軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

うん、それがいいと思う

降りた先にあるのは、暗く淀んだ空の下にそそり立つ崖と……その崖につけられた、巨大な金属扉だった。

「え? これって……」

「まさか、いきなり出口ってわけではないですよね?」

「だとしたらビックリですけど」

イストファ達が扉を前に意見を言い合っているのを他所に、カイルは扉を見つめ……一筋の汗を流していた。

その扉に装飾のように記載された古代の文字が、カイルには読めたからだ。

だからこそ分かる「その事実」に、カイルは僅かな恐怖をおぼえる。

「……嘘だろ……」

「カイル?」

「何か分かったんですか?」

「ああ。良く聞けよ。俺の知識が正しけりゃ、此処はな……」

書かれている内容は、こうだ。

試練を望む者はこの扉を開けよ。

全てを賭す者はその先へ進め。

此処より先は2つに1つ。

栄光を得るか、屍を晒すかのみ。

エイムズ・ルフォンの名において、全ての理の破棄を許そう。

これが書かれていたのは、ただ1つ。

外の世界で発見されてより数千年。今なお挑戦者を飲み込み続ける、人の作りし迷宮。

「悪鬼の試練場……太古に存在したルフォン帝国において『悪鬼帝』なんて呼ばれた帝王エイムズの造った迷宮だ」

「迷宮って……ダンジョンとは違うんだよね?」

「全然違ぇ。だが言ってみればダンジョンが世界に現れるよりも前に人間が作った代物だ。そういう意味ではダンジョンの先輩ともいえるわけだが……」

それがダンジョンの階層として出現することで、どういう変化が出ているのかがカイルには分からない。

現実にあった場所の再現であろうと、そのままではない事は充分に分かっている。

そして「悪鬼の試練場」に関しては、情報など無いに等しい。

分かることは……ただ1つ。

「今の俺達じゃ無理だ」

「無理って……」

「絶対にトラップスミスが必要だ。数少ない情報の中で分かってる事は、悪鬼の試練場には無数の罠が仕掛けられてるってことと……未だに『現物』の踏破者がいねえってことだ」

それがどういうことか……イストファ達にだって想像できる。

モンスターの湧き出す不可思議な場所でもないのに踏破者がいない。

ならば、その難易度はどれほどのものか。

そして、そこにモンスターの加わる「この階層」がどれだけ極悪なものになっているのか。

「戻ろうぜ。俺はここまで来て罠で死ぬなんて御免だ」

「それは……そうだね」

「私も賛成です」

「ボクもです」

全員の同意にカイルは頷くと、帰還の宝珠を取り出す。

「よし、登録の宝珠に触れたら速攻で戻るぞ。罠の事なんざ分からねえ状況で、一秒だって此処には居たくねえ」

そうして4人は登録の宝珠に触れると、帰還の宝珠で地上へと戻り……酔って倒れているカイルを背負いながら、イストファ達は顔を見合わせる。

「でも、トラップスミスかあ……」

「以前お会いした……ナタリアさん、でしたっけ? あの人はどうでしょう」

「ボクもあの人なら信頼できると思いますけど……でも確か、他のパーティの人ですよね?」

もしナタリアを引き入れるというのであれば、文字通りに引き抜きになってしまう。

それは正直どうだろうかと……そんな空気が漂う。

トラップスミスギルドに行けば誰か良い人がいるのかもしれないが、イストファ達だけで入れてくれるとも思えない。

そしてそもそも、ナタリアの居る場所をイストファ達は知らないのだ。

「……カイルが回復したら、冒険者ギルドに行くっていうのはどうだろう?」

「それが無難そうですよね」

「ですね」

カイルを家で寝かせておいて3人で行ってもいいのだが、新しい仲間の事でカイルをのけ者にしてしまうのも気が引ける。

だからこそ、なのだが……ぐでっとしているカイルが「うう……」と呻きながら声をあげる。

「とりあえず、急ぎじゃねえんだ。しっかり、考え……ぐう」

「まあ、そうだよね」

確かに急ぎではない。

イストファ達は頷きあうと「家に戻ろう」と決める。

とりあえず、カイルを背負っているせいで注目が凄いのだ。

「条件については、しっかり詰めたほうがいいですね」

「でも、ボク達が誘っても良い人が来てくれるんですかね?」

「うーん……」

イストファが思い出すのは、ドーマに会う前……神官を探そうとしていた時の事だ。

あの時も散々断られてしまったが……また繰り返しになるのではないかとも思ってしまう。

「どうしたものかなあ……」

「あれ? イストファ君」

「へ?」

カイルを背負いながら悩むイストファにかけられた声に、思わずそんな声が出てしまったが……そこにいる人物を見てイストファは「あっ」と声をあげる。

「大丈夫? カイル君、具合悪そうだけど」

「転送酔いです。これから戻って寝かせようかと思ってるんです」

「うん、それがいいと思う。ごめんね、呼び止めちゃって」

そう、そこに居たのは武器屋のフリートの娘……ケイだった。

王都へ行っていたせいか、久々に会った気がするイストファだったが……ふと思いついたことがあった。

「そういえば、ケイさんって……トラップスミスの知り合いとかって居たりします?」

そんなイストファの問いに……ケイは「んー……」と言いながら困ったような笑みを浮かべる。

「とりあえず、カイル君を寝かせてあげない?」