軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第237話 亡霊王との戦い1

見晴らしのいい学校のグラウンドで待ち構えること、しばし。

離れたところに隠れていたクァールが、遠吠えで敵の到来を告げる。

まだディアスネグスの登場には早いから、おそらく雑魚のスケルトンだろう。

ほどなくして、スケルトンの部隊がビルの陰から現れた。

低空を飛行してくるスケルトンが、六体。

「ローブ、きてる! つえ、もってる!」

カヤが、スケルトンの一体をびしっと指差す。

おー、えらいぞ、えらいぞわが娘よ。

あいつがメイジなのか、それ以上の厄介なやつなのかって点が問題なんだけど……。

「トゥルー・サイト」

ぼくは相手の幻影を見破るため、付与魔法最強の視認魔法を行使する。

見えた。

「違う、メイジは後ろの三体だ! ローブを着たやつは、でかい剣を持っているぞ!」

これみよがしにローブを着て杖を持ったスケルトンは、じつは重そうな鎧を身にまとって剣を構えている。

その少し後ろを飛ぶ三体が、ローブを着た杖持ちだ。

まあ、この程度のフェイクは想定内だけど。

「ルシア、構わないからぶちかましてくれ。カヤも」

「はい。インフェルノ」

「んっ! ホワイト・カノン」

灼熱の火球と白いビームがスケルトンたちを襲う。

空中の敵なんて、ただの的だ。

だからこそ、ぼくたちもいまのところは学校のグラウンドで待機しているのである。

いざとなればグラウンドを出て、近くの建物の陰に隠れればいいと考えてのことだったのだが……。

こちらの動きに呼応して、後方を飛ぶスケルトンたちがいっせいに骨の手を前につきだす。

あ、これ、まさかリフレクション?

「バリアだーっ」

カヤの声。

はたして、彼女のいう通りだった。

スケルトンたちの前方にどす黒い壁のようなものが生まれ、炎とビームを受け止める。

激しい爆発が起こる。

煙によってスケルトンの姿は見えなくなるが……。

「どうだ、カヤ」

「きてます、きてます!」

おまえはどこぞのエセ超能力者か。

いや、それはいいんだ。

煙を突き破り、スケルトンたちが飛んでくる。

六体全員、健在だ。

たぶんダメージはゼロだろう。

あの黒い壁、リフレクションと違ってジャストタイミングで出す必要はなさそうだったしね……。

リフレクションを毎回成功させることができるひとなんて啓子さんくらいだろうから、あの魔法、便利だなあ。

いや、ザガーラズィナーもそうだったか……。

とにかくあのクラスの達人以外には、あの黒い壁の魔法ってかなり使い勝手がいいに違いない。

あれ、ぼくはなんで、あのグレーター・ニンジャを無意識に四天王と同じクラスと認識してしまっているんだろう。

ワンさん、じつはやっぱり戦力になったりするんじゃなかろうか……。

いや、そんなくだらないことを考えている場合じゃなかった。

「パパ、どうする?」

「ど、どうしましょう、カズさん」

アリスとカヤがぼくを見ている。

しっかりしないと。

さて、いくつか手は考えられるけど……。

「カズ。十倍のインフェルノ、いきますか」

ルシアの言葉は、考えられる対策のひとつだ。

敵が盾を出してくるなら、それを粉砕する超攻撃でぶちのめせばいい。

費用対効果は悪くとも、すみやかにカタがつくというのは強敵を待ち構えているいま、とても重要なことだ。

デメリットは明白である。

四天王を待ち構えているというのに、ルシアが消耗してしまう。

彼女に無理はさせたくなかった。

ならば、どうするか……。

敵との距離がさらに詰まり、一キロを割った。

よし、いまなら。

「カヤ」

「はい、パパ!」

「ディメンジョン・ステップで後方にまわり込んでぶちかましてこい。ナハンを連れていけ」

「あいあいさーっ」

カヤは機敏に天亀ナハンの亀の首に抱きつき、その姿を消す。

直後、その姿は敵集団の後方にある。

彼女とナハンの放った二本の白いビームが六体のスケルトンを襲い……。

「防ぐ、か」

後方の三体が、またバリアを張ってこれを防ぐ。

でもおかげで、前方と後方にだいぶ距離が出た。

前衛のスケルトンたちはまっすぐこちらに飛んできている。

「ルシア、牽制だ」

「はい。インフェルノ」

無防備なそこに、ルシアの巻き起こした火球が衝突する。

スケルトンの一体が炎に包まれる。

と……ここでぼくたちは、白い部屋に。

まだあのスケルトンは倒れていないから……。

たまきたちの方が、なにかやったかな。

「わたしたちみんな、スケルトンの包囲網を突破したわ! わたしが一瞬で、ずばばーんって六体も倒したの!」

たまきが、えへんと胸を張ってそういった。

おお、えらいえらいと頭を撫でてやる。

彼女ならできて当然のことではあるんだけど。

ちなみに今回レベルアップしたのは、志木さんだけであるらしい。

低レベルだけあって、よくレベルアップする。

これでレベル19になったとのことだ。

「もうだいじょうぶだと思うから、たまきちゃんはそっちに返しましょうか」

「いや、万一ということもある。たまきは引き続き、みんなの護衛を頼むよ」

「わかったわ、任せて!」

志木:レベル19 偵察7/投擲3 スキルポイント4

白い部屋を出た直後、ぼくたちはすぐに動いた。

カヤが天亀ナハンと共にディメンジョン・ステップで敵の側面に移動し、ホワイト・カノンを放つ。

ほぼ同時に、ルシアがインフェルノをぶつけ……。

それでも、前衛のスケルトンたちを倒すには至らなかった。

とはいえこの集中砲火にはたまらず、スケルトン軍団は高度を下げ、道路上に降り立つ。

一時的にぼくの視界から消えてしまう。

彼我の距離はもう三百メートルくらいだから、すぐにこのグラウンドに襲ってくると思うが……。

それを待っているほど暇でもお人好しでもない。

「狙撃したいな。シャ・ラウ。ルシアといっしょに、あそこの家の屋根に」

『心得た』

ルシアが幻狼王シャ・ラウに掴まると同時に、ふたりは雷光となって消える。

直後、その姿はぼくが指示した赤い建物の上にあった。

絶好のスナイプ・ポイントを得たルシアが、インフェルノの連射でスケルトンたちをあぶり出す。

カヤと天亀ナハンも、上空からスケルトンたちを狙撃している。

「カズさん、わたしもいっていいですか」

「いや、ここで待機だ。慌てなくても、じきに来るよ」

それも、ちょうど食べごろになって。

まあ、ぼくの予想が正しければだけど……。

はたして。

「カズさんのいう通り、来ました」

ぼくとアリス、それから神翼使徒ペヌーザが待機するグラウンドに、ぼろぼろのスケルトンたちが姿を現す。

たぶんあいつら、一体一体がこれまでのスケルトンとは比べものにならないほど強いはずだ。

ルシアたちの攻撃をここまで耐えきってみせたのだから、前衛は最低でもゴッドブレイカー・クラスのはずである。

ゴッドブレイカーとハイウィザードの精鋭部隊。

これをぶつけてきた理由は明らかだ。

おそらくは、少しでもぼくたちの戦力を削るつもりだったのだろうけれど……。

残念ながら、この程度で損耗するぼくたちじゃない。

「アリス、いけっ」

「はい! ライトニング・ムーヴ」

アリスは、シャ・ラウと同じく雷光となる魔法で六体のスケルトンとの距離を一気に詰めた。

タイミングを合わせて、スケルトンの背後からシャ・ラウも強襲を仕掛ける。

スケルトン軍団はなんとか体勢を立て直して迎撃しようとするものの……。

アリスの刺突が、シャ・ラウの牙が、立ち向かってきたスケルトンの頭部を一撃で粉砕する。

ここで、ぼくの頭にレベルアップの音が鳴り響く。

白い部屋に。

今回レベルアップしたのは、ぼくとたまきだった。

特に打ち合わせることもないため、お互いの情報を交換だけして、すぐ部屋を出る。

和久:レベル61 付与魔法9/召喚魔法9 スキルポイント2

強化召喚6(使い魔強化6、使い魔同調3、使い魔維持魔力減少3)

たまき:レベル51 剣術9/肉体9 スキルポイント2

重剣術2(強化剣技2、破竜斬2)

残る敵は、四体。

ぼくの護衛であるペヌーザが、しきりに周囲を見渡していた。

「どうした」

『気配を感じます』

「それって、まさか」

肯定のテレパシーと共に、ペヌーザはこくりとうなずく。

どうなんだ、もうすぐ近くまで迫っているのか、ディアスネグス。

ペヌーザは天使だけに、アンデッドの親玉である亡霊王の気配に敏感みたいだけど……。

どこにいるのか、とぼくは周囲を見渡す。

そのときペヌーザが、その美しい顔をはっとこわばらせる。

なんだ、とぼくが思う間もなく……。

『いけません、主さま!』

彼女が、棒立ちになっていたぼくを突き飛ばす。

間一髪だった。

骨の腕が、地面から突き出た。

その指先が、ぼくの左腕に触れる。

ジャージの前に縫いつけられた対アンデッド用の布が剥がれ、灰となって消える。

歌音の歌が込められたお守りが一撃で消えて、なお……。

ぼくの左腕は、肩から先がもぎ取られた。

鮮血が舞い散り、灼熱のような痛みにうめく。

そして、ペヌーザは……。

その端整な顔を苦痛に歪め、ぼくのそばに転がる。

左足のふとももから下を失っていた。

くそっ、これはぼくの不覚だ!

顔をあげれば、すぐそばで霧のようにゆらめく人影がある。

灰色のローブの奥で、髑髏がぼくを見る。

「亡霊王、地面に隠れているとは大物らしくないじゃないか」

「油断はせぬ。きさまはザガーラズィナーを倒した男だ」

髑髏はそういって、ケタケタと笑った。