軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アイツ等、どうやって

マトモに歩けるようになってみると、第8階層の特殊さがよく分かるようになってくる。

基本的には、乾いた大地の連続。しかしそれが土地が痩せているからというような理由でないことは、ところどころに生えている草や木が証明している。

ならば何故なのか。その理由は、すぐに知れた。

「ま、あんなのが動き回ってりゃこうもなるか」

ズシン、ズシンと我が物顔で歩き回る巨獣達。彼等が低い位置にある草など気にするはずもなく、メキメキと踏みつぶされる木々がそれを証明するかのように無惨な姿を晒していく。

「武器を持ったままだったら、僕達もああなってたよね……」

「防具もですね。私達の最低限の備えが仇になるとは……恐ろしい階層です」

「でも、それさえ気を付ければ比較的安全ですよね」

イストファ達の言葉に、カイルは一人考え込む。

確かにその通りだ。この第8階層には「武器防具のない状態でワーウルフと戦う可能性がある」という点さえ除けば、他の階層よりも安全であると言っていい。

しかし、本当にそれだけで済むのだろうか?

これまでこのダンジョンは、第1階層から致死性の罠が遠慮なく仕掛けられていた。

「これをしておけば安全」などという対策が、本当に存在するのだろうか?

「どうしたの、カイル?」

「いや……確証はねえが、まだ何かあるんじゃねえかって考えちまってな」

そう言えば、イストファはすぐにその表情を緊張感あるものに変える。

有り得ない、などというのは有り得ない。それを体感してきたのは誰でもない、イストファだ。

この階層に「武器が無ければ殺されかねない」ような何かが居たとしてもおかしくはない。

それを改めて思い出し、気を引き締めたのだ。

「そうだね、何があってもおかしくない」

「……そうですね。ですが、可能性くらいは模索できれば対策も出来るのですが」

「予想くらいは出来るがな。あまりそういうのをあてにしない方がいい」

そんなものに頼れば、自然とそこから外れた際に混乱して立て直せなくなる。

場当たり的なくらいで丁度いい。カイルはそう考えていた。

「そういえば、僕達が向かうのはこっちでいいのかな?」

ずっと奥へ、奥へと進んでいるイストファ達だが……今のカイルの話を聞いて少し不安になったのか、イストファはカイルへとそう問いかける。

「良いかどうかは分からねえ。情報がない以上、とにかく進むしかねえからな」

「でも、何か目標とかはあるんでしょ? たとえば……えーと、本にあった『船』とか」

やはりイストファもそれを考えていたか、とカイルは思う。

この階層のクリア条件を考えれば、そこに行きつくのは当然だ。誰が答えても同じ事を言うだろう。

しかし「だからこそ」と考えてしまうのだ。

「……俺もそこがゴールだと思う。だが考えてもみろ。俺達のスタートは何処かも分からない場所。そして船がゴールなら目的地は『大陸の海岸線』だ。まずは真っすぐ進んで端を目指さないといけない状況だ」

「そっか」

「確かに、そうですが……」

「そう考えると気の遠くなるような広さですね」

そう、この大陸が巨獣大陸ガルファングを再現しているというのなら……その広さは恐らく過去最大だ。闇雲に探索していては、数年がかりになってもおかしくはない。

そうなれば食料も果物ではなく保存食中心になるだろうし、凄まじい量の荷物の運搬も考えなくてはならない。

「そういう、ことか? 考えなしじゃ一生かけるような探索になる。それがこの階層の真の障害……か?」

とはいえ、とれる対策など多くはない。ドーマの魔法で身体強化しても、それが長時間持つわけでもない。むしろドーマを疲弊させるのは、この階層では問題しかない。

それを解決するには、移動手段をどうにかするしかない。しかしどうすればいいのか。

馬車でもあればいいのかもしれないが、そんな巨大なモノを転送で持ち込むのは不可能だ。

「何か移動手段があればな……」

「移動手段、ですか」

「テイマーを雇うとか仲間に入れるとかはどうです?」

「悪くはねえが……」

ミリィの提案をカイルは考えるが……やはり無理がある。

そもそも巨獣をテイム出来る程の実力のあるテイマーが都合よく見つかるとは思えない。

見つかったとして、そいつは本当に信用できるのかどうか。問題が山積みすぎる。

「……そういえばさ。此処はガルファングを再現してるんだよね?」

「何だ今更」

イストファの唐突な発言にカイルは疑問符を浮かべるが……続くイストファの言葉にハッとする。

「それなら、ワーウルフもそうだと思うんだけど。アイツ等、どうやってこの広い大陸を移動してるのかな?」

「……!」

そんな事はウルスの本にも書いていなかった。いや、そもそも「ダンジョンだから」と想像してすらいなかった。何があってもおかしくないからと思考放棄していたのだ。

しかし、「そうではない」としたら。この階層が本当にガルファングの再現そのものなのだとしたら、先程のワーウルフの存在が「ある事実」を示唆している。

「あるぞ、移動手段……! ワーウルフでも使えるようなやつが、どっかにあるんだ!」