軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ロクな人間じゃなかったって話だがな

そしてイストファ達が降り立ったのは3階層……ではなく4階層だった。

4階層の階段を昇り、3階層へ……「海賊王の墓」のあるその場所に、イストファ達は辿り着く。

ただ静かで海風に船が揺れる音が響くだけのその場所には、キャプテンスケルトンも……他のスケルトンやゴースト達の姿もない。

「……何も居ないね」

「おう」

「知ってたんですか?」

注意深く辺りを見回すイストファとは違い気楽な様子を見せるカイルに、ミリィはそう問いかける。

腕など組んでみせているカイルの様子は、キャプテンスケルトンとの戦闘がないと知っているかのようだったからだ。

「知ってたっつーか……そういう情報は仕入れてたからな」

「どういうこと?」

「ん、つまりな……守護者ってのは、挑戦者に対する妨害者だってこった」

カイルのそんな説明に、イストファとミリィは首を傾げてしまう。

あるいはこの場にドーマがいれば理解できたのかもしれないが、残念ながら今は不在だ。

「えーと……うん?」

「分かってねえのに頷くんじゃねえ。あー、あれだ。逆走する時には出てこないんだよ」

「そうなの?」

「ああ。っていっても、単純な話じゃねえんだが……」

そう、これはあくまで判明した事実でしかない。

1つ目。ダンジョンを逆走……つまり下の階層から上の階層に登った時、そこに守護者は居ない。

2つ目。守護者は倒した日から数日、あるいは数か月で復活する。

3つ目。1つ目に反しない時で守護者を倒していないものが守護領域にいる場合、2つ目の条件を無視し、必ず守護者は現れる。

4つ目。順走する者と逆走する者が守護領域に同時に到達、あるいは順走する者が守護者と戦闘中に逆走する者が守護領域に到達した時、両者は出会う事はない。

5つ目。逆走する者が4つ目の条件を満たさない場合、かつ3つ目の条件を満たす順走者と合流し再度守護領域に到達した場合は3つ目の条件が適用される。

「……ってことらしい」

「……ミリィ。分かった?」

「えーと……階段昇ってすぐ守護者に襲われる事がないってのは分かりました」

「ま、そういうことだな。ついでに言うと、今誰かがキャプテンスケルトン共と此処で戦ってたとして、今の俺等には干渉できないってことだな」

言われてイストファ達はようやく納得したように頷くが、カイルは説明しながらも思考を巡らせる。

一見、上手く出来た仕組みに思える。しかし逆にいえば、上手く出来過ぎている。

自然にこんなシステムが組み上がることは、絶対にありえない。それは断言できる。

つまり、このダンジョンには何らかの……何者かの意志が確実に介在している。

それが神々のものか、あるいはモンスターの王と呼ばれているものの仕業かは分からないが……。

「どうしたの、カイル?」

「いや、別に。楽でいいなと思っただけだ」

いいから行こうぜ、と促すカイルだったが……ふと、イストファの視線に気付きその先に目を向ける。

そこにあったのは、この場所においてはただの置物でしかない「海賊王の墓」だ。

「アレがどうかしたか?」

「ん、うん……海賊王って、どんな人だったのかなって」

「海賊王ザバーグか。ロクな人間じゃなかったって話だがな」

遥か過去の人物故に、それを語るのは本程度しかない。

海上の砦とも呼ばれた大型船を駆り、海で暴れまわった男。

確かな信念を持ち部下に慕われたとも言われているが、結局のところ「賊」だ。

治安の敵であり続け、その死後まで混乱をもたらし続けた。

「……ま、アイツ程良い奴じゃないさ」

「そう、だね」

ノーツの事を引きずっているのだろうと気付いたカイルに言われ、イストファはようやく墓から視線を外す。

「そういえばカイル。どうしてこの階層に? 確か此処って、スケルトンとゴーストの巣窟では?」

「ああ、そうか。そういやお前と会ったのはこの先の階層だったな」

ミリィに言われたカイルは頷き、イストファに視線を向ける。

「つまりな、俺とイストファの連携訓練だ」

「はあ」

「ゴーストは物理攻撃が通用しねえ、スケルトンは物理攻撃が有効。つまりこれは、7階層と似てると言えるわけだ」

厳密には色々と違うが、連携の訓練にはピッタリではある。

「俺とイストファの連携を強化して、もっと効率的に動けるようにする。というか、まあ……俺がもっと動けるようにする為の訓練だな。あと単純に、此処は魔石のドロップ率が良い」

具体的にはゴーストだ。元々魔力の塊であるゴーストは、魔力の物質化した物体である魔石以外にドロップするものが存在しない。

つまり、倒して回るだけで魔石が集まっていくということだ。

「それは分かりましたけど……そうするとボクは何をすれば?」

「魔石拾いに決まってんだろ」

「……なるほど」

「言っとくと、これも動けるようにする為の訓練だからな? 俺等は基本イストファに頼り過ぎだ」

「確かに……頑張らないとですね」

7階層ではイストファの身体能力に頼るだけでは進めない。

これはカイルとミリィの動きの最適化訓練も兼ねている。

それを理解したミリィは、気を引き締めるべく杖を握り直した。