軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お断りです

強い、そして速い。ファイターズクレストによる補助を得てなお、それを上回りかねない速度の攻撃をジュデルカは繰り出してくる。

そしてそれは、当然でもあった。

傭兵王国サラディア。腕1つで成り上がった者達の国の頂点の1人が、弱いはずがない。

たとえ、その装備が多少「階層にあった強さ」とやらに合わせて劣化していたとしても……だ。

「くっ……!」

響くのは剣戟音と打撃音。

ドーマも対人戦を前提とした護身術を会得してはいるが、ジュデルカが繰り出すのは暗殺術だ。

護る技と殺す技。真っ向から対立する理念を持つ2つの技がぶつかり合い、そうなった時に護身術は攻撃力という点で一歩劣る。

だが、守備力という点で言えば護身術の方が一歩勝る。故に、互角……いや、それでもドーマの方が僅かに押されつつある。

増えている傷は、その何よりの証拠だ。

「……負けませんよ。此処で負けるようなら、私が居る意味がなくなる……!」

思えばミノタウロス戦では、ドーマはほとんど役に立てなかった。

守る為の盾ごと腕の骨を砕かれ、あっという間に戦闘不能に陥った。

イストファ程身体能力は高くなく、カイルほどの魔力はない。

回復魔法だって、カイルであれば「ヒール」くらいなら覚える事も可能だろう。

パーティの中においてドーマの役割はそこではなく、「回復も出来る前衛」なのだ。

イストファと、カイルと、ミリィと……仲間達と並んで立つために、そのポジションを投げ出すわけにはいかない。

たとえ過去の剣豪が相手と言えど、負けてる暇はないのだ。

「死ネ……!」

「お断りです! ライトウェポン!」

ドーマの振るうメイスが軽くなった事で急加速し、ジュデルカを打ち据える。

「グッ……!?」

だが、軽いメイスなどという代物の打撃力は然程ではない。

ないが……今までとは全く違う速度で振り回されるメイスはジュデルカを僅かに幻惑する。

たとえ偽りのものであろうと、意志があり技術があるが故のフェイント。

その狙いが見事にハマったことを確信し、ドーマはライトウェポンを突然解除する。

それだけでメイスは重くなり、振り下ろす速度が自重により増加する。

ミシリと響いた音はジュデルカの肩を強く打ち据え、ジュデルカは苦痛の声をあげながら後退する。

「キサマ……!」

「……どうやら、この手は有効みたいですね。なら、戦い様は幾らでもあります……!」

メイスと丸盾を構え直し、ドーマはジュデルカを見据える。

互いに距離を測り……弾かれたように2人は地を蹴る。

ぶつかるメイスとシミター。時折混ざるライトウェポンが足りない速度を補完し、動きにトリッキーさをも加えていく。

響く武器のぶつかり合う音は戦いの激しさを示し……その均衡は、突如閃いた銀光によって崩される。

「う、あっ……!」

目にも止まらぬ一瞬で投げられたナイフがミリィの肩を貫き、その手から杖が落ちる音が響く。

「ミリィ! この……!」

思わずドーマが振り返る、その刹那にも近い瞬間……防御への意識が崩れる。

それはジュデルカには充分すぎて、ドーマが防御するには遅すぎた。

繰り出された一閃がドーマを斬り裂き、確実にトドメを刺すべくジュデルカは一気に距離を詰める。

別に斬る必要はない。首の骨が折れるだけで人は死ぬのだから。

暗殺者として至極当然の、その流れ。だが……その流れは、突然の痛みに断ち切られる。

ジュデルカの肩を貫くような、腕の動きをも阻害する強烈な痛み。

あるいは、ジュデルカがドーマ1人に全意識を割いていなければ……もしくは、ジュデルカが「本物のジュデルカ」であれば、気付いただろう。

自分に入り込む、紫色の光に。ミリィの放った……共有の呪いに。

そしてそれが、その刹那と呼ぶには多少長すぎる隙が、ドーマに反撃を許した。

「せいっ、やあああああああ!」

ドーマの投げが、ジュデルカをひっくり返し地面へと叩きつける。

受け身すら許さない鮮烈な「投げ」はジュデルカを強く地面へと叩きつけ、それでもジュデルカは素早く立ち上がろうとして。

「ヘビーウェポン」

そして、見た。明らかに有り得ない轟音を伴いながら振り下ろされるメイスを。

そして、受けた。鋼鉄のメイスでは有り得ない重量と、そこから発生する衝撃を。

断末魔すらなく、ジュデルカはノイズとなって消える。

そこに落ちたのは、一本の黒塗りのナイフ。先程ジュデルカが投げたものとはまた違う、暗殺用のナイフだろう。だが、ドーマはそれに見向きもしない。

ミリィへと駆け寄ると、その肩へヒールをかける。

「最高のタイミングでしたよ、ミリィ……!」

「え、ええ。それより、イストファ達を……」

「勿論です……!?」

言いながらドーマは周囲を確認し、ギョッとする。

そこにあったのは、先程ドーマが確認したままの戦況ではない。

イストファとカイルは、1人の重戦士と向かい合っていて。

ノーツは、1人の剣士と向かい合っていた。

2人とも、明らかに通常の幻影人とは異なる技を繰り出す……サラディア八剣の1人と思わしき者達。

そして、ドーマが何より驚いたのは……あの凄まじい技量を持つノーツが、サラディア八剣の1人と思われる幻影人に、押されていた事だった。