軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

黄金のように輝く未来を

路地裏に、薄汚れた少女が座り込んでいる。

銀色の髪は汚れと汗でくすみ、簡素な布の服も汚れが激しい。

一見して落ちぶれ者と分かる少女のそんな姿は、別に珍しくもない。

此処、フィラード王国の中でも特に景気の良い迷宮都市エルトリアでは夢見てやってきて、そのまま夢破れる者など掃いて捨てる程にいる。

ただ、少女の姿に他の落ちぶれ者達と違う点があるとするなら、それは。

その青色の瞳が未だ光を失っておらず。その腕に、冒険者見習いの身分を示す木製の腕輪が嵌っている事くらいだろうか?

他には少女は何も持っていない。何も、何一つとしてだ。

英雄譚に謳われる伝説の剣を隠し持っているわけでもなければ、その身に強い魔力を秘めているわけでもない。

かつては貴族の一員ではあったが……愛人の子であったが故に庇護を失い追い出された、そんな程度の出身。

頼るべきものは何処にもなく、僅かな持ち物はもう全て消えた。

幸運と言えば奴隷商人に売られなかった事と、無事に迷宮都市に着いた事。

不運はその後全部。

働けど稼ぎは奪われ、乙女としての尊厳だけは優秀な衛兵の働きによって今日まで守られている。

しかし、それもいつまで持つか。

それでも、自身の尊厳を売り渡す気にはならなくて。

「私は……絶対に諦めない。幸せに、なるんだ……!」

冒険者ギルドで買った薬草知識を、奪われない「知識」を武器に、門の外で薬草を詰む。

せめてナイフの1本でもあれば変わる。

けれど、それを買うにもお金が要る。

だから、少女は今日も薬草を詰んで。

「……手慣れてるね。高く売れそうなものだけ摘んでる」

「!?」

思わず身構える少女を覗き込んでいたのは、1人の少年。

少女より少しくらい上だろうか?

そんな年頃の少年は、少女では手に届きそうにもない装備を付けていて。

その姿に、少女は思わず嫉妬心を抱いてしまう。

何故、彼は。そう思ってしまったのだ。

だからこそ、多少の反抗心を込めて少女はこう答える。

「知識は、奪われないから」

「でも、その結果のお金は奪われてしまう」

「そうよ……それが何!? 同情なら何処かに行って!」

叫ぶ少女に、少年は困ったような笑みを浮かべて……何かを取り出し、手に握る。

「僕も、チャンスを貰ったんだ。今の僕にとっては、これはあまり大したお金ではないけれど」

「何を言って……」

「もし、君がまだ抜け出すチャンスを狙っているなら。きっと、君の救いになると思う」

手渡されたそれは、1枚の金貨。

「こ、これって……1万イエン金貨!?」

思わず叫んで、少女は慌てたように金貨を握りしめ周囲を見回す。

大丈夫、誰も見ていないし聞いていない。

「……どういうつもりなの」

「僕も、それに救われた事があるから」

「だから施そうっていうの?」

「うん」

アッサリと言う少年に、少女は絶句する。

偽善だと知っていてやっていると、少年はそう答えたのだ。

「金貨1枚でも人生は変わる、変えられる……そう望むなら、必ず」

だから君も、と。そう言う少年を見つめながら、少女は手の中の金貨を握りしめる。

確かに、これさえあれば武器が買える。

武器が買えるなら、ダンジョンにだって行ける。

そうすれば、確かに人生を変えられるチャンスだってある。

「感謝はするわ。私が成り上がれたなら、お礼もする……絶対にね」

そう言って走っていく少女を見送って、少年は小さく呟く。

「ステラさんにも、僕はあんな風に見えてたのかな?」

消えかけていた火が再び燃え盛るかのような、その姿。

その背中が見えなくなるまで見つめていた少年は、静かに空を見上げる。

そう、それは普通に生きている人からしてみれば、「たった1枚の金貨」でしかないもの。

それでも。そう、それでも。

そのたった1枚の金貨で、人生は変わる。変えられる。

そう望むなら、走り出すなら、必ず。

その黄金のように輝く未来を、誰もが掴む事が出来るのだ。