軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

どうして僕を?

イストファ達から説明を聞いたカイルは「あー……」と頷くと、納得したように頷き始める。

「考えてみりゃ、そういう募集手段があって当然だな」

「そうですね。急ぎではないが、納得できる仲間を見つけたい。そういうパーティには最適の手段だと思います」

そう頷きあうカイルとドーマに、イストファは少しそわっとした様子で視線を向ける。

「……知ってたら、2人ともやってた?」

「……」

「……」

言われて、カイルとドーマは顔を見合わせて。やがて楽しそうに笑い始める。

「ハハッ、それはねえな!」

「そうですよ。それに、私はどの道貴方と組んでいた気がしますよ?」

「そ、そっか」

「イストファ。ボクには聞かないんですか?」

「え、ごめん」

ちょっと寂しそうなミリィにイストファは思わず謝ってしまい……「それはさておきだ」とカイルが咳払いする。

「やる価値はあるな。あの武器屋のおっさん……」

「フリートさんだよ」

「そう、そのフリートのおっさんも顔が広そうだしな」

フリート武具店はイストファ達の贔屓と言っても良いくらいに世話になっている店ではあるが、その武具が品質も値段も良好なものであることは今さら疑いようもない。

ついでに言うとその頑固とも偏屈ともいえる人柄も有名であり……「知ってる人は知っている名店」といった感じの扱いだ。

最新や最高級、あるいは最高性能、最安といった感じではないが、信頼できる店なのだ。

そういう店の持っている人脈は、比較的信頼できるものである可能性が高い。

「とにかく、あのおっさん」

「フリートさんだってば」

「フリートのおっさんに一度話を投げたんだ。明日行ってみるのが無難だろうな」

「そうだね」

「なら、そろそろ食事にでも行きましょうか」

ドーマの提案に反対する者は居ない。

この屋敷には台所も存在してはいるが、今のところ使用してはいない。

まあ、それも当然ではある。この迷宮都市では冒険者狙いの食堂や露店の類が毎日しのぎを削っているのだ。素人料理よりもその方が美味いに決まっている。

「そうだな。さて、何にするかな」

「カイルは揚げ物でしょ?」

「そう言われると別のモノにしたくなるな」

「魚もいいんじゃないですか?」

「ボクは肉詰めが食べたいです」

ワイワイと話しながら家を出て歩き始めると……なんだかチラチラと視線を向けられているのを感じ始めていた。

それは露骨という程ではないが、イストファでなくとも気付く程度のものではあった。

「……見られてますね」

「うん、かなり。でもそんなに悪い視線じゃなさそうだよ」

イストファの言葉通り、向けられてくる視線は悪意というよりも興味というものが含まれた視線であるようにも感じられた。

「当然だろ」

「え? どうしてですか?」

「注目されてんだよ、俺等もな」

「でも、ボク達くらいの年齢の冒険者なんて、たくさん居ますよね?」

「ああ、居るな。『居るだけ』だがな」

カイルの言葉に全員が疑問符を浮かべるが、そんな仲間達にカイルは大きく溜息をつく。

「あのな、思い出してみろ。2階層、6階層。どれだけ足止めくらってた奴等がいる?」

「そういえばナタリアさんも僕達のこと、話題の新人パーティとかって……」

「言ってたな。つまりはそういうことだ。俺等は実力ある冒険者パーティとして見られてるんだよ」

優秀な冒険者とそのパーティは、ダンジョンから様々なものを持ち帰り迷宮都市の経済を回す存在に成り得る。

それは街の、ひいては国の発展に寄与する存在であり……もっと言えば好景気をもたらしてくれる存在なのだ。

それは迷宮都市の住人にとっては、非常にありがたい存在なのだ。

「ま、そんなパーティが全員『黒鉄級』だとは思わねえだろうがな」

黒鉄級は冒険者としてはそれなりに誇っていい等級ではあるが、上位というわけではない。

冒険者として尊敬されるのは、大体は銀級からだ。

勿論、それには依頼の類をかなりこなさなければならないのだが……。

「等級かあ……」

「依頼をこなさなければ上がりませんからね、等級は」

「ボク達もそろそろ受けたほうがいいんでしょうか」

「ま、それも考え始める頃合いではあるな」

言いながらイストファ達は良い香りを漂わせ始めている食堂に入る。

「いらっしゃーい! 4名様……って、あ! 『グラディオ』のイストファ君!?」

「え!? ぼ、僕ですか⁉」

「そうそう! さあさあ、ようこそ『碧空のツバメ亭』へ! サービスするよ!」

給仕の女性にぐいぐいと押されながら席に案内されたイストファ達だが、席に座ってからもイストファの戸惑いは強まるばかりだ。

「えっと……どうして僕を?」

「あはは! 将来有望とか優秀とか、そういう冒険者はね。商業ギルドで情報共有されるんだよね」

「あー……まあ、この街の経済がどうやって回ってるかを考えりゃ、当然だな」

「そういうこと! 優秀な冒険者には長く居ついてほしいからね! さ、何にする?」

カラカラと笑う給仕にカイルは納得した様子を見せるが、イストファとしてはまだ現実感のない感じだった。

将来有望とか、優秀とか。そういう評価はまだ、イストファにとっては何とも実感の湧かないものだったのだ。