軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

分かってるとは思うが

その言葉に、全員がざわめく。

イストファにとってアサシンは何度もやりあった相手であるし、他の3人にとって「アサシンギルド」は理解度の差こそあれ、その存在は知っていた。

「アサシンだと……?」

ほぼ反射的にイストファとドーマがカイル、ミリィ、そしてケイを庇う。

警戒した様子を見せる全員に、少年は苦笑しながら肩をすくめてみせる。

「嫌じゃなあ。その殺人鬼に向けるような目をやめてもらえるかのう?」

「アサシンが殺人鬼じゃなきゃ、なんだってんだ」

「日々の飯の種にしてるだけじゃよ。そんなもん、珍しくもないじゃろうに」

それに、と少年は言う。

「儂は受ける仕事は選んどる。この街はその辺にも厳しいからの。それが出来ん奴はマトモな手段では入れんよ」

「……信用できねえな」

「そりゃ困ったのう」

睨みつけるカイルにたいして困っていなさそうな顔で返すと、少年は「ふむ」と頷く。

「こいつは困ったのう。儂はなんとしても、お主らについていきたいんじゃが」

「なんとしてもって……その、どうして……ですか?」

「あ、敬語はいらんよ。儂は、お主らとたいして年齢も変わらんからの」

「幾つだよ」

「15じゃ」

それは見た目通りではあるのだが……どうにも老獪した様子を見せる少年に、カイルは警戒を隠し切れず……少年はそんなカイルから視線を外し、服の中に手を入れて紙束を取り出し投げる。

「ほれ」

「え? あ、これって……」

紙束の一枚目に描かれていたのは、イストファの似顔絵……のようなものだった。

何やら紙には精緻な模様が書き込まれているが……他の紙にはカイルの絵、ミリィの絵……そしてどうやら、アルスレイカーと思わしき絵もあった。

「私の絵はありませんね」

「そうだね」

「なんか凄く上手い絵ですよねえ……でも、この絵の周りの模様って何でしょう?」

「凄い精密だね……でもこの絵のイストファ君、なんかちょっとかわいい」

ケイまでもが混ざってワイワイと話しているが……フリートが発した言葉に、その場の空気が凍る。

「……薄暗き言葉、アサシン文字。つまりこいつは……アサシン向けの依頼書だな」

「お詳しいようですのう」

「武具屋の繋がりなめんなよ。その程度の情報は入ってくる」

「え、じゃあこれって……」

恐ろしいものを見る目で紙束を見るイストファに、少年は含み笑いを漏らす。

「1枚目。剣士イストファの殺害依頼。2枚目、魔法士カイルの殺害依頼。3枚目、呪法士ミリィの誘拐依頼。4枚目、魔剣アルスレイカーの奪取依頼。それぞれ報酬なども記載されておるのう」

「そ、それじゃまさか……」

「おっとお嬢さん。そのつもりなら、そんなものは見せんぞ?」

近くにあった武器を掴もうとしたケイを手で制し、少年は微笑む。

「……ま、そりゃそうだな。で? それなら何のつもりなんだ?」

「言ってみれば、それを狙って寄ってくる連中の中に『狙い』がいるかもしれんでのう」

「お前の仕事の都合ってわけか」

「然り。故に、それが寄ってくるまではこれらの依頼を誰かに達成されては困るというわけじゃ」

それは何とも迷惑な話だとカイルは思う。いくらステラという傘がなくなったといえど、あまりにも露骨すぎる。

表で動かなければいいというわけでもないと思うのだが……プライドを捨てたら立ち行かないのが権力持つ者の定めであるのかもしれなかった。

「ぶっちゃけて言う。俺もお前を完全には信用できねえ」

「じゃろうな」

「だが……そうだな。お前もマトモなアサシンだっていうなら『契約』くらいは出来るんだろうな?」

「おや」

カイルの言葉にイストファ達が疑問符を浮かべ、フリートがガタリと音を立てて立ち上がる。

「おい待て、まさか」

「お前を俺が雇う。正式な契約を経て、俺等の味方にする。二重契約はアサシン最大の禁忌。当然契約できるだろうな?」

「勿論。しかし、よいのかな? アサシンを『雇う』意味を知らないというわけでもないじゃろうに」

「ああ。その事実をもってして俺は権力闘争に参加するつもりだと見做されるだろう。だが、それでいい」

カイルは真っすぐな瞳で、少年を睨み返す。

「それで構わねえ。使えるものはなんだって使う。使わねえでする後悔より、何倍もマシだ」

「カイル……」

カイルを貴族だろう程度に思っていたフリートやケイは、それを黙って見守っていて。

少年は、そのカイルを見つめ返し……やがて、その前に膝をつく。

「お望みのままに」

「やめろ、そういうのは求めてねえ。仲間として振舞え」

「それが望みならば、了解じゃ」

立ち上がる少年に、カイルは小さく溜息をついて頭を掻く。

「あー、オッサン。そういうわけだ。募集はやめだな」

「おう……分かってるとは思うが」

「ああ、問題ねえ。アサシンがどういう連中かはよく知ってる」

「ならいいんだがな」

フリートの言葉を受けながら、カイルは少年に視線を向ける。

「で? お前、名前はなんていうんだ」

「そうじゃあ。クロード、と。そう呼んでくれれば問題はないのう」

「そうか。じゃあ行くぞクロード。おいイストファ、お前達もだぞ」

「え、行くって……何処へ?」

「トラップスミスギルドだよ。決まってんだろ?」