軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そういう方向性か

「まあ、念のため言っておくとな。隅は進むなよ? 刺されるからのう」

「刺される?」

「うむ。あの両隅じゃがな。どうも床に不自然さがある。恐らく針の山でも飛び出てくるのではないかな?」

「うわっ……」

這って歩いているのにそんなものが出てきては、全身串刺しは間違いない。

思わず声をあげてしまうイストファに、クロードは面白そうに笑う。

「入り口付近からこうとは。中々に殺意が高いのう?」

「こうまで罠の性格が悪いと、真ん中に何か別の仕掛けもありそうですが」

「否定はせんがの。試練場と銘打っておいて、そこまではせんと思うが」

ドーマに答えるクロードの言葉に、イストファも思わず頷いてしまう。

「試練を望む者は……か」

「ん?」

「クロードの言う通り、此処は『試練場』なんだよね。造った人が、それを意図したんだ」

「まあな」

「此処より先は2つに1つ。栄光を得るか、屍を晒すかのみ。つまり『栄光』を得るチャンスは、ちゃんとあるんだ」

もし悪鬼の試練場が来る者全てを殺すというのであれば「2つに1つ」などとは書かない。

「それ自体が罠って可能性もあるがな」

「なら、こう考えるのはどうかな」

言いながら、イストファは下を指さす。

「僕達の先輩が、下に進んでる。なら、此処はちゃんと突破できる階層なんだ」

言われてカイルが、ドーマが……そしてミリィが一瞬の沈黙の後に噴き出す。

「ははっ、なるほどな。そりゃすげえ説得力だ」

「確かに此処は悪鬼の試練場ですが……そうですね、それに囚われ過ぎていたかもしれません」

「そうですよね。この階層を突破できた人はいるんです。なら……」

「うん。僕達にだって、きっと出来るよ」

言いながらイストファがクロードに視線を向ければ、クロードは軽く肩をすくめてみせる。

「ま、全力は尽くすとも」

「うん、よろしくね!」

そうして、クロードを先頭に這って進んでいく。

刃の罠も、針の罠も……勿論落とし穴も発動することなく通路の先の小部屋へと辿り着き、クロードは立ち上がる。

「うむ、もう良かろう」

「だあー……ようやくか。永遠に感じたぜ」

「緊張したね……」

「嫌な汗かいちゃいました」

「私もです。本当にクロードが居て良かった」

「褒めてくれるのはありがたいがのう。此処から先が本番じゃぞ?」

その言葉に全員がウッと言葉に詰まる。

確かに、此処はまだ階層の序盤。ここから先、どんな罠が待ち受けているか知れたものではないのだ。

「何より、最初の謎がまだ1つ解けてはおらん」

「……全ての理の破棄を許そう、ってやつか」

「うむ。無論、此処は本物を模した階層じゃ。意図したものが此処では消滅している可能性はある。あるが……」

「油断はできない、よね」

「そういうことじゃ」

破棄を許される「理」とは何なのか?

ただの脅し文句と気にしないことも出来るが、妙に引っかかるのも事実ではあった。

「今考えても意味はなさそうではあるがな。心の隅には留めておこうぜ」

「うん」

イストファが、そして仲間達が頷いたのを確認するとカイルは道の先を見つめ……再度の溜息をつく。

「長ぇな、この階層……あとどれだけ罠を突破すりゃいいんだ」

「さて、のう。こればかりは……ん?」

道の先……曲がり角を見ていたクロードが、戦闘の構えをとる。

「何か来るぞ! 備えよ!」

「は? 何かって……うおおお!?」

曲がり角の、その向こうから飛んできた光の槍の群れにカイルは杖を構え……飛び出したイストファの短剣が複数の光の槍を消し去り、クロードの輝く手が残った光の槍を打ち落とす。

そして、その次の瞬間……光の槍の飛んできた場所から、白いローブを纏う黒い影の塊が現れる。

「ファントムプリースト……!?」

「死後に魂を穢され生まれるというアレですか⁉」

「そうだ! くそっ、そういう方向性か!」

ファントムプリースト。穢れの強い場所で死んだ神官や、悍ましき技によって死後の魂を穢された神官がなると言われているモンスターだ。

無論、そう「言われている」だけであって事実かどうかは分からない。

モンスターほど正体不明のものはないからだ。

しかし、それでもファントムプリーストが此処にいることは事実。

「くらいやがれ……メガボルト!」

轟音と共に放たれる雷撃はファントムプリーストを貫いて霧散させる。

そして……次の瞬間、カイルはドーマに引き倒されていた。

「ぐえっ!?」

「束縛の呪い!」

ミリィの呪いが放たれ、壁から上半身を生やしていたゴースト……のようなものの動きがピタリと止まる。

「げ、スペクターか……?」

「束縛されし罪人に、ボクは呪神の裁きを願う……苦痛の呪い!」

「ギ、ギアアアアアアアア!?」

ミリィの杖から放たれた紫の輝きはスペクターに吸い込まれ……そして、絶叫と共にスペクターは消え去る。

それが本来の使い方ではなく、魔力で身体を構成されたスペクターであるからこその「必殺」であることをカイルはすぐに悟る。

「なるほどな……魔力による内部からの直接攻撃な呪法は、連中にはまさに特効ってわけか」

「試すのは初めてですけどね。それより……」

「うん……囲まれてる」

壁から、床から、天井から……無数のゴーストやスペクター達がその姿を見せる。

「死者の無念眠る階層ってか……? 冗談じゃねえ、これ以上増える前に突破すんぞ!」