軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ならばその罪は裁かれるべきである

「だ、ダメです……速攻で発動できる呪いじゃ弾かれます!」

「なら僕が……!」

イストファが走り、ミノタウロスと対峙する。

真正面から見ると、その恐ろしさはビリビリと伝わってくる。

巨体と、それに相応しい斧。打ち合うのは勿論、逸らす事すら無理だろう。

一撃で短剣も小盾も砕かれて真っ二つにされる未来が見えるようだ。

なら、どうするか……答えは、1つだ。

「ブオオオオオオオオオ!」

「うおおおおお!」

ミノタウロスの振り下ろす斧を避けて、イストファはその身体を短剣で斬り付ける。

だが、筋肉の鎧に弾かれてマトモに刃が通らない。

それでもなんとか短剣を振り抜いて……イストファは自分に向かって振るわれる斧をギリギリのところで回避する。

死ぬ。一撃でも受ければ、間違いなく死ぬ。

予感ではなく直感でそれを感じ取ったイストファの息は自然と荒くなり……ドーマはそこに飛び込む事も出来ないままに、それでも盾を構えカイル達の前に立つ。

ドーマ達の目の前で繰り広げられるのは、ミノタウロスの斧を避け続けるイストファの姿。

そして、ドーマではアレを避けられないし受けきれない。

一撃なら鋼鉄の盾で耐えられるかもしれないが……それだけだ。頭を割られて終わるだろう。

「カイル、どうにか……!」

「やってはみるが、期待はすんなよ」

そう言うと、カイルは杖を構え魔力を籠め始め……やがて、杖が溜め込んだ魔力で輝き始める。

それは、赤い輝き。マンイーターを倒した時の魔法だとドーマは気づき、これならと期待をこめる。

「イストファアアア! 避けろよ!」

その叫びと同時に、イストファは床へとダイブするように飛び退いて……ミノタウロスは、カイルへとその凶悪な視線を突っ込んでくる。

「ファイアッ! ブレイドォォォォォ!!」

杖から放たれた炎が刃のような軌跡を描いてミノタウロスへと突き刺さり、その巨体を燃え上がらせる。

だが、それでも止まらない。ミノタウロスは燃える身体をそのまま突っ込ませ……ドーマが必死で構えた盾へと、その斧を叩きつける。

「く……うぁっ!」

ゴギン、という凄まじい音が響く。

硬い鋼鉄の盾にミノタウロスの斧は弾かれ、しかしドーマの手から盾が零れ落ちる。

腕はちゃんと繋がっている。だが、完全にダメになった感触があった。

盾どころかメイスも握れまい。

目の前で焦げながらも戦意を失っていないミノタウロスは健在そのもので。

再び振り上げたその斧は、走り戻ってくるイストファがどうにかするより早いのかどうか。

「ブオオオオオオオオ!」

ダメだ、殺される。

こんなところで、殺される。

振り下ろされる斧を、ドーマはそんな事を考えながら見上げて。

「あああああああああああああああああ!!」

ミリィが、杖を構えミノタウロスに向けて走るのが見えた。

その必死の叫び声にミノタウロスの斧は止まり……鈍器のように振り下ろされた杖を腕で雑に払うと、ミリィに鈍い音が響く程の蹴りを叩きこむ。

「あぐっ」

そんな声をあげたミリィは床に叩きつけられ、ゴロゴロと転がる。

同時に怒りの表情でイストファがミノタウロスを背後から斬り付け……だが、裏拳で吹き飛び地面をバウンドする。

「は、はは……強すぎませんか、こんな……」

カイルの魔法が通じない。

イストファの剣が通じない。

何か難しいものがあるわけではない。

単純な筋力による暴虐。ただそれだけの事が、ミノタウロスを怪物足らしめている。

膝をついたドーマに、ミノタウロスが再び斧を振り上げて。

しかし、そこに……ミリィの声が、聞こえてくる。

「……その暴虐が、この身体をこのようにした。ならばその罪は裁かれるべきである」

紫色の輝きが、ミノタウロスを覆って。

それを振り払うようにミノタウロスはドーマに振り下ろそうとしていた斧を振るうが、今度は紫の輝きは退かない。

「ボクは許さない。たとえ神々が許そうと、ボクはその暴虐を許さない。この罪が薄れる前に、ボクが呪神の定める法に従い告げよう」

「ミ、ミリィ……?」

自分に纏わりつく紫の輝きをどうにかしようとするミノタウロスを見もしないまま、倒れたまま……ミリィの呪いが、ミノタウロスを侵食していく。

「お前だけが無事である事を、許さない。その五体の無事を、許さない……共有の呪い!」

「グガアアアアアアアアア!?」

ミノタウロスの指が折れ、腕が折れ……斧を取り落とし、腹を押さえるようにして膝をつく。

その箇所がミリィの受けたダメージと同じであるのは偶然ではない。

自分の受けたダメージを相手にも与える呪いを発動させたミリィは「ざまあみろ」と呟いて気絶して……イストファが、ゆっくりと立ち上がる。

声をあげたりは、しない。

何故ならイストファは今、ミノタウロスの意識の「外」にいるのだ。

デュークは、言っていた。それが自分に可能かどうか考えろと。

イストファの手の中にある短剣では、上手くミノタウロスを斬り裂けない。

なら、どうすればいいのか。考えて……イストファは、夜の事を思い出す。

あの時デュークが見せた、一瞬での移動。アレを真似るように、けれど……かなり未熟に、あるいは雑に、イストファは地面を蹴る。

ドンッ、と。そんな音にミノタウロスが振り返った時には、もうイストファは其処に居ない。

そして……痛みに耐えながら取ろうとした斧は、もう其処にはない。

何故なら。

「!?」

ミノタウロスの斧を振りかぶったイストファが、其処に居る。

その不思議に、驚きに……ミノタウロスの身体が硬直し、痛む身体はそこからの動きを遅らせる。

勢いに、力に、そして重量に任せるままに……イストファの振り下ろした斧が、ミノタウロスを叩き斬った。