軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第八話:スライムは祈りを捧げる

オルフェとニコラは人形遣いの試練を乗り越え、彼の研究成果と遺産を託された。

彼の残した秘書ゴーレムによって、研究成果や資料、遺産の在処を教わり、さらにこの屋敷にいるゴーレムたちについての説明を受けた。

それが終わると、二人は秘書ゴーレムにお礼を言って背を向ける。

「スラちゃん、いい部屋見つけようね!」

「ぴゅい!」

これからオルフェとニコラは二手に分かれて自分たちの部屋と工房にする部屋を選ぶ。

快適な生活を送るため、俺も横でぴゅいぴゅいと口を出す気満々だ。

さて、いい部屋を選ぶとするか。

一時間もしないうちにオルフェは自室と工房を選び終えた。

「スラちゃん、いい部屋見つかったね♪」

「ぴゅーい」

この屋敷には何人か暮らしていたようだ。

そのおかげで居住用の部屋がいくつかある。

そのうち、日当たりがよく広々とした部屋を選んだ。ここならオルフェも俺も快適に暮らせるだろう。

「すごいね。ほこり一つないよ」

「ぴゅいぴゅい」

人が何年も住んでいない屋敷なんて荒れ放題だと思っていたが、そんなことはなかった。

屋敷の中は掃除が行き届いており、修繕も丁寧に行われている。

なぜかというと……。

「ゴーレムさんにこんな使い方があるなんて驚きだね」

「ぴゅいっぴゅ、ぴゅぴゅ(ここまで高度な自律行動、さすがは人形遣い)」

オルフェとニコラが屋敷の主として認められると、隠れていた家政婦ゴーレムたちが何体も現れ、自らの仕事を始めた。

こいつらが掃除を行っていたおかげで屋敷内が清潔に保たれていたのだ。

ゴーレムは周囲のマナを吸収して動力にすることで永遠に動き続ける。この屋敷は複数の龍脈の合流地点でマナが溢れている。ここなら動力に困らないだろう。

驚いたことに、ゴーレムのメンテナンス専用ゴーレムなんてものも数体いて、ゴーレムそのもののメンテすら定期的に行われていた。

メンテ用のゴーレムがすべて同時に壊れる、あるいは大量にあるストックパーツが尽きない限りは、ここのゴーレムたちが機能を停止することはない。

本当に素晴らしい腕だ。

オルフェが窓を開けると、温かい光と風が吹き込んでくる。

「いい風。それじゃ、部屋が決まったし住めるようにしていこう。スラちゃんのお仕事だよ」

「ぴゅいっ!」

【収納】していたオルフェの研究成果や資料、私物などをオルフェに指示された通りに、ぴゅいっと出していく。

エンライトの屋敷を出るときにオルフェたちの私物をたっぷりと持ち出している。もちろん、オルフェとニコラ以外の姉妹の大事にしていたものも厳選して【収納】していた。屋敷に置き去りにしたら、あの成金デブが捨ててしまい、あの子たちが悲しむ。

「スラちゃん、えっと棚はあっちで、本はまとめてそっちだよ」

「ぴゅい!」

運ぶのが面倒なので、オルフェが指定した場所にその都度吐き出していく。逆に元からあった家具のうち要らないものは【収納】していく。

案外疲れる。

「ぴゅふー(疲れた)」

やっと終わった。

オルフェはスライム使いが荒い。

「じゃあ、スラちゃん。次は工房の整理だね」

「ぴゅい!?」

きっとそこでもこき使われるだろう。

できるスライムはつらい。

パタンっと音がした。そっちを見る。

「オルフェねえ、ここにしたんだ」

「うん、エンライトの私の部屋と間取りが似ていて落ち着きそうだと思って。ニコラは決まったの?」

「ん。それで、スラを借りに来た」

「ぴゅひぃ!?」

オルフェの工房どころか、ニコラの部屋とニコラの工房までやらないといけないと気づき、悲鳴をあげる。

「スラちゃん、頑張ってね」

「スラ、お願い」

二人が申し訳なさそうな顔で頭を下げる。

「……ぴゅふー」

そんな顔をされると断れないじゃないか。しょうがない。

疲れているし、これからもっと疲れるだろうが可愛い娘の頼みだ。少しぐらい無理をしよう。

娘たちが喜んでくれるなら頑張れる。それが父というものだ……。

夕方になった。一通り二人の部屋と工房の準備が終わった。

俺はというと。

「ニコラ、スラちゃんが溶けてる」

「ちょっとこき使いすぎた」

「ぴゅいぃぃぃ」

いつものぷりんっとした弾力溢れるボディではなく、半ば液状の垂れスライム状態になっていた。

本当に疲れた……。

「スラちゃん、ごめんね。無理させちゃったね」

「ぴゅいっぴゅ(まったくだ)」

オルフェが俺を抱きしめようとしゃがむ。このままでは抱っこしてもらえないので、ぴゅいっと力を入れてスライムボディをいつもの状態にする。

「よしよし、頑張ったね。撫で撫で」

「ぴゅふー」

オルフェの手の感触も、抱きしめられたことで伝わる胸の感触も、温かい柔らかい気持ちいい、どんどん疲れが抜けていく。

やっぱりここはいい。

「スラ、私も褒める。ありがとう」

ニコラのひんやりとした手で撫で撫で。

娘二人のダブル撫で撫で。これは最高だ。

「そうだ、スラちゃんにご褒美をあげないと。明日は海に行こうか。結局スラちゃんはご馳走たべれなかったしね。美味しいお魚いっぱいとってあげる!」

「ぴゅい♪」

そう、俺は兄弟子であるデニスと一晩中飯も食わずに飲み明かしたせいでごちそうを食べ損ねた。

その間にオルフェたちはクリスにたっぷりと海の幸をご馳走してもらったらしい。……デニスのせいだ。今度文句を言ってやろう。

「オルフェねえ、一度ヴィリアーズ公爵の屋敷に行って、借りてた部屋に置きっぱなしの荷物を回収しないと。あと不動産屋を紹介してもらった御礼もしたい」

「だね。でも、今日は疲れちゃったから明日にしよ。明日はヴィリアーズ公爵とクリスにお礼を言って、荷物をスラちゃんに【収納】してもらったら、海だ! 最近、熱いし泳ぐと気持ちいいよ」

「海に行くの初めて。楽しみ。オルフェねえ、採寸させて。オルフェねえはどうせ成長しているから水着を作り直さないといけない」

ニコラはオルフェの胸をジト目で見ながらそう言った。よほどオルフェの大きな胸が羨ましいみたいだ。

ニコラ、大丈夫だ。嫉妬しなくてもいい。ニコラも微妙に、ほんのわずか、そこはかとなく成長しているから。お父さんはちゃんとわかってるぞ。

「ありがとう! やっぱり水着があると便利だよね!」

そうして、その場でオルフェが服を脱いで、ニコラが採寸を始めた。俺はできる使い魔なので片時もご主人様の傍を離れないのでじっくりと見る。……下心はない。

二人の水着姿が楽しみだ。一緒にお風呂には入っているが、水着は水着で良さがある。

そして、海! ふふふ、ずっと海に行きたかった。

大量の海水を【収納】しておくチャンスだ! 海水というのは使いようによっては強力な武器になるし、無限とも言える量の水をストックしているというのは、スライムにとって非常に強力なアドバンテージになる。

そして可愛い二人が水着になんてなろうものなら、害虫がたくさん湧いてくるだろう。今から害虫駆除の準備をしておかないといけない。

夜が来た。オルフェの部屋で彼女に抱かれて眠っていた。

「お父さん、私ね」

オルフェの寝言に耳を傾ける。大賢者マリン・エンライトの姿に戻ってこの子の前に現れて以来、寝言で俺の名前を呼ぶ機会が増えた。

そのたびに胸を締め付けられる。……ちゃんと人間に戻れたら全部話す。改めて、そう誓う。

「ぴゅい、ぴゅい」

オルフェの寝顔を愛でたあと、安らかに眠っている彼女の腕の中から抜け出す。体を潰してするっと。

どうしても一人で済ませておきたい用事があった。

俺が向かうのは、人形遣いがいた工房。

老人の形を模した人形の前で口を開く。

「ぴゅいー、ぴゅぴゅ、ぴゅいぴゅい、ぴゅー(久しぶりです、マグレガーさん。まさか、あなたの研究を娘たちが継ぐとは思わなかった。あなたの目指し、たどり着けなかった理想の【生命】。必ずオルフェとニコラはそこに必ずたどり着く。だから安心して眠ってください)」

【生命】を極めんとした偉大な魔術士が安らかに眠れるように祈りを捧げた。

「ぴゅいっぴゅー(そして今まであなたが歩んできた道は私がたどる)」

体を引き延ばして口を大きく広げ……。

「ぴゅいっ!」

老人を模した人形を口に含む。

ぱくぱくもぐもぐ。

この老人をかたどったゴーレムは、人形遣いマグレガー・メイザースの最高傑作。

彼の作品の中でもっとも人間に近づいた偽りの命。

そのゴーレムコアを吸収し、さらにボディは大事に【収納】しておく。

そして、ゴーレムコアの力を得て、ゴーレムの構造を疑似筋肉繊維の一本一本まですべて【分析】しつくす。

この分野では俺すら超える魔術士のそのすべてを我が物にする。

人形遣いの研究の先へと進むのは娘たちが担う。

人形遣いの今までの足跡はすべて俺がなぞろう。その中から、人間になるために必要な技術を大事に使わせてもらう。

さすがは、人形遣いの最高傑作だ。

ゴーレムコアをすでに吸収済だというのに新たな力が得た。それは……。

【精密操作】。

魔術をより精密使えるようになる常時発動スキル。今後の俺の戦いを常に助けてくれるだろう。このスキルを得られたのは芸術ともいえるゴーレムを人体と同じように動かす術式が施されていたからだろう。

それだけじゃない。

【言語Ⅱ】

言語スキルがⅠ→Ⅱにあがった。こちらはゴーレムに声帯を模した機構を備えさせ、それを制御するための術式をゴーレムコアに仕込んでいたからだ。非常にありがたい。

さらに幸運のステータスまであがっている。

ある意味、ここで彼に出会えたのは最高の幸運と言えるだろう。

最高の贈り物を彼から得た。

「ぴゅいっぴゅ、ぴゅぴゅ(あなたは素晴らしい魔術士でした)」

最後に安らかに眠れるよう、もう一度祈りを捧げた。

『スライム。……そうか、どこか懐かしい気配だと思っていたが。君だったのか。大きくなったな。そして彼女たちは君の娘か。なら、安心だ』

部屋を出るとき、温かな視線を感じた。そちらを見ると、その気配は消えた。

ああ、そうか。今度こそ本当に彼は成仏したのだ。

オルフェのもとに戻る。

明日は海だ。

スライム跳びもいつもよく高くなろうというものだ。

オルフェの眠るベッドに飛び乗り、彼女の腕の中にすっぽり収まる。

オルフェとニコラの水着姿、大量の海水の入手、オルフェが作ってくれるたっぷりの海の幸を使ったご馳走。

どれもこれも楽しみで仕方ない。昂る気持ちを抑えて俺は眠りについた。

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種族:スライム・カタストロフ

レベル:24

邪神位階:卵

名前:マリン・エンライト

スキル:吸収 収納 気配感知 使い魔 飛翔Ⅰ 角突撃 言語Ⅰ→言語Ⅱ(new!)千本針 嗅覚強化 腕力強化 邪神のオーラ 硬化 消化強化Ⅱ 暴食 分裂 ??? 風刃 風の加護 剛力 精密操作(new!)

所持品:強酸ポーション 各種薬草成分 進化の輝石 大賢者の遺産 各種下級魔物素材 各種中級魔物素材 邪教神官の遺品 ベルゼブブ素材 人形遣いの遺産(new!)

ステータス:

筋力B 耐久B 敏捷B+ 魔力C+ 幸運D+→C 特殊EX

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