軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第193話 続・国境の砦奪還作戦

作戦は継続している。

お茶を二杯、飲む程度の休憩を挟み、ぼくたちは慌ただしく別の砦に向かった。

そこにもオークを中心とした部隊が駐留していたが……。

オーク専門家たるぼくたち育芸館組は、さきほどと同じように、敵の主力をたやすく殲滅してみせた。

いまさらこの程度の相手、手のうちさえわかっていれば、もはや苦戦する要素がない。

今回は隠し通路を使わずグレーターインヴィジ+サイレント・フィールドでの強襲だったが、やるべきことはたいして変わらなかった。

砦を守る部隊のボスは、オークの魔術師だった。

以前に戦ったメイジより格上のようで、おそらくは精神攻撃系魔法を飛ばしてきたようだ。

ようだ、というのはアイソレーションで無効化してしまったので、よくわからなかったからである。

つまり、楽勝だった。

いちおう、このオークはウィザード・オークと名づけた。

青い宝石を四個落としたから、ジェネラル・オークと同じくらいの強さなのだろう。

この戦いで、ぼくとたまき、ミアがレベルアップした。

和久:レベル47 付与魔法9/召喚魔法9 スキルポイント4

たまき:レベル38 剣術9/肉体7 スキルポイント3

ミア:レベル38 地魔法7/風魔法9 スキルポイント3

残念なことに、この砦には人間の生存者がいなかった。

全員、むごたらしく殺されていたのである。

痛ましいことだが、捕虜として長く苦しむことが幸せかといわれれば……難しいところだ。

「カズっち。感傷に浸ってないで、さっさと経験値集めよう。レベルアップしよう」

地下牢で腐乱した死体を眺めていたら、ミアが服の端を引っ張ってきた。

つとめていつもの調子で、ぼくを見上げている。

これもきっと、彼女の気遣い……なんだろうなあ。

「それとも、ひどい死体見て凌辱の様子を想像するプレイ続行?」

「そんなプレイはいっさいしてない」

軽く彼女の頭を叩いておく。

あ、いい音がするな。

「あ、カズさん。さっきのジェネラルが持ってた剣、やっぱビーム出せるよ! これ、予備に持っておいていいかな?」

地下牢への階段を騒々しく駆け下りて、たまきがきた。

大広間での戦いで倒したジェネラルの一体が、黒い剣を使っていたのだ。

戦いのなかで、あの剣は一度、まばゆいばかりの黄金色に輝き、ビームを放ってきた。

ビームは、とっさにぼくが展開したリフレクションに弾かれ、ジェネラル自身に跳ね返って、こいつの左腕を一撃で飛ばした。

そうとうな威力があると考えられる。

たぶん、長月桜が持つ槍と同じタイプの、燃費が悪い遠距離攻撃なのだろう。

その剣がいま、たまきの手にある。

目をきらきら輝かせて、ぼくの返事を待っていた。

わー、新しいおもちゃを手に入れた子供みたいだ。

「予備というか、そっちを主力にすればいいんじゃないか。剣としての使い勝手は似たようなもんだろ」

「うーん、そうしよっかなー」

とりあえず、彼女が手にした黒い剣にもハード・ウェポンをかけておく。

魔法の武器であっても、ぼくのエンチャントはその上から重ねることができるようだ。

実際にどれだけ威力が向上しているのかは、いまひとつはっきりしないのだけれど……使い手の彼女たちが「強くなってる」というのだから、そうなのだろう。

現状、モンスターがときどき持っている武器を奪って使うのが、一番、ぼくたちを強化できる。

防具については、サイズの問題でどうしようもないけれど……。

あ、いや、そういえばリーンさんと志木さんが「ちょっと試したいことがある」とかいってたかな……。

まあ、期待しないで待っておこう。

ぼくたちは、いまできることを淡々とこなすだけだ。

無傷の四天王クラスと正面からやりあえるようになるまでの道は、まだはるかに遠い。

たまきは、いままで使っていた銀の剣を背中に背負い、新しく手に入れたこの黒い剣を使うことに決めた。

ミアとなにごとか、ぼそぼそ話している。

「ねえねえ、カズさん。『金色螺旋撃』と『ゴールデン・スマッシャー』どっちがいい?」

「必殺技の名前とかつけるのか……」

もし戦闘中に叫び出したら、容赦なく他人のフリをしようと決意する。

午前中のうちに、さらにもうひとつ砦を落とした。

今度の砦は、ホブゴブリンに支配されていた。

初めて見る小型のホブゴブリンが大量にいて、それがゴブリンらしい。

ぼくたち、先に上位種のホブゴブリンを見ちゃったからなあ。

なおゴブリンそのものは、オークより雑魚だった。

隊長格のホブゴブリンや、上位魔法を使うメイジ系、さらにそれらを束ねるキング・ホブゴブリンともいうべきやつもいた。

キングは実力的にランク8くらいありそうだったけれど、それでも単体じゃ、いまのぼくたちの敵ではない。

遠距離からたまきの『黄金絶命閃』の餌食となり、さらに距離を詰められてなます斬りにされた。

なおたまきの剣のビームは、二回目には『滅殺黄金剣』と呼ばれていた。

この砦の攻略戦で、全員のレベルが1ずつ上昇した。

そう、これでついに……ぼくのスキルポイントが、5を超えたのだ。

強化召喚のランクを得ることが可能となったのである。

「これは派生スキルの最初のケースだから、皆で確かめてみよう」

ぼくは自分のノートPCを皆に見せながら、解説する。

ツリー状となったスキル欄の一番右側に表示された、強化召喚の文字。

そこをクリックすると、「アビリティを選択してください」という文字が飛び出てくる。

アビリティ。

それが、派生スキルの特徴である。

ただスキルのランクを上げるだけでなく、いくつかあるアビリティのなかからランクごとにふたつを選んで、己を強化していくのだ。

強化召喚ランク1の場合、取得できるアビリティのうち有用そうなものをピックアップすると……。

・使い魔強化1

名前の通り、使い魔が強くなる。

おおよそランク0.5分の強化というから、たとえばパラディンが武器スキル7.5相当になるということだ。

なおこのアビリティは、重ねて取得することで2、3とさらに強化されていく。

一度のランクアップで連続して取得することも可能だが、最大値は現在のランクと同じところまで。

つまり、いまはまだ使い魔強化1までしか取得できない。

また、実質的に使い魔のランクが上昇するため、それに伴い維持MPも上昇する。

・使い魔維持魔力減少1

こちらも、ほぼ名前の通り、使い魔を召喚し続ける場合必要な維持マナが減少する。

最大でランク5までで、ランク1だと1割、ランク5で5割減少するようだ。

そのほかの制限も、使い魔強化と同じ。

・使い魔能力付与1

ランク5まで存在するアビリティ。

自分またはパーティメンバーのスキルを召喚時、使い魔に付与する。

これに伴い、使い魔の維持にこのスキルのランク×二割増しのMPが必要となる。

ランク1ならランク1までのスキルを付与、最大でランク5までのスキルを付与できる。

たとえばこれをランク3まで上昇させれば、使い魔にアリスの持つ治療魔法ランク3を使わせることが可能になり、維持MPは六割増しとなる。

・使い魔同調1

ランク3までしか存在しないアビリティ。

ランクを上昇させることで、使い魔とぼくの意識を自在にシンクロさせることが可能となる。

シンクロ時は、使い魔の維持に倍のMPが必要となる。

ランク1では、五感を同調させることができるようになる。

この段階では、リモート・ビューイングの強化版といった感じだ。

ランク2で使い魔を通して会話したり、使い魔の身体を乗っ取って動かすことが可能となる。

ランク3までくると、使い魔を通してぼくのスキルや魔法を使用することが可能になる。

・使い魔サイズ変更1

ランク3までしか存在しないアビリティ。

ランク1の段階では、維持MPを二割増しにすることで、召喚した使い魔のサイズをちいさくする。

小型化に伴い、相応に弱くなるものの……ときには、それが役に立つこともあるだろう。

まだいくつかあるんだけれど、いまのぼくが選ぶとしたらこのへんだろう。

ミアが「はい、先生。意見があります」と手をあげる。

「ミアくん、どうぞ」

「使い魔サイズ変更のランク2で大型化、ってあるじゃない」

「あるな」

「おっぱいだけ大型化ってできるのかな?」

「できて、どうする」

戯れにQ&Aしてみたところ、不可能、という返答がきた。

別に全然、残念じゃない。

「それはそれとして、カズっち。使い魔強化は鉄板で外せない、よね?」

「だろうなあ。単純に強い使い魔を呼び出せるわけだもんな」

「残る一ポイントは、使い魔維持魔力減少にガン振りしていくか、先に便利系アビを取っていくか」

うん、実質的にその二択だろう。

「使い魔強化で維持MPが上昇することを考慮するなら、使い魔維持魔力減少ガン振りが魅力的かな」

「ん。能力付与も捨てがたい。今回みたいに別行動のとき、どう部隊分けしてもヒーラーを配置できるのはすごく安心感」

それは、たしかに。

でもなー、ヒーラーについてはちょっと考えがあるんだよなー。

「いまリーンが、手をつくして専従契約の書を探してくれています。そのなかに治療魔法の使える使い魔が見つかれば……」

ルシアが、ぼくの考えを代弁してくれた。

そうそう、それです、それ。

まー、昨日の今日だから、見つかるかどうかわからないけどね。

「使い魔が自分で使う、という前提だと、自分にしかかけられないシー・インヴィジなんか魅力的ではあるんだよな……。ランク3まで上げる前提だけど」

ちなみに、使い魔が自ら召喚魔法を行使することはできないとのこと。

まー、それできちゃうと無限増殖だからなあ。

「とりあえず、使い魔同調を取ろうと思う。偵察は重要だしね。異議があるひとー」

誰も手を上げなかった。

ミアもルシアも、納得している様子である。

アリスとたまきは、普段からこういうことで意見を出さないし。

というわけで、ぼくは新たなちからを得て……。

その後も、モンスター退治という名の虐殺を続けたのである。

和久:レベル48 付与魔法9/召喚魔法9 スキルポイント6→1

強化召喚0→1(使い魔強化1、使い魔同調1)

アリス:レベル39 槍術9/治療魔法7 スキルポイント5

たまき:レベル39 剣術9/肉体7 スキルポイント5

ミア:レベル39 地魔法7/風魔法9 スキルポイント5

ルシア:レベル38 火魔法9/水魔法7 スキルポイント3

午前中に合計で三つの砦を落とし、世界樹に戻る。

軽く昼食をとっていると、リーンさんからの連絡がきた。

聖女さまが目を覚ましたらしい。