軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第130話 日常の陰で行われていた忍者の戦い

廃屋を出て、インヴィジブル・スカウトを偵察に向かわせる。

すぐにオーク二体とアーチャー・オークの小部隊を発見してきた。

そちらに向かい、殲滅する。

アリスがレベルアップする。

白い部屋へ。

「さて、カズっち。知っていることを洗いざらい、しゃべってもらおうじゃないかい」

ミアが胸を張り、顎を思い切りそらして、ジト目で睨んでくる。

うん、尋問ごっこをやりたかったんだね。

わかります、でもさ……。

「ぼくが気づいたことって、つまりきみのお兄さんの犯罪的な行動なんだけど」

「ごめんなさい。生意気いいました」

秒速で土下座するミア。

見事な態度の変化だと感心するがなにもおかしくないな。

「是非、お御足で踏んでください」

「たまき、踏んじまえ」

「任せて、カズさん!」

たまきが、ふざけてミアのジャージの背中に靴痕をつける。

どうせこの部屋を出たら消えるのだから、遠慮する必要はないだろう。

「おらおらー、ミアちゃん、どう、気持ちいい?」

「ああー、踏まれるの気持ちいいんじゃー」

「それで、カズさん。なにがわかったんですか」

たまきとミアのふざけあいを苦笑いで眺めつつ、アリスが訊ねてくる。

ぼくは、なんでもないことのように軽い調子で、ほんとうにいつもの調子で、笑った。

「どこから説明したものかな。結論からいうとね。ぼくはどうやら、結城先輩にそそのかされて、ずっと彼の掌のうえだったみたいだ」

「ええと……カズさん、それはいつの話、ですか」

「この一か月くらいの話、かな。ひょっとしたら、シバを殺すって決意も、あのひとに誘導されたものだったのかもしれない」

床に這いつくばっていたミアが「え?」と顔をあげた。

アリスとたまきがきょとんとしている。

ルシアは、いちおうぼくの事情を聞いているとはいえ、その詳細まではよくわかっていないだろうからか、あまり関心がなさそうな顔をしている。

「いままで、たいしたことないと思っていたからはしょっていたんだけどさ。シバに対する復讐は、そのすべてをぼくひとりのちからでやったってわけじゃないんだ。たまにこの学校に来てくれていたセールスマンのひとに話を聞いてもらって……そのひとに、いくつか知識をもらった。ガソリンとかも、そのひとに、こっそりね。あのひとの協力がなければ、すべてを秘密のうちに、ってわけにはいかなかったと思う」

いままでの話の流れから、少なくともミアとアリスは話の展開を理解したようだ。

たまき?

いや彼女はぽかんとしているけど、いつものことである。

ルシアは仕方がない。

なにせ、サラリーマンがなにかもわからないだろうから。

「カズさん、じゃあ、そのサラリーマンのひとが……結城先輩だったんですか」

「あの地下室にさ、背広、あっただろ。それとカツラ。あれは結城先輩の変装道具なんだと思う。というか、さっき気づいたんだけど、昨日も一昨日も、ぼくあのひとの素顔を見てないんだよね」

ミアが起き上がり、「あ、そか」と手を叩いた。

「どーして昨日、会ったとき、メンポしてるのかと思ったら」

メンポいうな。

うん、でも、そうなんだ。

結城先輩は、ぼくと会っている間ずっと、覆面をしていた。

「最初に出会ったときは偶然だったかもしれない。そのあとは、多少、変装していたとしても、さすがに顔を見たらバレるかもしれないって考えたんだと思う。だからぼくの前では、けして素顔を晒さなかった」

「うわー、あの覆面にそんな理由あったのね。さすが忍者だわ」

たまきが感嘆する。

なにがさすがなのかわからないけど、うん、わかってしまえば単純なことだった。

ミアが肩を落とす。

「うう、カズっち、兄がたいへんにご迷惑を」

「それは違う、ミア。これっぽっちも迷惑じゃなかった。どのみちぼくは、シバを殺す覚悟を決める必要があった。そうじゃなきゃ、逆に殺されていた。それに結果として、その準備のおかげで、レベル1になることができた。そういったことが巡り巡って、いまがあるんだから」

そう、結城先輩は、たしかにぼくの思考を誘導した。

たまたま学校にきた部外者を装い、完全にまいっていたぼくの話を聞いてくれた。

ちょっとだけ助言と手助けをしてくれた。

いまになって考えれば。

結城先輩にとっては、シバが邪魔だったのだろう。

彼によって構築される狭量な派閥を壊滅させたかったのだろう。

そのためにぼくを利用した。

そんなことをすればぼくが破滅することを確信していながら、そそのかした。

ひどいことだ、とは思う。

たいした人でなし、外道のすることだ。

でもぼくは、どのみちあのとき、進退きわまっていた。

進むも地獄、退くも地獄なら……。

結城先輩のとった行動は、結果的にぼくにとっておおきな光となった。

なら、いいではないか。

ウィン・ウィンの関係だったのだ。

ただそれに、鈍感な僕が気づいていなかったというだけである。

「カズっちって大物?」

「現実的なだけだよ。そうじゃなきゃ、生き残ってこられなかった」

「ん、そだね。でも、兄のやったことは非道すぎだけど」

ミアは、ぐっと拳を握った。

「次にあったとき、ぼっこぼこにする」

「殺さない程度にな」

「だからさ、カズっち。さっさとこんなところ脱出しないと」

「それももちろんだ。具体的なことは、これから話し合おう」

ぼくたちは、忍者の隠れ家から持ち出した数々の品を白い部屋の床に並べる。

ライター、マッチ、保存食の類いはともかくとして、なんでこんなものがあるんだというものがいくつか。

そのうちのひとつ、粘土のようなものを見て、ルシア以外の全員がため息をつく。

これがなにかは、メモに書き記されていた。

扱い方も解説されていた。

素人でもカンタン! という書きだしで始まる結城先輩の丁寧な説明文は、たしかにとてもわかりやすかった。

「C-4……プラスチック爆弾……。うちの兄は、どこからこんなものを。というか、どういう意図でこんなもの……」

一番、うつろな目をしているのが、ミアだった。

うん、仕方ないよね。

身内がガチでテロリストまがいの装備を整えていたんだもんね。

ぼくも脱力してるもの。

いままで、結城先輩とミアが似ているとかいってたけど、あれ、訂正。

結城先輩は、なんていうか、どこかが決定的にオカシイ。

「このプラスチック爆弾、メモによると、一応、燃料としても使えるってあるけど」

「ん。燃料として使うために、わざわざ違法な手段でこんなもの手に入れない。第一、遠隔式信管もセットって時点で、起爆する気まんまん」

「ですよねー」

まだきょとんとしているルシアに、これがどんなものか説明する。

「遅延性の火魔法……つまりエクスプロージョン・ボックスですね」

「あ、うん。もうちょっと利便性は上がるけど、威力は……どっちが上なんだろうなあ」

「カズっち、なんでわたしの方を見ている?」

いや、ミアならこれの威力とか知らないかなと。

どうやら、さすがにそこまでの知識はないようだった。

「ただの中一にどんな軍事知識を期待している?」

「これだけ桃色知識満載な中一も珍しいだろう」

「思春期ゆえ」

それはいいわけになっているのだろうか。

いいけどさ。

「ひょっとして、これ、ぼくがためらっていたら手渡すために手に入れたとかなのかなあ」

「その可能性も充分にある」

シバを爆破する。

それはそれで魅力的だけど、うーん、あいつを始末するためにそこまで念を入れるか、結城先輩は。

なんかもう、入手経路については考えないようにするとして……。

「現状、あまり使い道は思い浮かばないけどな……。だいたいの場合、魔法の方が効率も利便性もいい」

「エクスプロージョン・ボックスより応用性がきく」

「そうだな。それくらいのものだと考えておこうか」

現代兵器も、いまのぼくたちにとっては、所詮その程度のものだ。

マシンガンがあったって、同じような反応だろう。

ぼくたち以外が使うなら、また話は別だろうが……。

敵もインフレしているからなあ。

オークや蜂だけならともかく、オーガが束になってかかってくると、AK47程度では厳しい気がする。

多少、弾を喰らっても前進してくるだろうし、それらを指揮するメイジの魔法がどうしようもない。

ま、いまここにない武器についても論じても仕方ないか。

地下室から持ち出したものについて、もう少し検討しよう。

「あとの問題は、このUSBメモリだよな……」

機密、というシールが貼られたUSBメモリ。

なにが問題かって、この中身をみる方法がないことである。

この部屋のノートPCには、そんな便利なスロットもない。

「育芸館が爆破されちゃったの、困りましたね」

アリスがため息をつく。

志木さんたちが世界樹に逃げるとき、数台はノートPCを持ち出しているはずだが……。

どこかで調達するしかないだろうか。

「ミア、きみはどうせ、ノートPCを持っていたんだろう」

「わたしのPCは育芸館に……」

ああ、そうか。

そりゃそうだよな、女子寮に残しておく意味はないし。

その育芸館は、要塞砲で破壊されてしまった。

きっと、PCも粉々だろう。

「高等部の男子寮か女子寮を調べる? あるいは、本校舎の校長室に兄が置いていっていれば……」

「本校舎、爆破されちゃいましたね……」

「う、そだった。じゃ、寮か。オーガたちの巣窟になっていないといいけど」

「望み薄だろ」

ですよねー、とミアがため息をつく。

「諦める?」

「それも手のひとつではある、が」

わざわざ結城先輩が用意したものだ。

ぼくたちにとって助けとなる情報が入っている可能性は、それなりにある。

「のーとぴーしー、というのが、この白い部屋にあるあれだというのはわかりましたが……あれでは、ダメなのですか」

「あのPCは調べてみたけど、USBスロットとかなかったから」

「ええと……合う鍵がない、ということですか」

まあ、そんな感じだ。

多少、苦戦しつつ、ルシアにイメージを伝える。

「でしたら、インヴィジブル・スカウトを使い偵察を行うのはいかがでしょう」

ひととおりぼくたちの説明をきいたあと、ルシアはそう提案してきた。

あ、うーん、それが妥当かな。

問題は、インヴィジブル・スカウトがノートPCというものの存在について認識できるかどうか、だけど……。

ぼくが視野を共有して、インヴィジブル・スカウトが全部の部屋を覗いて、一度帰還させたあと具体的な指示を出す感じかなあ。

ノートPCを手に入れたとしても、バッテリーがあがっていないかって問題も出てくる。

そっちは、地下室の予備電源を使えばいいかな。

おおまかな方針については、こんなところか。

あとは……。

「高等部の地下にあるっていう、広い空間のこと」

ミアがいう。

昨日ミアが受け取った結城先輩のメモにあった話だ。

メモには、高等部のグラウンド、昨日ぼくたちがオーガ部隊を迎撃したあたりの地下に、妙に広い空間があることが示唆されていた。

生徒には知らされていなかった地下室。

結城先輩はそこを調べるよう、指示を出している。

入口についても記されていた。

「時間がない。並行して調査するべき。わたしとアリスちんが透明になって、いってくる」

「無謀じゃないか」

「だから、慎重なアリスちんを選んだ」

ああ、そうかー、なるほどなー。

たまきがきょとんとしていた。

アリスは、苦笑いだ。

「え、でもわたしの方が戦いになったら強いよ? 治療魔法、そんなに必要?」

「たまき。ぼくはそんなきみのことが大好きだぞ」

「わっ、なになに、カズさんいきなり!」

たまきは照れた。

いたたまれなくなって、そんな可愛い彼女の頭を撫でる。

アホの子の少女は、嬉しそうに目を細めた。

「ちょろかわいい」

ミアが余計なことを呟いた。

アリスのスキルポイントは貯めることにして、もとの場所に戻る。

アリス:レベル27 槍術8/治療魔法5 スキルポイント3