軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そんなに高くないやつを

「おいイストファ、何やって……って、ゲッ!」

「あらご挨拶」

イストファがついてこないのを気にして戻ってきたカイルが、ステラを見て嫌そうな顔をする。

一方のステラは、ニマニマとした面白がるような顔だ。

「お前、ダンジョン潜ってないのかよ?」

「色々あるのよ、私にもね」

言いながらステラはイストファを見下ろし「あら」と声をあげる。

「あの革鎧、買ったのね。似合ってるわよ」

「ありがとうございます」

「でも、無茶はしてないわよね? ゴブリン相手じゃ、大物狙いしないとこの時間じゃ無理だと思うけど」

「はい。ゴブリンヒーローと会いまして……」

「なるほど?」

言いながら、ステラはイストファをクルリと回転させて抱き寄せ直す。

「それは災難だったと言うべきか、幸運だったと言うべきか。こうして生き残ってるんだから幸運と呼ぶべきなのかもしれないわね。どう? 強かった?」

「はい。凄く強かったです」

「そう。でもね、ゴブリンヒーローはダンジョンの中では下から数えた方がいい強さよ。それを胸に刻んで、けれど勝利した事を誇りなさい。今の貴方からすれば、格上だったんだから」

「……分かりました」

要は調子に乗って死ぬような真似をするなと言いたいのだろうとイストファは思う。

確かにゴブリンヒーローを倒したからと妙な自信を持てば、アッサリと負けて死ぬかもしれない。

ダンジョンで命をかけて戦うというのは、そういうことだ。

「でも、よくやったわ。それは褒めてあげる!」

「わぷっ」

強く抱きしめられて、イストファの頬にミスリルアーマーのひんやりとした感触が伝わってきて。

その肩を、カイルにグイと引っ張られる。

「そのくらいにしとけよ。飯食う時間が無くなるだろが」

「それもそうかしらね」

そう頷くと、ステラはアッサリとイストファを離す。

「それじゃイストファ、私も同席していいわよね?」

「それは、勿論です」

「おい」

「はい、決まり! 行きましょ!」

イストファの手を取りステラは食堂の中へと歩いていく。

控えめに言っても相当に美人なステラは当然人目を引くが……そうなると当然手を引かれているイストファにも視線が集中してくる。

「……なんだありゃ、どういう関係だ……?」

「結構良い鎧着てやがるな。その割にゃ武器は……」

「イストファ、こっちですよ!」

ぼそぼそと呟く声を掻き消すように、席についていたドーマが大きな声をあげる。

偶然かワザとかは分からないが、ぼそぼそとした呟き声はそれで消えて失せる。

元々ザワザワと雑談で煩かった食堂の声はまたイストファ達とは関係のないものに戻り、ドーマは小さく息を吐く。

その仕草だけで「ワザと大きな声をあげたのだ」ということはイストファにも充分すぎる程に理解できてしまう。

「あの子、新しい仲間?」

「はい、席に行ったら紹介しますね」

「楽しみだわ。早く行きましょ」

またステラにグイグイと押されながらイストファはドーマの待つテーブルまで辿り着き……そうすると、イストファの背後からステラがヒラヒラと手を振る。

「はぁい、こんにちは。イストファの師匠をやってるステラよ。よろしくね?」

「ドーマです。イストファの仲間になりました。どうぞよろしく」

何やら一瞬好意的ではない視線がぶつかり合った気がして、イストファはビクリとして二人を見比べる。

「え? なんか今、変な感じがあったような」

「気のせいでは?」

「気のせいよ」

微笑むドーマとステラにイストファは「そうかな……」と呟くが、下手に突っ込まない方がいいと本能的に理解し席に座る。

五つ置かれた椅子は全員が座っても一つ余るが、今は気にする事もない。

全員が適当な席に座ると、それを見越したように店員がやってきて水を置いていく。

「いらっしゃい! 何にしますか?」

「お勧めの、そんなに高くないやつを」

「あ、僕も同じで」

「なら俺もだ」

「私も同じでいいわ」

「はい、定食四つで承りました! 先払いで2000イエンになります!」

イストファが財布を取り出そうとする手を抑え、ステラが1000イエン銀貨二枚を店員に握らせる。

「今日は私の奢りよ。新しい仲間を祝して、ね」

言いながらステラはテーブルの上に一枚の封のされた書状を置く。

「私が賛同したっていう証明書よ。持っていけばパーティ加入処理が出来るわ」

「……いいんですか? 初対面のはずですが」

書状を受け取るドーマに、ステラは笑う。

「イストファが選んだ子に文句言う気は無いわ。一目見て分かるくらいにアレだったら、反対してたけどね」

「そうですか。では有難く」

書状をドーマが仕舞うと、先程の店員がトレイに料理を載せて戻ってくる。

山盛りの空揚げとスライスしたパン、そして申し訳程度にトマトが載った皿を見て、イストファは思わず「うわあ」と声をあげてしまう。

今まで見た事もないような大盛りの肉。

おそらく、というか確実に食べきれない。

「……こんなに食べられるかな」

「食べきれなかったら食べてあげますからご心配なく」

「だな」

食べ盛りらしい二人が頷き合い、イストファが「そっか」と笑う。

食べきれない。分ける。どちらも少し前までのイストファには考えられなかった事だ。

それが今は、こうして自然と受け入れられている。

誰も言われずとも、それが幸せな事だと……イストファは、そう感じていた。