軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ちょっと俺の話を聞いていく気はないか?

「ギ、ゲアアアアア!?」

斬られた腹を押さえ前のめりになるゴブリンファイターの顔面を、イストファの短剣が切り裂く。

モノを知らないイストファだって、何処をやられたら拙いかくらいを多少は知っている。

本当は首を狙いたかったが、上手くいかなかったのだ。

それでも、視界は奪えた。

「ギ、ギイ……」

ゴブリンファイターが膝をつき、その背後からイストファは短剣を振るい切り裂く。

イストファの持つ剣は名剣ではなく、イストファもまた達人ではない。

故に首を斬り落とすような事は出来ず、短剣は首の骨と思わしきものに阻まれたが、それでも短剣はゴブリンの首を切り裂いた。

その勢いか倒れて地面に転がるゴブリンファイターを見下ろすと、イストファは少しだけ距離をとる。

ゴブリンはずる賢い。

死んだように見えても、生きているかもしれない。

それを確かめようとしたのだ。

「……」

動かない。死んでいる、のだろうか?

「何してる?」

横に立つ少年に、イストファは「死んでるか確かめてます」と答える。

「死んでるだろ、首切られたんだぞ?」

「そう、ですか」

イマイチ疑問に思いながらも、イストファは近くに転がっていたはずのゴブリンマジシャンの死骸を探す。

けれど、やはりゴブリンマジシャンの死骸はすでにない。

その場所にはイストファのナイフと、ゴブリンマジシャンの被っていた鹿の頭蓋骨らしきものが転がっている。

「骨兜か、外れだな」

「見れば分かりますよ……」

少しの落胆を感じながら、イストファはナイフを拾いゴブリンファイターの死骸へと目を向ける。

「あの……ちょっと相談なんですが。ゴブリンファイターの魔石、貰ってもいいですか?」

「好きにしろ。お前が倒したゴブリンだろ」

「そうですか? それなら有難く」

イストファはそう言うと、ゴブリンファイターに近づき、軽く蹴っても動かないのを確認するとその近くにしゃがみ込む。

「魔石は、心臓……」

しかし、心臓は胸部鎧に守られている。

革鎧と同じ方式なら、頭から被って着ているはずだ。

そう判断したイストファはゴブリンファイターを万歳させると、胸部鎧を抜き取っていく。

「何やって……ああ、魔石か」

「はい。消える前に取らないと」

「別にそうしている間は消えないんだから、ゆっくりやればいいだろうに」

「そんな事知らないですから……」

言いながら、イストファは外した胸部鎧を投げ捨てる。

どうせ消えてしまうのだろうから、それに全く未練はない。

ゴブリンファイターの胸元にナイフを突き刺し開けば、そこには普通のゴブリンよりもずっと大きな魔石が見えた。

それを取り出すとゴブリンファイターも、放り投げた胸部鎧も幻のように消えてなくなっていく。

「よし、これを……!」

「あ、お前何して」

少年が何かを言う前に、イストファは取り出した魔石に短剣を振り下ろす。

砕けた魔石から光の粒のような何かが吸い込まれていき、イストファの欠けていた短剣の先が完全に修復される。

「……やった!」

「んなっ!?」

驚いたように少年は一連の現象を見つめ……やがて「ああ、そうか」と呟く。

「それ、迷宮武具か。また妙なものを使ってるんだな」

「あ、はい。それで……そっちの骨はどうします? 僕は魔石を貰ったから貴方のってことでも……」

「要らん。嵩張るどころじゃないし、買い取り不可だそうだ。むしろ処分代を取られる」

「うわ……」

「なんならお前、被るか?」

「嫌ですよ……」

だろうな、と言うと少年はフンと息を吐く。

「とにかく、助かった。礼を言う」

「はい。僕こそ魔法で隙を作ってもらえましたし……ありがとうございます」

イストファが頭を下げると、少年は驚いたように目を丸くする。

「なんだ、素直に恩を売っておけばいいものを。随分とまあ」

「そんな事言われても……あ、それじゃ僕はこれで」

「いや待て。まだ名前も聞いてないぞ」

すぐにその場を去ろうとするイストファの肩を、少年が掴む。

「イストファ、ですけど。その……まだ何か?」

「俺はカイルだ。イストファ、ちょっと俺の話を聞いていく気はないか?」

「話って」

「簡単だ。俺と少し組んでゴブリン狩りをしてほしい」

コンビ、ということだろうか。

イストファは少し考えて、ステラの事を頭に浮かべる。

「パーティなら、もう組んでるんですけど」

「だとしても今は1人だろ? 俺と此処で即席のコンビを組むのに支障はないはずだ」

「そう言われても……」

いきなり言われても困る。そう言おうとしたイストファだが、大きな音をたてて手を合わせたカイルに少し気圧されて言い逃す。

「頼む! ゴブリン程度なら撲殺できるだろうと思ってきたが、いきなりあんなのに絡まれる有様だ! だが俺はどうしても此処で戦わなきゃいかん理由がある!」

そう言って頭まで下げるカイルに、イストファは困ったように頬を掻く。

「んー……理由は、聞かせて貰えるんですよね?」

「イストファ。お前、ダンジョンでモンスターを倒した時の成長現象については知っているか?」

「えっと。魔力を吸収して能力が少し上がるとか言われてるとかいうやつですか?」

「そう、それだ。それを利用して、俺は魔力を上げに来た。イストファ、お前だって冒険者やってるなら、強くなるのを忌避する理由はないだろう?」

「それは、まあ」

「なら!」

カイルは、グイとイストファに近寄る。

「ここで将来の大魔法士になる俺に恩を売って損はないぞ! なに、ずっととは言わん。俺の魔法が最低限の攻撃力を得るまで付き合ってくれ! な、頼む! 報酬はお前が全部持って行っていいから!」

「え、えーっと……それなら、はい」

「助かる!」

イストファの手を握ってくるカイルに、イストファは思わず「はは……」と引きつった笑みを浮かべていた。