軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

うーん、結構難しいかなあ

そうして辿り着いたイストファ達の家を見上げて……ケイはポカンと口を開けていた。

そのままイストファ達に連れられるようにして中に入り、ソファに座りお茶を出される段階に至ってようやく「ええっ!?」と声をあげる。

「ど、どうしたのイストファ君! ちょっと会わない間に何があったの!?」

「えーと、何がっていうか……市民になりました?」

「ええー!?」

それがどれほど凄い事かよく知っているケイは、先程よりも大きな声をあげて立ち上がり……顔を赤くするとコホンと咳ばらいをしながらソファに座り直す。

「えっと……それって詳しく聞いてもいい類の話?」

「んー……」

イストファが迷うように隣のドーマに視線を送ると、ドーマは「まあ、簡単に言いますと」と切り出す。

「私達は王都に行っていたのですが、そこでちょっとした問題を解決するにあたり迷宮伯とイストファにご縁ができまして。その絡みといったところです」

「迷宮伯様……うん、なんか私には想像できない大きな話ってのは分かったかな……」

ちょっとした問題なんかじゃないだろうと言いたげなケイだが、それ以上は突っ込まずに小さく溜息をつく。

「そっか……おめでとう、イストファ君」

「はい、ありがとうございます」

ケイとしても、イストファの事はずっと気にはしていたが……実際、何ができるものでもない。

イストファが落ちぶれ者寸前であった頃も、他の落ちぶれ者がどういう行動をとるか分かっていたから積極的に助ける事もできなかった。

そしてイストファが冒険者になってからもケイは鍛冶師の技能はともかく、ダンジョンを進むイストファの役に立てる技能は全く所持していない。故に、それに関しては祈るしかできないのだ。

そんなイストファが「市民」になったというのは、ケイにとっては嬉しい知らせだった。

「そういえば……ステラさんは?」

「……いません」

そう言った瞬間の、イストファのちょっと寂しそうな笑顔にケイは「……そっか」とだけ答えて。

「あ、それでえっと……トラップスミスの知り合いだっけ?」

「はい。もしかして……居るんですか⁉」

「お店に何人か来るけど……皆パーティ組んでるかな」

「ですよね……」

残念そうに言うイストファだったがケイは「あ、でもね!」と手を叩きながら言う。

「トラップスミスを募集すればいいんじゃないかな」

「募集、ですか?」

「うん。ちょっとお金はかかるけど、冒険者ギルドに募集広告を貼ってもらったり……あとは仲の良いお店に貼ってもらったりする方法もあるよ」

「募集広告……そんな方法が」

実際、イストファ達が気付いていなかっただけで「そういう広告」は結構あったりする。

募集だけでなく売り込みの広告もあったりするのだが……まあ、色んな手法があるということでもある。

「なら、早速募集広告をお願いしないとですね!」

言いながらミリィが立ち上がるが、ケイの「あ、待って」という言葉に制止されて座り直す。

「募集するにしても『どんな人が欲しいのか』がハッキリしてないと、来すぎたり敬遠されちゃったりするよ?」

「どんな人が欲しいのか……ですか」

「うん。私も力になれるかもだし、良かったら聞かせてよ」

そう言って笑うケイに、イストファ達は希望を伝えていく。

まずはトラップスミスであること。これは大前提。

凶悪な罠や巧妙な罠を解除、あるいは無効化できる腕があること。

戦闘能力があればなお望ましい。

それと、悪人ではないこと。性格が既存のメンバーとあわないと難しいかもしれない。

「……こんな感じでしょうか」

「うーん、結構難しいかなあ」

思わず頭を指でグリグリとしながら、ケイは唸ってしまう。

ひょっとしなくても、イストファ達の言う条件は「一流のトラップスミス」にしか当てはまらない。

トラップスミスはその性質上性格がどっかヒネている人物も多く、善か悪かでいえば悪寄りな人物も多い。

無論一線を越えないのは大前提だが……「善人の群れ」といった風のイストファのパーティに合うかどうかと聞かれれば、ケイとしては首を横に振りそうになってしまう。

「特に今のイストファ君の状況を思うと、利用しようとする人も出てくると思う。それこそ、ステラさんが睨みを効かせてくれてたら平気かもとは思うけど……」

「それは……出来ません」

「……」

考える。ケイは、必死で考える。

事実「いい人そうに振舞える」人間は幾らでもいる。

そういう奴を紹介したくはないし、イストファ達のパーティに紛れ込むのも嫌だ。

しかし、どうすれば良いのか?

「お父さんにも聞いてみるよ。イストファ君も、カイル君が回復したら相談してみて?」

「はい、勿論です」

「それで……明日お店に来てほしいな。なんらかの答えは用意できると思う」

それが今のケイに出せる最善の回答で。イストファは、それに感謝しながら頭を下げる。

「ありがとうございます、ケイさん」

「ううん、いいの。もっとズバッと答えを出せたらよかったんだけど」

「そんなことないです。とても助かります」

本気の口調で言うイストファに、ケイは微笑む。

「うん、それなら私も嬉しい」

しばらく談笑して、ケイが帰った後……カイルがようやく復活したのは、丁度その頃だった。