軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お前が頼りだ。頼むぜ、イストファ

カイルの言葉に、ヒーラーの少年は頷く。

「……二階層へ向かう途中で、剣を持ったゴブリンに襲われたんだ。いきなりだったうえに、相当強くて……魔法士が最初の一撃で斬り殺されたんだ」

「えっ」

「剣のゴブリンだあ? ソードマンか?」

「分からない。一階層はすぐに通り抜けるつもりだったから、情報はほとんど買ってないんだ」

「チッ」

剣を持った強いゴブリン。カイルの知る限り、1階層に出る該当するモンスターはゴブリンソードマンしか居ない。

ならば特殊な武器……恐らくは切れ味の上がる「鋭刃」辺りの能力付きの剣を持っているのだろうとカイルはあたりをつける。

そうでなければ、不意打ちとはいえヒールが間に合わない程の攻撃を出来たとは思えない。

「重戦士が食い止めてるけど、動きについていけてない。攻撃を出来る人の助けが要るんだ」

「……なるほど。それなら、その人を助けに行かないとね」

重戦士ということは、金属製の全身鎧を着ているのだろう。

相手を倒せないとしても、倒されるという事はなさそうだとイストファは考えてカイルへと視線を向ける。

「カイル。どう思う?」

「そうだな……たぶん鋭刃の能力付きの剣だろうな。下手に打ち合うとザックリいかれるぞ」

「分かった。それなら僕も知ってる。油断はしないよ」

そう、イストファもそれには覚えがある。

鋭刃の鉄短剣。今持っている短剣をアッサリと切り裂いた威力を忘れた事はない。

目印は、赤い宝石。それもちゃんと覚えている。

「あの、待ってください。根本的な話をしても?」

「え?」

落ち着いた風のドーマの言葉に、全員の視線が集まる。

「どのくらいでその場に着くのか分かりませんけど……普通に考えて、死んでるのでは?」

「そんな事ない! 鋼鉄の鎧で固めた重戦士が食い止めてるんだ! 足りないのは攻撃手段だけなんだ!」

「鋼鉄ですか。それなら確かに……」

「ああ、鋭刃の鉄短剣程度じゃ、鋼鉄の鎧は斬れねえ」

「えっと……そうなの? じゃあ、僕の盾でも防げるかな」

その辺りがよく分からないイストファが聞くと、カイルは頷く。

「ああ。お前の小盾も表面は鋼鉄だろ? いけるはずだ。無茶すっと壊れるかもしれねえがな」

「その辺りはある程度法則みたいなのがあるらしいですよ」

今は説明する時間はありませんけど、とドーマが続ける。

「ともかく、それなら何とかなりそうだな」

言いながらカイルはイストファの肩を叩く。

「お前が頼りだ。頼むぜ、イストファ」

「うん。任されたよ」

「え、ちょっと待ってくれ。俺としては君の魔法を頼りにしてたんだけど」

「そりゃ無理だ。俺の魔法はそこまで強くねえ。修行中なんだ」

なんだそりゃ、と言いたげなヒーラーの少年の前に、カイルはイストファをずいと押して突き出す。

「だが安心しろ。こっちのイストファはソードマンもファイターも斬り殺す期待の剣士だぜ」

「確かにそれなら……」

言いながら、ヒーラーの少年はイストファの手を握る。

「俺はモリスンだ。えっと……イストファ、頼む。俺の仲間を助けてくれ」

「分かってる。すぐに行こう!」

「ああ」

「まあ、仕方ないですね」

「あ、ありがとう! こっちだ!」

イストファの号令にカイルとドーマが頷き、モリスンが先導して走り始める。

「あっ」

危ないからと止めようとしたイストファの肩を、ドーマとカイルが掴む。

「いいから先に行かせてあげましょう。その方が速いです」

「え、でも」

「……何かの罠って可能性だってあるんだ。先に行ってもらったほうが対処しやすい」

ドーマの耳障りの良い言葉とカイルの警戒の言葉に、イストファは思わずゴクリと喉を鳴らす。

一度騙されているだけに、イストファからはそれを否定できる意見を出せはしない。

「お、おい。何してるんだ。早く!」

「う、うん。大丈夫!」

モリスンに少しの警戒をしつつ、イストファはその後を追う。

罠だとは思いたくない。思いたくないが……そうなった時、仲間を真正面から守れるのはイストファしか居ないのだ。

小盾をしっかりと握り、イストファは走る。

どうか、罠じゃありませんように。

そう考えて走った先。そこには……分厚い鎧を切り裂かれ倒れた全身鎧の誰かと、明らかに死んでいる魔法士の死体……そして、全身鎧の誰かを踏みつけ、やけに立派な装飾の剣を振り上げている、小綺麗な布の服のゴブリンの姿。

歪んだ笑顔を浮かべ剣を振り下ろそうとする、その瞬間。カイルの杖から電光が迸る。

「ボルト!」

「ギッ!?」

発動を感じ取ったのか、放たれる前に素早く離れ避けるという離れ業をやってのけたゴブリンに、イストファは警戒を最大まで引き上げる。

同じことを自分が出来るか。答えは否だったからだ。

だが、今の隙を逃すわけにはいかない。

大丈夫、ゴブリンソードマンなら倒した事がある。

しかも前に会った胸部鎧を着込んだ奴と比べれば、盾を持っているものの防御力には格段の差があるだろう。

「いくぞ……っ!」

「援護する! スピードアシスト!」

モリスンの魔法による光がイストファを包み、僅かながら身体が軽くなるのを感じた。

「引き離してくれ! その間に仲間にヒールをかける!」

「うん!」

盾を構え待ち構えるゴブリンへと、イストファは一気に距離を詰めていく。

まずは、あの盾に正面から突っ込む……と見せかけて回り込む。

狙うは剣を持っている手。ゴブリンスカウトにしたように、あの手を盾で殴りつける。

そこまで一瞬で考えを纏め、イストファはゴブリンの手前でサイドステップを……出来ない。

「ギイ!」

「がっ……!?」

待ち構えた体勢から一気に飛び込む事による盾での殴りつけ。

すなわちシールドバッシュを正面から受けたイストファは、大きく弾き飛ばされた。