軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それって確かな情報なんですか?

そして、それから少しの時間がたった後。

ダンジョン前に辿り着いたイストファ達は、ダンジョン一階層にあるという「転送の宝珠」をアッサリと見つけていた。

まるで自分に触れろと主張するかのように浮かぶ宝珠。

階段を降りてすぐの場所にあるソレが今まで見る事すら出来なかったという事実は、イストファ達にダンジョンというものの不可思議さを改めて伝えてくる。

「これ……だよね?」

「だな」

「じゃあ、早速……うわっ」

転送の宝珠に触れようとしたイストファは、カイルに肩を掴まれる。

「え、な、何?」

「何、じゃねえよ。これは帰還の宝珠と似たようなもんだ。触れてりゃ一気に転送できる」

「そっか。じゃあドーマも」

「ええ」

服の裾を掴むドーマを確認すると、イストファは宝珠に触れる。

すると、頭の中に二階層のものらしき森の光景が浮かび始める。

そう、そこに行きたいと……そう考えた瞬間。

ブオン……と。そんな音と共にイストファ達の視界が切り替わる。

「うわ、本当に着いた……」

「凄いですね」

二階層の入り口の小屋の中。

昨日此処に溜まっていた冒険者達は狩りにでも出ているか、それとも帰ったのか。

それは分からないが、部屋の中には誰も居ない。

そして……振り返ると、カイルが顔を真っ青にして床にへたり込んでいた。

「あ……そっか。転送酔い……」

「これはもう体質ですね。とはいえ、慣れればある程度は緩和されるはずですけども」

「うぉえ……俺はもうダメだ……」

しばらく放っておけば治るのは分かっているし、この場所は安全であるらしい事も分かっている。

だからこそドーマはカイルが買ってきた二階層の地図を広げ始め、イストファはカイルの背中をさする。

「大丈夫? カイル」

「ダメだが大丈夫だ……それより見ろイストファ。あの神官もどき、具合の悪い仲間を完全放置して……うぷっ」

「そんな事言われても、転送酔いをどうにかする魔法なんて授かってませんし」

何を言ってるんだと言いたげなドーマにイストファは苦笑する。

まあ、確かにそれはその通りではあるのだろう。

此処が安全である以上、ドーマの対応はある意味で正しい、のだが。

少し時間がたって気分も落ち着いてきたらしいカイルはゆっくりと起き上がると、ドーマをじとっとした目で睨む。

「……まあ、確かに俺も同じ対応するとは思うがな」

「ええ……?」

「仕方ねえだろ。酔い止めや酔い覚ましでどうにかなるもんでもねえし」

「じゃあ、なんでドーマを責めたのさ……」

「そりゃお前……」

そういうもんだろ、と言いかけてカイルはピタリと止まる。

気が弱くなってる時は助けを求めたくなるものだ。

だから「そういうもの」なのだが、「そういうもんだろ」などと言ってイストファが納得するとも思えなかった。

どうでもいい相手ならそれでもいいのだが、正直に言ってカイルは友人である……と思っているイストファにあまり嫌われたくはない。

だから、なんとも微妙な顔をしているイストファの前で「あー……」と言いながら視線を彷徨わせる。

「……ドーマなら何か手段を持ってるかもって期待したんだよ」

「そっか。神官だもんね」

「あんまりそういうのを期待されても困るんですが……」

「そうだな、すまん」

納得した風のイストファを見てホッとすると、カイルは立ち上がる。

たぶん今のはドーマも何となく察してのってきてくれたのだとは分かっているが故に、カイルはドーマに心の中で感謝する。

……まあ、同時にイストファは想像以上に騙されやすいんじゃないかと心配にもなるのだが、それはさておき。

「しかし、今日は此処に溜まってねえな」

「そだね」

「ま、静かでいい。丁度いいから作戦会議するぞ」

「それがいいかと。外でやるには少々殺傷力の高いモンスターも多そうですしね」

頷いたドーマが地図を閉じてカイルに渡そうとするが、カイルはそれをやんわりと拒否する。

「一応お前が持っててくれ」

「それは構いませんが」

「で、だ。この第二階層『暴食の樹海』だが……出てくるモンスターは、一匹残らず人喰いのモンスターだってのは、ステラも言ってたよな」

「採れる果物を食べちゃいけないって話もあったよね」

ステラから聞いた話を思い出し言うイストファに頷くと、カイルは「それで、だ」と続ける。

「まず、この階層の最終目標である守護者だが、よく聞けよ」

「うん」

「マンイーターだ」

その名前にイストファは首を傾げるが、ドーマは「えっ」と声をあげる。

「それって確かな情報なんですか?」

「ああ、確定情報だ。流石にドーマは知ってるか」

「当然です。森に発生したら最優先での駆除対象ですよ?」

「だろうな」

「えーっと……」

理解できたカイルとドーマとは逆に、全く理解できていないイストファが困ったような声をあげる。

「それって、どんなモンスターなの?」

「ん、そうだな。簡単に言うと、デカい植物型のモンスターだ。真っ赤で気持ち悪ぃ花に蔓がたくさん生えたみたいな見た目なんだが」

マンイーター。

それは「人喰い」の名称を最初につけられた超有名モンスターの一種だ。

一般的な大きさは、頭部であり胴体でもあると思われる花部分が大人数人分程度の大きさ。

そこから生えた無数の蔓を合わせれば文字通り見上げるような巨体であり、成長すると更に大きくなるとも言われている。

どうやら地面に根を張っているらしく発生した場所から動くことは無いが、甘い香りで他の動植物やモンスターをおびき寄せるともされている、放っておいても害しかないモンスターだ。

「んー……」

「なんだイストファ。想像し辛いか?」

「いや、そうじゃなくて。動かないってことはさ」

「おう」

「カイルの魔法の威力がもう少し上がれば、一方的に攻撃できるって事じゃ……」

イストファのそんな疑問に……カイルはニヤリと笑う。

「おう、その通りだ。だから、この階層を通り抜けるのは簡単だ。俺の魔力がもうちょい上がって、死なずにマンイーターの場所まで辿り着く。それで勝ち確定なんだからな」

「だとすると、この階層でしばらくモンスター退治ということになりそうですが。今はどのくらいの威力なんです?」

「そりゃ試してみるしかないな」

「じゃあ行く? キノコくらいならすぐ見つかるかもしれないし」

「まあ、待て。まずはモンスター情報の共有だ。全部覚えろとは言わねえけど、どんなのが居るかくらいは頭に叩き込めよ」

そうして、3人は二階層のモンスター情報を共有し終わるとドアを開け外へと出る。