軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

思ったよりもずっと厄介ですね

1本目……「ドーマの鍵」を見つけてから、数時間後。

6階層への入り口となっている建物のドアが開かれ、疲れ切ったイストファ達が入ってくる。

まずは先頭に、メイスを握った手をだらんと下げフラフラとしているドーマ。

次に、ぐったりしたカイルを背負ったイストファ。そして最後に杖で地面をつくミリィである。

イストファがカイルを床に横たえたのを皮切りにドーマとミリィが倒れこみ、最後にイストファが「ふう」と声をあげながら床に座り込む。

「ハハハ、どうだった、この階層は?」

「……凄く疲れました。鍵は全然見つからないし、普通に道歩いてても幻影人が出るし、路地裏では幻影犬が襲ってくるし……」

「幻影衛兵とも何度戦ったか分かりませんよ……」

男冒険者の言葉にイストファとドーマが答えるが、本当に大変だったのだ。

どうやら街中の巡回をしているらしい幻影衛兵は何度も現れるし、建物に入らずとも幻影人は現れるし襲ってくる。

おまけに犬までもがイリュージョンモンスターの幻影犬となって襲い掛かってくるのだ。

うっかり建物の中の幻影人と戦っている時にその全てが重なってしまえば、まさに地獄。

逃げ出さざるを得ない状況まで追い込まれて、イストファ達は今こうしているわけだ。

「思ったよりもずっと厄介ですね、この階層は……」

「まあ、まだマシな方だと思うぜ? この階層にもレアモンスターはいるしな」

「あ、やっぱり居るんですか」

「……サラディア八剣か」

「お、知ってたのか」

「その情報は買ってる」

ぐったりしたまま立てないカイルが、首だけ動かしながら冒険者の男にそう答える。

サラディア八剣。傭兵王国サラディアで傭兵王の次に強いと言われた8人の傭兵のことだ。

サラディア王都滅亡時にそのうちの何人かが巻き込まれたとされ、その彼等のイリュージョンモンスターが出現するらしい……という情報はカイルも冒険者ギルドで買っている。

「連中が出たら、もう逃げるしかねえからな」

「会った事あるのか?」

「あるぜ。そいつの情報をギルドに売ったのは俺だしな」

言いながら、冒険者の男は何処となく苦い笑みを浮かべる。

「……強かった。剣1本しか持ってねえのに、当時の仲間5人のうちの2人があっという間に斬り伏せられた」

「当時のって……なら今は……」

「ああ、そいつらは抜けちまったよ。もっと別の階層で鍛えるって言ってな。だが実際はどうだか」

あれから会ってねえしな、と言う冒険者の男にイストファは複雑な気持ちになる。

冒険者パーティというのは、繫がりが濃いように見えて実はドライだ。

互いに利益があるうちはいいが、それが相反すれば簡単に解散してしまう。

出会いと別れというものが激しく起こり得る……そういうものなのだ。

「俺は簡単にゃ抜けねえよ。心配すんな」

イストファの心中を察したかのようにカイルが言えば、ドーマやミリィも同調するように頷いてみせる。

「私もですよ。正直、今より良いパーティに巡り合えるとも思えませんし」

「ボクも同じです。恩もありますし、ね」

そんな4人を冒険者の男は眩しいものを見るような目で見ていたが……小さく息を吐くと「ま、それなら気をつけな」と言う。

「俺が……俺達が会ったのは、『第八剣のテトゥラ』だ。よく分からねえ材質の剣を持ってたが、たぶんありゃあ……グラール鋼だと思うぜ」

「マジかよ……」

「たぶんだけどな」

驚いたような顔をしているカイルだが、その理由が分からずにイストファはドーマに視線を向ける。

「グラール鋼は、鋼鉄よりも硬い金属ですね。ダマスカス鋼やアダマン鋼ほどではないそうですが、一流の鍛冶師しか扱えない金属と言われてます」

超高いですよ、と付け加えるドーマにイストファは「そうなのか……」と納得したような声をあげる。

「鋼鉄より強いってことは……僕の剣じゃ打ち合えないってことだよね」

「そのファルシオンも業物ではありますけど……無理でしょうね。たぶん打ち合えば折れずとも欠けます」

「うっ……」

流石にそんなものを相手にしたくないな、と思うイストファだったが……鋼鉄の上にそんなにたくさん金属があるのなら、ステラの言った「ファルシオンの壊れる時」は意外と早いのかもしれないと……そんな事をも思う。

「そんな心配すんなよ。たっぷり稼いで頑丈な剣買えばいいんだよ」

「……そうだね」

もしくは、今は黒鉄製となっている短剣をもっと育てれば……あるいは「そういう域」に到達できるかもしれない。

もっとも、黒鉄製となってから中々進化しない装備がそこまで到達できるのかは、今のイストファには分からないのだが。

「それよりカイル、もう大丈夫なの?」

「あー……走るのは無理だな。魔力も半分以下だ」

言いながら床に転がるカイルにイストファは「そっか」と労わるような表情を見せる。

「ドーマとミリィは……」

「私はもう少し休めば充分です」

「ボクもなんとか」

「じゃあ、もう少し休んでから、あと少し探索……でいいのかな?」

イストファの言葉に、全員が頷く。

「ハハハ、まあ安心しろよ。此処にはこれだけご同業がいるからな。何かあっても大抵の事は対処できるさ」

そんな事を言う冒険者の男に、イストファ達はなんとも微妙な表情を浮かべる。

そうした不安はあるにはあるが……休んでいる間は何かが起こる事もなく、イストファ達は再び六階層の探索へと出発する。