軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

慎重に扱うべきだろうな

「これ、は……」

手の中にある大剣を、イストファは見つめる。

輝ける刀身にも、その装飾にも全く覚えはない。

しかし、ローゼの声は聞こえていた。

傭兵王の魔剣、ルーンレイカー。傭兵王……ノーツの事を、思い出す。

これは、彼が自分にくれたのだろうか、と。イストファはそんな事を思いながら、剣を見つめて。

しかし、ルーンレイカーの輝きは急速に弱くなっていき、やがて光が弾けたように消えた後には、イストファの手の中に元の短剣が残っていた。

「……これって……もしかして、この短剣の能力は……」

マジックイーター。それがこの短剣の能力だと、ずっと思っていた。

けれど、そうではなかったとしたら。

「ノーツ……ありがとう」

短剣を握るイストファを、ローゼが不思議そうな表情で見て。

「ねえ、その短剣……」

「おいイストファ!」

息を切らせて走ってきたカイル達を見て、イストファも「カイル! 皆!」と声をあげる。

「急にモンスターたちの統率が乱れて……何があったんですか!?」

「えーと……なんて説明すればいいのか分からないんだけど……」

「ていうかその怪我! 今すぐヒールを!」

ドーマに傷を癒されながら考えた後、イストファは一番端的で事実を説明しているであろう言葉を選び出す。

「テイムされそうになったから自分を刺したら、短剣が変身した」

「ちょっと、もう少し良い説明あったでしょ。見てた私ですら意味分かんないわよ!?」

「そんな事言われても……」

ローゼに言われたイストファが困ったような表情になる前でドーマ達が疑問符を浮かべながらも何とか理解しようとするような顔をして……こめかみを指で軽く叩いたカイルが「あー……」と呟く。

「なんとなくは理解した」

「え!?」

「本当ですかカイル!」

「ちょっと見得張ってません!?」

「おいコラ!」

真っ先に声をあげたドーマとミリィにカイルが振り向くと、2人はサッと違う方向を向く。

「にゃはは、仲いいねえ」

「そうですね……」

ナタリアとエリスは一歩引いた感じではあるが、この辺りは仲間……というよりは友人としての距離の差だろう。

「だがまあ、気になる事がありすぎる。時間かかっていいから、一から説明しろ」

「うん、でも……」

チラリとオーク達の死骸を振り返るイストファの肩を、カイルがポンと叩く。

「心配すんな。此処はダンジョンじゃないから死骸は消えねえよ」

「あ、そっか」

「ダンジョン病ってやつだな。よくあるらしいぜ」

「へえー」

談笑するイストファとカイルをじっと見ていたドーマとミリィは、ひっそりと囁き合う。

「……結局どう分かってるか説明しませんね」

「やっぱり見得張って……」

「うーるせえな、もう! 要はオークがテイム能力会得してやがったんだろうよ! 剣が変身したってのはたぶん、イストファの短剣の能力だよ!」

「おおー」

パチパチと手を叩くドーマとミリィにカイルは「こんにゃろう……」と悪態をつき、やがてちょっと遅れて到着したグラートが「おいおい」と不満そうな声をあげる。

「俺を抜きで盛り上がるなよ。寂しいだろ」

「ツッコミきれねえんだよ……!」

「まあまあ、カイル……」

カイルを宥めたイストファは、オークとの戦いの事を説明していく。

オークテイマーのこと、そして……ルーンレイカーのこと。

「……オークテイマーか。随分とんでもねえ隠し玉がありやがったな」

「確かに、周囲のモンスターをテイムできるのなら……他のオークのほとんどを囮にしたところで、痛くも痒くもありませんね」

「そうだねえ。テイムで攻め込まれない戦力を整えさえすれば、エンパイアの復活……いや、それ以上だってあり得る。こりゃあ、とんでもないネタが転がってたものね」

カイルとドーマに続き、ナタリアも緊張した様子で声をあげ……エリスが、少しオドオドしながらも手を上げる。

「あの、でも……オークテイマーなんて……いえ、モンスターに『テイマー』なんてものが生まれるなんて、聞いたこともないです」

「そうね。私もそんな事習った事無いわ」

「そうだよな。ダンジョンにはそういう『有り得ない』モンスターも出るけどよ」

ローゼが同意し、グラートがゴブリンヒーローの事を思い出しながら頷く。

アレも外の世界には存在しないと言われる特殊モンスターだ。

「それに、問題はそれだけじゃないわ。人間をテイム出来るモンスターがいるなんて……世界を揺るがしかねない話よ。信じてもらえるとは思えないわよ」

「……ま、そうだな。そこは俺も同意する」

「カイル!?」

意外にもローゼに同意したカイルにドーマが声をあげるが、カイルは「落ち着け」と言い放つ。

「俺だってイストファが嘘ついてるなんて思ってねえ。だが、これはそれだけデカい話なんだ」

人間をテイムできるテイマーのモンスター。

そんなものが存在するというだけで脅える人間は出るだろうし、真っ向から否定する人間だって出るだろう。

テイム能力なんてものを検証するわけにもいかない。

今まで仲間だった人間がモンスターにテイムされて敵になる。そんなリスクを侵したい者がいるはずもない。

「……幸いにも、逃げたオークの中の首領格は倒したんだ。オークテイマーの話は、慎重に扱うべきだろうな」

とはいえ、とカイルは思う。

オークの中にテイマーなんてものが現れた理由は……恐らくは、人間のテイマーがオークをテイムしエンパイアを短期間で作り上げたせいだろうとは思う。

それを証明することなど出来ないし、こんな人間社会を破滅させる材料となりかねない恐ろしい事は口にするつもりもないのだが。