軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

親父も何考えてやがるんだ

騎士団の守護する王家の馬車を襲う者など居るはずもない。

もし居るとすればそういった事情を考慮しないモンスターか、余程の愚か者だけだが……たまに出るモンスターも騎士団によって迅速に排除され、イストファ達の出番も無いままに馬車は王都へ到着した。

そしてもちろんの事、王家の馬車が王都の審査などで時間をかけるはずもない。

全ての衛兵や審査待ちの者達が頭を下げる中、馬車は門を抜け王城へと向かっていく。

ちなみに、窓は閉められているのでイストファ達がその光景を知ることはない。

「ねえ、カイル」

「あ?」

「なんで窓閉めたの?」

「そういうもんだからだ」

この前の件もあるし、アサシンが群集の中に紛れ込んでいないとも限らない。

万が一を防ぐ為の処置だったとは、別にイストファが知らなくてもいいことだとカイルは思っているし……ステラも何も言いはしない。カイルにとって甚だ不本意ではあるが、同じ考え……ということだ。

「ふーん」

それに対してイストファは疑う様子もなく頷き、そうしている間にも馬車は王城の門を潜り停止する。

「お、着いたか」

「はい、そのようですが……少々お待ちください」

この数日を一緒に過ごした執事……アイゼンというらしい彼が、馬車の扉を開けて降りていく。

そうすると、すぐにアイゼンの驚いたような声が聞こえてくる。

「こ、これはどういうおつもりですか!?」

「なんだあ……?」

「カイラス! 出てこい、乗ってるんだろう!」

「この声は……あー……まだ自由に動けたのか、アイツ」

「え? ど、どういうこと?」

「んー……ま、すぐに分かる。あ、言っとくけど出てくるなよ」

溜息をつきながらカイルが馬車から出れば、そこには豪奢な服を纏った男が1人と……その背後には、赤色の鎧を纏った騎士が数人いるのが分かる。

「ヘンドリクソンと紅槍騎士団の連中か……つーかお前、軟禁されてると思ったがな」

「ハッ、そんなものをされる理由などない!」

「後ろに居るのは誰だ? ベラーザ公爵か? 国家騒乱罪を握り潰して迷宮伯を敵に回そうってんだ。それなりのアホだろ?」

「貴様……役立たずの分際で叔父上を馬鹿にするか!」

「あー、こりゃ馬鹿だ。公爵も苦労……してねーか。馬鹿の方がいいだろうしな」

「この……っ! おい貴様等! こいつを投獄しろ!」

言われて、赤い鎧の騎士達は初めて慌てたような表情を見せる。

何故なら、馬車を此処まで護衛してきた緑の鎧の騎士達が一斉に剣を抜く構えを見せたからだ。

「し、しかしヘンドリクソン王子……緑鎧騎士と揉めるのは……」

「そうです。連中は我々とは指揮系統が違います。しかもあの馬車を使っているということは」

「だから気に入らんのだろうが! おい貴様等! そこをどけ!」

叫ぶヘンドリクソンの声に、緑の鎧の騎士の隊長らしき騎士が平坦な口調で「出来ません」と言い放つ。

「き、貴様! 王族の命令に逆らう気か!」

「たとえ第三王子ヘンドリクソン様の命令であろうと国王様の勅命を覆す事、まかりなりません」

「ぐっ……!」

「我等が王より受けた命は『全ての障害を砕き、我が前に連れてまいれ』でございます。我等緑鎧騎士、王命とあらばヘンドリクソン様であろうと紅槍騎士であろうと砕き通りましょうぞ」

「う……うう……!」

「これ以上は不味いです! どうか……!」

「お、覚えていろカイラス!」

赤い鎧の騎士達に連れられ逃げていくヘンドリクソンを見送ると、緑の鎧の騎士達は剣から手を離し……カイルが大きく溜息をつく。

「しばらく会わない間に馬鹿が進んだんじゃねえか、あいつ?」

「お答えできかねますが、紅槍騎士の一部があのようにチンピラもどきとなっている事は同じ騎士として恥ずかしく思います」

「あー、それか……」

フィラード王国の擁する騎士団は大きく分けて4つ。

王国内の特に凶悪な不穏分子の討滅を担当する蒼盾騎士団。

王国内の治安維持、衛兵団の統率を担当する紅槍騎士団。

国境や重要拠点の守護、あるいはいざという時の先陣を担当する緑鎧騎士団。

そして、王直属の親衛騎士団でもある白剣騎士団。

つまるところ、先程の赤い鎧の騎士達は紅槍騎士団員のはずなのだが……それがどうしてヘンドリクソンの取り巻きをやって王宮内を闊歩しているのか。

「親父はアレ理解してるんだろ? なんで放置してる」

「私如きが王の深遠なる智謀を見通す事など出来ませぬ」

「ああ、そうかい」

言い回しがうぜえ、とカイルが呟いた辺りで、カイルはずっとオロオロしていたアイゼンに視線を向ける。

「おい、これで解決したぞ。つーかお前も案内役仰せつかったんならコイツ等に協力要請すりゃいいだろうに」

「も、申し訳ございませんカイル様……」

「ったく……親父も何考えてやがるんだ」

言いながら、カイルは王の謁見の間がある方向へと視線を向ける。

恐らくこれから謁見が始まるのだろうが……この状況では、そこでも何が起こるか。

「まさかステラを敵に回すような事はしねえだろうが……」

アースドラゴンを斬り飛ばすような文字通りの人外級の実力者に何かすれば、下手をすれば王都が軽く消し飛ぶ。

それを王が理解していないはずも無いが……カイルはこれから何が起こるのか考えると、僅かに胃が痛むような気がしていた。