにもならないと思ったら頼って!」

オルフェは姉妹たちで使う手紙をやり取りするゴーレム鳩の予備をクリスに渡した。

「はい、遠慮なく好意に甘えさせてもらいます。皆さんもお元気で」

ここから、俺たちは別の道に進む

クリスはデニスが引き起こしたことの後始末。

俺たちは、シマヅの故郷に向かう。

歩き去っていく、クリスの姿を俺たちはじっと見ている。

突然、クリスは振り向いた。

「みなさん、ありがとう! それから、スラさん。父はあなたのことに嫉妬していました。でも、同時に憧れて好きだったんです! だから、父のことを嫌いにならないでください!」

言うことは言ったとクリスは走り去っていく。

嫌いになんてなるわけがない。

デニスは俺の一番の親友だ。それは変わらない。

「ねえ、ニコラ。デニスさんってスラちゃんに嫉妬してたの?」

「ん。わからない。でも、スラに嫉妬したくなる気持ちもわかる」

「ぴゅふ?」

きょとんとした顔で何も知らないスライムをアピール。

デニスのことは大事な思い出としてしまっておこう。

「じゃあ、行こうか。シマヅ姉さんの故郷楽しみだよ!」

「珍しい鉱物が手に入るとうれしい」

「楽しみにしていなさい。二人が喜びそうなところにつれていくわ」

さて、次の街へ行こうか。

シマヅの故郷、そこは因縁の土地であり、いつか行かないといけないと思っていた場所だ。

そこで、俺たちはさまざまなものを得るだろう。

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種族:ディザスター・スライム

レベル:30

邪神位階:雛

名前:マリン・エンライト

スキル:吸収 収納 気配感知 使い魔 飛翔Ⅰ→飛翔Ⅱ(NEW!) 角突撃 言語Ⅱ 千本針 嗅覚強化 腕力強化 邪神のオーラ 硬化 消化強化Ⅱ 暴食 分裂 ??? 風刃 風の加護 剛力Ⅱ 精密操作 嫉妬(NEW!)

所持品:強酸ポーション 各種薬草成分 進化の輝石 大賢者の遺産 各種下級魔物素材 各種中級魔物素材 邪教神官の遺品 ベルゼブブ素材 人形遣いの遺産 レヴィアタン素材

ステータス:

筋力B+ 耐久B→B+ 敏捷B+ 魔力C+→B+ 幸運C→D 特殊EX

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