軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そういえば

そして、日も沈み始めた頃。宿のカイルの部屋で反省会が開かれていた。

「……マジで困ったぜコレは……」

そんなカイルの言葉に、誰も答えない。誰もが同じ心境だったからだ。

いや……唯一イストファが同意の言葉を発する。

「そうだね。アメイヴァが、あんなに厄介だなんて……」

「カイル頼りになってしまうのが問題ですね」

「ボクの呪いも、あんな生き物相手にどう発動していいのか……」

そしてイストファに触発されるようにドーマとミリィも続ける。

そう、神官戦士となったドーマではあるが、攻撃魔法の類は授かっていない。

攻撃手段はイストファ同様に物理攻撃であり、たとえヘビーウェポンやライトウェポンで魔力を、纏わせたところで、ゴースト退治のようにはいかない。

ミリィはもっと深刻だ。

元々攻撃手段に欠けるミリィではあるが、その真価を発揮するのは行動阻害の各種呪法だ。

だが、元々ミリィの呪いは対象が狭い範囲であればあるほど効果を強くする。

単体相手でも腕や翼といった部位に絞る事で強力にあるが……不定形のアメイヴァに部位などという概念があるかどうかも分からない。

それ故に全体にかけねばならないが、伸びる、広がる、隠れると多彩に体を変化させる上に数が多いとなると視界に収めるだけでも難しくなってくる。

言ってみれば、呪法士と相性が限りなく悪い相手なのだ。

そしてイストファだ。マジックイーターがあると言えど、それで全てが解決するというわけではない。むしろそこから先が本番であり、魔法の使えないイストファにはアメイヴァをどうにもできない。

「俺がどうにかしなきゃいけねえんだが、なあ……」

しかし、カイルの問題は深刻だ。カイルのダンジョンでの成長は魔力に偏っている。

そのせいか、今のカイルの魔力は並の魔法士よりも多少上のレベルにまで成長している。

その分、体力や身体能力は並の魔法士より遥か下なのだが……それは今更なのでさておき。

それでも、カイル1人に比重が偏っている分、極度の集中でただでさえ少ない体力も削られていくし……魔力の消費も激しい。

「安全な場所が分からないのも問題だよね」

「ああ。なんだかんだで6階層は休憩できたしな……今度の階層は地中から出てくる分、全く気が抜けねえ」

「僕が魔法使えればいいんだけど……」

「空飛びたいって方がまだ現実味があるな」

「え、そこまで?」

ちょっと落ち込んだイストファをそのままに、カイルは悩むような様子を見せる。

事実、攻撃魔法を使えるのがカイルだけというのが今の問題だ。

カイルの魔力が尽きた時点でアメイヴァへの対抗手段がゼロになる。

これが問題なのであって、もっと言えばこの点さえ解決できればどうにかなるとも言える。

しかし、どうするか。そう簡単に解決策が浮かべば苦労しないのだが……カイルは、イストファがじっとドーマを見ている事に気付いた。

「なんだ、どうしたイストファ」

「んー……そういえばドーマって、攻撃魔法は使えるようになったりしないのかなって」

「むっ」

「今のところ授かってはいませんが……そういえば、確かに神官の魔法にも攻撃魔法はありますね」

「それなら!」

今にも立ち上がろうとするイストファを、ドーマが「まあ、落ち着いてください」と抑える。

「確かに神官にも攻撃魔法はあります。ただ、ニールシャンテ様のこれまでの傾向からいって……授かる可能性が高いとは言えませんね」

「確かにな。どう考えても迷宮武具の神は神官戦士向けの神だろ」

「せめて解毒や麻痺治しの魔法くらいは授かりたいのですが……」

「麻痺治しは一般化されてなかったよな。となると神殿で習う事もできねえし……」

そこで、イストファはそういえばと首を傾げる。

「……なんで通じるんだろ」

「ん?」

「麻痺みたいな毒が通じるのって、初心者までって話だったと思うんだけど」

「あー……そうか、そこからか」

カイルは何か納得した風な表情になると、自分の胸元を指す。

「確かに、麻痺毒の類はダンジョンに潜ってると効かないようになってくる。俺にだって、外で出回ってる毒の類は効かないだろうな」

「だよね?」

「だがな、毒には2種類ある」

「2種類?」

「おう、物理毒と魔法毒。前者は粉や液みたいな形で誰でも運用できるものだ」

たとえば、裏で出回っているような「毒薬」の類は物理毒になる。

魔力を含むわけでもない、ただ身体に毒というだけのもの。

これはダンジョンで鍛えていると、自然と通用しないようになっていく。

そして、魔法毒。これは物理毒のように出回ったりはしない。

「言ってみれば、これは魔法効果としての毒だ。身体の強さだとかそういうのと関係なく、魔法抵抗の問題だ」

魔法毒はあくまで魔法による結果であり、厳密にいうと「毒」とは言い難い。

そういう魔法効果なのだ。

「だがまあ、物理毒でも魔法毒でも解毒や麻痺治しの魔法で解除できるけどな」

「なんで?」

「知らん。俺も訳分かんねえとは思うが、そういうもんなんだ」

カイルの説明に、イストファはふとステラの話を思い出す。

あの時ステラは「リトルファイア」の魔法を見せながら、こう教えてくれた。

全ての理屈を無視して、この火はそれでも此処にある。魔法ってのは、つまり『そういうもの』なの。

なるほど、魔法とは不思議な物なのだろう。それを改めて理解して……。

「あっ」

そして、唐突に思い出す。

「そういえばステラさん……僕の麻痺を魔法で治してたよ?」

全員の驚愕の声が響いたのは、その瞬間だった。