作品タイトル不明
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「ううん……」
外が何だか騒がしい気がするわ。
私は外が気になり目を開けた。
「シシュカ様、おはようございます」
「……マティ。もう朝?」
「いえ、お昼を過ぎたところです」
「えっ!? 私、そんな時間まで寝ていたの?」
「昨晩は遅くまで起きられていたようですし、お疲れだったのではありませんか」
「そうね……。それにしても外が騒がしいみたいなんだけど」
「シシュカ様はこのまま静かにここに居て下さい。今、エドが対応しておりますので」
「誰か来ているの?」
「王宮の方が来られております」
「なら、私が出た方がいいんじゃない?」
「いえ、何やらシシュカ様に事情を聞きたいと王宮に無理やり連れて行こうとしております。このまま連れていかれたら……。何かあってからではジルベール様に申し訳が立ちません。旦那様も今日中に到着する予定ですので、今はこのままお部屋から出ることのないようにお願いします」
「わかったわ」
どうやらマティの話では、王女の従者が「私が現れるまで邸内で待つ」と言って居座っているらしい。
そこまでして私を王宮へ連れて行かないといけない理由って何かしら。
私は息を殺すように部屋の中で静かに過ごしていると、義父が邸に到着したようだ。
マティは気を使って玄関ホールの音が拾えるようにわずかに扉を開けてくれている。
どうやら玄関ホールで王宮の従者と義父が言い合いになっているみたい。
義父の怒鳴る声が聞こえてきた。
私はその内容にドクドクと心臓が早鐘を打つ。従者の話す内容はやはり「王女に無礼を働いた。王宮へ連れて行き、事情を聞きたい」という感じだったわ。
これは相手の匙加減一つで貴族牢行きなんじゃないかしら。
……怖い。
それほど王女は必死なのね。
もしかして王女は伯爵夫人を狙っているの?
バタバタと足音がした後、義父はエドと一緒に王宮へと出かけたようだ。もちろん従者も王宮の馬車で戻っていったみたい。
「マティ、お義父様は大丈夫かしら」
玄関ホールが静かになってすぐに従者の一人が部屋にやってきた。
「シシュカ様、エドからの伝言を預かっております」
「あらリダ、どうしたの?」
「『これから旦那様と一緒に先日の書類を王宮へ提出してまいります』とのことです」
「わかったわ。報告ありがとう」
「お嬢様、旦那様が王宮で話をするのであれば問題なさそうですね」
「マティ……。そうだと思いたいんだけど、でも、不安だわ」
私はマティに励まされながら義父の帰りを待った。
王宮に行ったっきり帰ってこない義父も心配になってくる。捕まっていないだろうか、と。
日も落ち、辺りが暗くなってきた頃、疲れた顔をした義父が帰ってきた。
義父は玄関ホールで出迎えた私の顔を見て、フッと笑みを溢した。
「シシュカ、王宮での話は長くなるから明日でもいいか? とにかく、今、ジルベールは無事だということだけは伝えておく」
「お義父様、ありがとうございます」
今すぐにでも聞きたいと思ったけれど、義父は旅装のままだったことに気づいた。
領地から帰ってきてすぐに王宮に向かったのだからしかたがない。
私は逸る気持ちを抑え、明日まで待つことにした。
翌朝、使用人たちは朝から忙しく動いている。久々に主が帰ってきたので張り切っているのかもしれないわね。
私は食事を終えると、義父から執務室に来るようにと伝えられた。
ジルは大丈夫なの?
私は王宮へ行かなくてもよくなったのかな。
不安と緊張で扉を開ける手が震える。
「お義父様、お待たせしてすみません」
「シシュカ。そこに座りなさい」
義父は真面目な顔をして執務室のソファに座っていて、私も向かいに座った。
「シシュカ、早いうちに手を打ってくれていたことを感謝する。シシュカのおかげで我が家の冤罪を晴らすことができた」
「……ということはやっぱり、私が不敬罪か何かで、ってことだったのでしょうか」
「ああ、そうだ。王宮に着いてすぐ、陛下に謁見の申請をし、話を聞いた。陛下からシシュカがリアーヌ王女に無礼を働き、怪我をさせたと言われたんだ」
「ええっ!? 私がリアーヌ王女様を怪我させたんですか?」
義父の言葉に私が驚き、反対に聞き返してしまった。
義父はそれを見て、いつものようにおおらかに笑った。
「長年我が子同然でシシュカを見てきたんだ。そんなことをするわけがないのは分かっている。シシュカが念のためにと連れて行った書記の者の報告書で疑いは晴れた。その上で王女の横暴さにこちらが迷惑を被っていることを伝えた。これ以上、我が家に迷惑をかけるなら貴族院に掛け合うと話も伝えてある」
……よかった。
私はほっと胸を撫でおろした。
「陛下は報告書を読んで理解していただけたのでしょうか」
「最初は事実を聞かされ、渋い顔をしていたな。自分の娘が次期伯爵夫人に罪をでっちあげるなんて思ってもみなかったようだ。だが、報告書は信頼のある商会の者の押印がある。宰相にも諭されていた。最終的には納得せざるを得なかったようだ」
「リアーヌ王女をどうするという話はあったのですか?」
「最初は自分の娘の言うことを信じきっていたからシシュカを捕えることに何のためらいもみせていなかった。
報告書を読んだ後も、宰相に指摘されてもなお、なあなあで済ませる気だった。
私がジルベールのことにも触れ、『王女のせいで帰宅できない。新婚夫婦の仲を壊す気なら今までの王女の話を隣国へ伝える』と話すと、ようやく事態を重くみて、対応するとは言っていたが、娘に甘い陛下のことだ。どうなるかはわからん」
「よかった。ジルがようやく帰ってくるんですね」
「今日はもうすぐしたら帰ってくるだろう。ジルベールが帰ってきたら詳しく話を聞けると思う」
「はい」
私はふうと息を吐いた。
義父の言葉を聞くまで無意識に力が入っていたみたい。緊張が解けた時にまたお腹の張りが出てきた。
「っ、痛っ」
「シシュカ様! すぐに医者を」