軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お願いしたい事があるんですが

「ステラさん、ネズミって……」

「んー。誰だって人に危害を加えようとするネズミがウロウロしてたら、いい気はしないでしょ?」

「それは、まあ……」

「つまり、そういうことよ」

「えーっと……」

確かにそんなネズミが王都の中にいるのは、あまりよろしくないだろうということはイストファにも理解できる。

早めに駆除しなければ大騒動になるのは目に見えている。

事実、冒険者ギルドでもネズミ退治の依頼などというものがあったりする。

……まあ、受ける者はなかなか居なかったようだが……それはさておき。

「そんなにネズミが出るなんて、やっぱり王都はネズミの餌が多いんでしょうか」

「ええ、そうね。だから増えるし減らないのよね」

「大変なんですね……」

「ふふ、そうかもしれないわね」

言いながらステラはイストファの頭を撫で……「イストファ」と声をかける。

「傭兵王の物語は、知ってる?」

「えっと……本で読みました、けど」

「そうね。でも、それは真実ではないわ」

「……」

「エルフは、ヒューマンよりだいぶ長生きだから……人の世で忘れられた物語も、昨日の事のように語られ伝えられているわ。そしてその中には、傭兵王の物語も当然のようにある」

彼の物語は、シンプルに語ればこうだ。

父親も分からない子供として産み落とされた1人の少年ノーツ。

何も持たざるが故に全てを欲した彼は傭兵団に雑用として潜り込み、そうしてメキメキと頭角を現していく。

出会いと別れを繰り返し、やがて傭兵王として国を興すまでに至り。

しかし、その腕一本で成り上がったが故に当時のエリート……魔法士達に理不尽な恨みを買うことになる。

「えっと……それは、どうしてなんでしょう」

「自分より頭の悪い奴が自分より上にいる事が許せなかったのね。そしてかの時代は、そういう考え方が特に顕著だったのよ」

しかし、真正面からでは傭兵王には敵うはずもない。それを知っていた魔法士達が画策したのが……当時、王都の近くにあった火山の暴走。

かくしてそれは見事成功し、火の魔法力を暴走させた火山は噴火し傭兵王国を見事に歴史から消し去った。

「……ひどい」

「そうね。でもこれは、単純に昔話として片づけることもできないわ。今でも似たような事は多くあるもの。私が吹っ飛ばしたバカ王子とかね」

頭の良し悪しとかではなく血筋だとか家柄だとか……まあ、何にでも置き換えられる話だ。

そして、そうした連中は自分を超える事を悪だとすら思っている。

「そういう連中に潰されないようにしなさい。面倒だけど、誰かに関わりながら生きるというのは……そういうことよ」

「ステラさんは、どうしてきたんですか?」

イストファのそんな疑問に、ステラはクスリと笑う。

「今と変わらないわ。真正面から叩き潰してきたもの……まあ、あまりお勧めはしない方法よ?」

ステラは身を翻し、扉に手をかける。

「私が王都なんて場所にくる話を受けたのは、貴方にある程度安全に『そういう世界』を見せたかったから……っていうのもあるわ」

「そういう世界……」

「王都は悪意の博覧会よ、イストファ。貴方をあの日襲ったような奴が善人に見えるような場所が此処なんだから」

イストファは、王の言葉を思い出す。そう、彼も似たようなことを言っていた。

「怖い……場所なんですね」

「ええ、怖いわよ。だからこそ、此処にいる間にある程度目を養いなさい」

「はい、分かりました」

「まずは、そうね……」

イストファだけに聞こえるように呟いたステラの言葉にイストファは「えっ」と声をあげ、その反応にステラは満足そうに部屋を出ていく。

そして……残されたイストファは、部屋の隅に控えているメイドに視線を向ける。

その視線に気付き微笑むメイドだが……彼女が本当に善人なのか悪人なのかなんて、イストファには分からない。

だから、その能力についてはどう鍛えればいいのかもさっぱり分からないが……ステラから出された課題をこなすべく、イストファはメイドに声をかける。

「あの、すみません。お願いしたい事があるんですが」

「はい、なんでございましょうか?」

「王女様にお会いしたいんです」

そう言われたメイドは目を瞬かせ……やがて、イストファに微笑み返す。

「どの王女様でございましょうか?」

「ど、どのって……え、王女様も何人もいるんですか?」

「はい。第6王女までいらっしゃいます」

「え、ええ……?」

大家族だあ……とイストファは小さく呟き、メイドが軽く咳ばらいをしたのを聞き「すみません」と素直に謝罪する。

「ブリギッテ王女に、お会いしたいんです」

第4王女ブリギッテ。カイルの母親違いの妹であり、王立図書館で会った王女の名前をイストファはメイドに告げる。

「は、はい。謁見申請は致しますが……どのようなご用件でしょうか?」

ステラに言われた事を思い出しながら、イストファはメイドにどう伝えればいいかを吟味する。

目の前のメイドが善人か悪人かは、イストファには分からない。

だから、そのまま伝えるわけにもいかない。ならばどうすればいいか。

ただ「会いたい」だけで会ってくれるはずもないだろう。ならば……。

「傭兵王の件でお話ししたい事があると。そうお伝えください」