軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十二話:スライムはパーティへ

エレシアを励ますために、ちょっとスキンシップをしただけなのに、娘たちからエッチなことをしたといいがかりをつけられた。

しかも、理不尽なお仕置きまで受けてしまう……娘たちに信用されないというのは悲しい。

お仕置きというのは、痛いことや怖いことをするのではなく、自分たちで満足させて、他の女の子に変なことをしないようにという方向性のお仕置きだった。

ぴゅふぅ~、大満足♪ ごほんっ、ごほんっ、それはそれは辛い仕打ちだった。

まったく、娘たちは何を勘違いしてるのか。

くどいようだが、スライムに性欲なんてものはない。なにせ、細胞分裂で増えるのだから、性欲なんてものが存在するはずがない。

強いて言うなら、美しいもの可愛いものを愛でようとする高尚な気持ちがあるぐらい。

それは性欲と違い、一発抜いたからと言って収まるものでもないし、スライムに抜くようなものもない。

でも、まあ、やきもちを焼く娘たちは可愛かったし、眼福だし柔らかかった。

あんなお仕置きならいつでも……いや、冗談だ。

「ぴゅいっ」

そういうことがあり、その日は娘たちの抱き枕にされていた。

オルフェとニコラが俺を中心に川の字で眠っている。

二人が俺を枕にしていることもあり、ぷにぷにの頬の感触が気持ちいい。

今日は、オルフェとニコラ。明日はシマヅとヘレン。明後日はレオナ。

まったく、俺は罪なスライムになったものだ。

そんなことをオルフェとニコラの寝顔を見ながら考えてしまう。

……それにしても。

「ぴゅい、ぴゅいっぴゅ(まだ、成長しているのか)」

最近、暖かくなってきたこともあり薄着の寝間着で眠るオルフェを見てそう思う。

エルフは、基本的に貧乳なのだがオルフェは特別なようだ。

これでは、ますます害虫が寄り付いてくる。

今まで以上に警戒が必要だ。

そして、ニコラは変わらない。びっくりするほどだ。

これはこれで一部の趣味嗜好を持つ紳士に需要がある。そして、そういう紳士ほど執念深い。そちらも心配だ。

シマヅはどんどん綺麗になっていくし、ヘレンは完成された美しさがある。

レオナは、容姿だけでなく相手の心を捉える振る舞いにより磨きがかかった。

……ぴゅむむむむ、娘たちが魅力的なのは喜ばしいが、父親としての悩みは増すばかりだ。

それから表立っての派手な行動は控えつつ、裏では様々な準備をし続けた。

レオナを除いた姉妹たちは、まだ俺やレオナが気付いた真相を知らない。

それでも、レオナの指示に従ってそれぞれが成すべきことを行っている。

……レオナが危惧した通り、オルフェにも敵の刺客が放たれた。

だが、刺客が来るとわかっていて、そしてシマヅが傍に控えていてオルフェに危害を加えるなんてことは不可能だ。

逆に捕えて、情報をある程度引き出している。

それはレオナと俺の予測を裏付ける助けにはなったが、決定的な情報は持たされておらず状況は変わらない。

そして、今日はいよいよエレシアの誕生パーティ。

王城にクリスと共にやって来ていた。

「オルフェ様、シマヅ様、レオナ様、今日はよろしくお願いいたします」

漆黒のドレスを身にまとったクリスが公爵家に相応しい優雅な礼をする。

そういう恰好をすると、いつも以上にアッシュレイ帝国の公爵としてここにいると意識する。

「うん、全力を尽くすよ」

「ええ、そのために私たちがいるのだから」

「大船に乗った気でいてね。……やるべきことは全部やったよ」

エンライトの姉妹たちがそれに応えた

ここにいるエンライトは三人。

【魔術】のエンライト、オルフェ・エンライト。

【剣】のエンライト、シマヅ・エンライト。

【王】のエンライト、レオナ・エンライト。

ここにはいない、【錬金】のエンライト、ニコラ・エンライトと【医術】のエンライト、ヘレン・エンライトには別の役割がある。

最悪の想定が当たってしまえば、今日は王都そのものが滅びるかどうかの瀬戸際まで行ってしまう。

あの二人は、会場の外で待機してもらう必要がある。

……二人の他にも大半の偽スラちゃんを王都に集結させている。

「皆様、とってもとってもきれいです」

「ありがと、クリス。こっちに来てから急いで準備したから、こういう場に相応しいかは不安だったんだ」

「オルフェは、そういうところに無頓着すぎるわ。一張羅ぐらい用意しておくべきよ」

「オルフェお姉ちゃんはそれだけ綺麗なのに、わりとそういうところに関心ないよね」

エンライトの姉妹たちも王女の誕生パーティに相応しい格好をしている。

オルフェは瞳と同じ色のエメラルドグリーンで彩られたドレスで、華やかな美しさが日頃は隠れている魅力を引き出す。

シマヅは極東でも最上級の織物を纏い、上品で奥ゆかしい美しさを演出していた。

そして、レオナは紫のピシッとしたドレスで大人の魅力と隙のなさを手に入れている。

三人とも、それぞれに違った魅力がある。

三人に見惚れていると念話が飛んできた。

スライムファイブどもからの視覚共有依頼だ。……もっともらしいことを言っているが、こいつら、ただ娘たちの晴れ姿を見たいだけじゃないか。

そんなことを考えながら、視界を共有すると、弾んだ感情が次々と伝わってくる。

いくら、俺から切り離し自我を持ち、自己進化を繰り返しているとはえ、ベースは俺なので、娘たちに対する愛情はとても深い。

「ぴゅいぴゅぅ(全員配置に着き終わっているみたいだ)」

精鋭部隊スライムファイブも、常にエレシアに張りつき命を守っているスラブルー以外は、会場から少しだけ離れた位置で気配を消して、虎視眈々とチャンスを窺っている。

ちょうどいい、このタイミングでスライムファイブどもに指示を出そう。

スライムファイブ専用ネットワークに視覚だけでなく、意識をも繋ぐ。

『ぴゅーぴゅーぴゅー、ぴゅいっぴゅぴゅるぅ(だーかーらー、オルフェ様だっつってんだろ。一度でもいいから、あの胸に抱かれたい! それが叶うなら死んでもいい!)」

『ぴゅっ、ぴゅいっぺぴゅる(何度言われてもニコラ様が最高だという点は譲りません。あの可憐さ。胸などただの脂肪です)』

『ぴゅい、ぴゅいっぴゅぴゅ(まあ、おまえらがそれでいいならそれでいい。俺はシマヅ様と添い遂げるから』

『ぴゅいぴゅい、ぴゅいっぴゅ(ヘレン様をママと呼んでおぎゃりたい、なんなら吸い付きたい)』

『ぴゅー、ぴゅいぴゅ!!(ジーク、レオナ!!)』

こいつらは、またエンライトの娘たちで誰が一番可愛いか議論をやってやがる。

いよいよ、本番だと言うのに緊張感と言うものはないのか。

まあ、無駄にスペックが高いこともあり仕事は完璧にこなしており、片手間の雑談ぐらいは作戦に影響はないが。

こうして議論が盛り上がるのも、スライムファイブ全員の推し娘が違うからなのだろう。

娘たちはそれぞれにまったく違う魅力を持ち、スライムファイブそれぞれの微妙に違うツボにぴたりとはまっている。

個人的な感情を任務に持ち込むことは火種になりえるが、逆に言えば俺の命令ではなく、自らの強い意志で、それぞれが娘たちを守ろうとしていることはプラスになる。

命令されただけなのと、信念をもって守るのでは天と地の差がある。

「ぴゅい、ぴゅいっぴゅ(おまえら言っておくが娘に触れたら人格を初期化するからな)」

『『『『『ぴゅへ、ぴゅいっぴゅ~(ひへ、ごめんなさい~)』』』』』

五匹そろって念話で、反省した声と土下座するビジョンを届けてきた。無駄な器用な連中だ。

「ぴゅいへ、ぴゅいっぴゅ(とはいえ、褒美は考えている。活躍すれば娘に撫でてもらう権利をやろう)」

『『『『『ぴゅいっさ! ぴゅいっぴゅ、ぴゅいぴゅ!(イエッサ! この命に替えても使命を果たします)』』』』』

なんという熱意だ。

スライムファイブ全員がの士気が最高潮なのが伝わってくる。

お調子者のスラグリーンが、スラ触手はありですかと聞いてきたので、地獄の激痛を与えておいた。

娘にスラ触手なんて許せるわけがないだろう。とんだエロスライムだ! あとで、徹底的に教育してやる。

「ぴゅいっぴゅ、ぴゅいっぷるっぷ(わかっているな。あえて敵に先手は取らせる。問題はその後だ)」

『『『『『ぴゅいっさ! ぴゅいぴゅ!(イエッサ! 絶対に抜かせません!)』』』』』

いい返事だ、よく役割がわかっている。

ここから先は、エレシアを狙う勢力と罠の掛け合いだ。

さて、娘たちとスライムファイブが所定の位置についたことも確認できたし、俺もそろそろ準備をしようか。

「スラちゃん、さっきから独り言がおおいね? 何かあったの?」

オルフェが不思議そうに問いかけてくる。

「ぴゅいぴゅ!(なんでもないよ!)」

レオナと俺以外は作戦の全貌を知らない。

だから、まだ隠す。

オルフェやシマヅは腹芸が苦手だ。下手をすれば、敵に勘づかれる隙を晒す。

会場に次々と客が現れる。

国内の大貴族だけにとどまらず、世界に名をとどろかす商人、各国の貴人たち。

一国の姫を祝う誕生パーティであることを考えても、異常なほどのVIPが集っている。

この誕生パーティで、王位継承者にエレシアを指名するのは伏せられているが、いわゆる公然の秘密であり、ある程度の情報収集能力を持つ者たちは気付いている。

故に、普段なら人だかりができる王位継承権上位である王子たちのもとへ向かう者たちは少ない。本来の三分の一というところだろう。

……今回、エレシアを狙っている勢力は一勢力だけではない。

【影】のエンライトであるクレオを雇っている勢力は、そのときがくるまでは動かない。

エレシアの側近を抱き込んで、たかが普通の一流程度の暗殺者を放ってはスラブルーに返り討ちにされているのは、エレシアの兄弟たちの差し金が大半。

加えて、その他大勢が仕掛けてきている。

まあ、そんなものはスラブルーと、偽スラちゃんたちだけでも防げたが。

……その程度の連中は殺さずにとらえて、情報を聞き出し、今もとある場所に保管してある。

エレシアが王になったあと、他の王位継承者たちをけん制するためのプレゼントにするつもりだ。

そして、とうとうパーティの始まりの時間がきた。

エレシアが現れる。

エレシアはドレスではなく、巫女姫として正装を纏っていた。

エレシアは純粋な継承権という意味では、さほど優先度は高くない。

巫女服を纏うのは王位を継ぐ理由の補強だ。

彼女は、会場の中心に用意された花道を歩く。

それだけで、会場のほぼすべての人々が息を呑んだ。

巫女姫の儀式装束を纏い、聖気を放つ彼女は美しいだけでなく、神秘的であり、厳かで尊い。

理屈じゃない、心が、魂が、彼女を上に立つものだと認めてしまう。

だれかが、放心したように神様と呟いた。

今のエレシアはそういう存在だ。

「すごい、エレシア。綺麗」

「そうね。本当に」

「……正直、彼女が王位を継ぐのは不安だったけど、これを見たらそんな意見吹き飛ぶね」

いつもとは違うエレシアにエンライトの姉妹すら呑まれる。

エレシアの表情が一瞬だけ乱れる。オルフェと俺を見て、神様みたいな存在から少女の一面を見せ微笑み、すぐに元に戻った。

……困ったな。ここでそんな弱さを見せられるともっと守りたくなる。

エレシアは花道の終わり、壇上にあがり、集まった面々を見下ろして口を開いた。

ここで誕生パーティ開催、そして王位継承について語るのだろう。

そして、今こここそが、【影】のエンライトがエレシアを狙う絶好の機会。

この場全ての人々が注目する暗殺するにはあまりにも無謀なシチュエーション、警備は万全、各国の貴人たちの使用人に偽装した超一流の護衛たち、加えてエンライトの姉妹、この状況でもクレオはきっと暗殺を成功させるだろう。

エレシアの死がすべての引き金になる。

さあ、よりいっそう気を引き締めるとしよう。

そろそろ俺の出番だ。