軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

どうやれば、こう育つやら

第2階層、暴食の密林。

何処から吹いているのかも分からない風に木々が揺れるその場所に、イストファ達は立っていた。

「ふーむ。何故この階層に?」

「お前がどの程度戦えるのかわかんねーと、戦闘中の役割がわかんねーだろうが」

「なるほどのう」

単純明快なカイルの台詞にクロードは頷き……同時に、その姿が僅かにブレる。

「え?」

目を瞬かせたミリィ。その次の瞬間にはパン、パアン、という打撃音と共に磔刑カブトたちが砕かれながら吹き飛んでいくのが見えた。

同時に、何か……キラキラと光る魔力の輝きも。

「今のって……」

「魔法? いえ……」

見えていたイストファと、かろうじて見えたといったドーマが驚きの表情を見せる。

そんな彼等に対し、クロードは薄い笑みを浮かべたまま……猛スピードで迫りくる斬首クワガタへと、その視線を向ける。

そうして……自分の首を切り落とさんと迫る斬首クワガタを、淡く輝く手刀の一撃で真っ二つに切り裂いた。

「……ま、こんなもんじゃろ」

「マジックアーツ……!? おいおい、マジモンかよ!?」

「え? なんだっけそれ」

「自分に魔法的効果を纏わせる技だよ! 平たく言やあ……」

「近接型魔法士。あるいは生きてるマジックアイテム。そういうものを目指した成れの果てじゃの」

そう、結果から言えば「マジックアーツ」は普及しなかった。

いや……普及できなかった。何故なら、それは。

「武器を持たずともマジックアイテムのような強い戦闘力を維持できる技。それが如何に使われたか」

「……暗殺」

「そう、その通りじゃ。故にマジックアーツは闇に埋もれた」

素手の相手がマジックアーツを使い、暗殺を成功させるに至る。

それはマジックアーツを危険なものとして時の権力者たちに認識させ、その存在を徹底的に埋もれさせるに至った。

後世に、そんなものは完成に至らぬ机上の空論として常識化させるほどに。

「だからこそ、儂は……」

木々の間から飛び出してきたグレイアームを、輝くクロードの蹴りが真上へと打ち上げる。

一撃で絶命し転がるグレイアームをそのままに、クロードは宣言する。

「儂は、この技を暗殺に使う連中を悉く滅さねばならん。あと1人……それで、叶う」

「お前、まさか……」

「おうよ。儂がアサシンになったは、その情報網で『同門』を探るためじゃよ。そうして、マジックアーツを復興させる。今度は……『表の技』としてのう」

イストファ達と共に在れば、それも叶うとクロードは確信している。

輝ける光の下でならば、かつて落ちた古臭い技も輝きを取り戻すだろう。

その実例を、クロードは知っている。

「……そっか」

「失望したかの? じゃが、儂は……」

「クロードは、凄いんだね」

「は?」

思わぬイストファの言葉にクロードは思わず、その細い目を見開く。

何がどうなったら、そんな言葉が出るのか……全く理解できなかったのだ。

「いや……何故そうなるんじゃ?」

「だって、しっかりとした夢があるじゃない。僕はまだ……そういうのが、決まってないから」

憧れはある。目指したい「先」はある。けれど、その先は?

何も換えてでも貫きたい夢が、イストファにはまだない。

「人を殺さなきゃ叶えられないっていうのは悲しいけど……それでも、凄いと思う」

「……なるほどのう」

小さく息を吐き、クロードは気付く。

「全部本気、か……どうやれば、こう育つやら」

「どうって……え?」

イストファの台詞は、全部本気だ。

本気で凄いと思っているし、本気で悲しいと思っている。

その上で、本気でクロードを肯定している。

余計な感情の混ざらない、純然たる本気。それが1本の剣のように、クロードに突き付けられている。

「……いやはや、これは参った」

言いながら、クロードは自分の胸を拳で叩く。

「イストファ。契約とは別に、お主の味方であると誓おう。その眩さが、そこにある限りは……な」

「友達になってくれるってことでいいの、かな?」

「その言い方が好みなのであれば」

「なら、こうだよ」

イストファの突き出した拳にカイルが「あっ」と声をあげる。

「友情の儀式。拳を合わせるんだ」

「……なるほど?」

それを誰が教えたのかを視線で理解しつつも、クロードはイストファの拳に自分の拳を重ね合わせる。

「ならば誓おう、友情を」

「うん」

そうして重ね合わされる拳。

笑いあう2人に、カイルは腕組みなどしながら「まあ、あれだ」と呟く。

「懸念も疑問も解決したな。お前、前衛だな」

「ま、そうじゃろうのう」

カカ、と笑うクロードだったが……ともかく、これで第9階層「悪鬼の試練場」に挑む準備は整った。

「んじゃ、まずは歩きで外まで戻るか」

「えっ」

「えっ、じゃねえんだ。帰還の宝珠だってタダじゃねえしレアだから取り合いになるんだぞ」

とりあえずまずは、1度外まで戻ることからだった。

微妙に悲しげな表情のミリィと、自分自身言っていて嫌そうなカイル。

それでもなんとか……地上までイストファ達は戻っていく。