軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

これで万事オーケーだな

「さて、と」

一通り騒いだ後、ノーツは幾分かスッキリした顔で立ち上がる。

晴れ晴れとして見えるその顔は、ノーツにとてもよく似合った笑顔で。

彼の中にあった憂いが晴れたのだとよく分かる、そんな顔だった。

「お前等、この階層抜けたいんだったよな?」

「う、うん」

「手伝ってやるぜ。お前等をしっかり、この階層の出口まで連れてってやる」

「あ、うん。ありがとう。凄く助かるよ」

「だろぉ?」

ニヒッと音が出そうな笑いを浮かべるノーツにイストファもつられて笑うが、カイルは渋い顔だ。

「……お前が自分の目的の為に俺等を利用してたのは充分に分かったけどよ」

「え、目的?」

「おう。この野郎は自分の必殺剣とやらをお前に伝える為『だけ』に同行してたんだよ。たぶんさっき会得できてなかったらこいつ、そのまま何処か行ってたぞ。断言できる」

「え?」

「まあな。見込みのない奴にいつまでも割いてる時間はねえし」

「え? え?」

イストファは思わずカイルとノーツを交互に見るが、ノーツはポンとイストファの肩に手を置く。

「ま、あんまり気にすんなよ。どうせ4人で此処通過するつもりだったんだろ? 俺が居るか居ないかなんざ、些細な差だよ。それに、お前は会得したんだしな」

「えっと……それは、そうかもだけど」

「けど?」

「折角会えたのに、寂しいよ」

イストファがそう言うと、ノーツは呆気にとられたような顔になって……やがて、困ったような笑顔に変わる。

「……本気で言ってるって分かるからタチ悪ぃな。俺も随分人たらしとは言われたもんだったが……なるほど、皆こういう気分だったのかもな」

「皆って……ノーツの仲間?」

イストファの質問に、ノーツは少し答えに迷うような様子を見せ「ああ。大事な仲間だったよ」と答える。

だった。過去形で答えるノーツにイストファは「今は居ないのだ」と察し、思わず「ごめん」と謝ってしまうが、ノーツはそれに気にするなと手を振ってみせる。

「別に構いやしねえよ。過去の話は何したって過去でしかねえ。変わるものなんか、何一つとしてありゃしねえんだからな」

「そんな事は無い……と思うけど」

「ん?」

「確かに過去は変わらないけど。過去が、未来を変えることはあると思う」

イストファが思うのは、あの始まりの金貨。

もしイストファが、路地裏の落ちぶれ者達のように堕ちていたら。

例え金貨1枚を手に入れたとして、今に繋がっていただろうか?

今のイストファは、無数の善意に後押しされて出来ている。

それが例えば、誰もが言うようにイストファの過去の真面目な行いによって生まれたものであるのなら……それは、過去が未来を変えた実例だ。

「今も過去になって、いつかの未来に繋がる。だから、僕は未来の自分が恥ずかしくない僕でありたいと思うよ」

「……それで?」

「だから、僕の言葉が迂闊で、それでノーツが少しでも傷ついた可能性があるなら。僕はそんな自分を今許すべきじゃないと思ってる」

「未来の自分に恥ずかしいから、か?」

「それと、未来のノーツの傷になるから。それは、良くない事だと思うんだ」

イストファの言葉に考えるように目を瞑ったノーツは、今日一番の溜息をつくとイストファの頭をワシャワシャと撫で始める。

「わ、な、何!?」

「めんどくせえなあ、お前。最高にめんどくせえよ。あと、ちょっとウゼえ」

「ええ!?」

「だがまあ、嫌いじゃねえウザさだ」

「ええー……」

なんとも微妙な表情のイストファだが、ノーツはハハッと笑いイストファの頭から手を離す。

「だがまあ、言いたい事は分かった。その上で言うと、全く気にしてねえ。言う必要もねえから言ってなかったってだけの話だしな」

「そ、そうなんだ」

「おう。それより、そろそろ行けそうか?」

イストファは言われて、立ち上がり腕をブンブン回してみせる。

「勿論。随分と調子が良い気すらするんだ」

「さっきの戦いで比喩じゃなく成長してるだろうしな。そうもなるだろうぜ」

言いながら、ノーツはカイル達へ振り向く。

「お前等も悪かったな」

「あ?」

「え?」

「えっと?」

疑問符を浮かべるカイル達に、ノーツは「さっきの事だよ」と答える。

「特に悪いとは思ってねえんだが、イストファに倣っておこうと思ってな。さっき、つい殺気ぶつけちまったからな。傷ついたろ?」

「う、うるせえ! そんなヤワなハートしてるわけねえだろが!」

「えっと……」

「あはは……」

「ノーツ、そんな事してたの……?」

どうして、と言いたげなイストファからノーツは「うっかりな」と言いながら軽く視線を逸らし、カイルは今にも掴みかかりそうな……ドーマとミリィに抑え込まれてはいるが、そんな表情だ。

そして肝心のノーツは本人の宣言通り、悪びれた様子は一切ない。

「よし、これで万事オーケーだな!」

「何処がだこの野郎!」

「おいイストファ、変だぞ。ちゃんとケアしたのに余計傷ついたっぽいぞ」

「えーと……ノーツが悪いと思う」

「マジか。確かに『喋ると悪化するから黙ってろ』って言われた事はあるけどよ」

新鮮な発見だな、と言うノーツにイストファは困ったような表情になるが、それはともかく。

やる気を出したノーツを含む5人の探索は、まさに破竹といった勢いで進んでいく。