軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

敵から視線を背けてはならない

「はあ。それで1階層……ですか」

「うん、ごめんねドーマ、ミリィ」

「いえ、そんな……構いません」

「ええ、気にしないでください」

ドーマやミリィとそんな会話を交わしながらデュークを含めた5人が降り立ったのは、なんだか久々の気すらする第1階層「目隠しの平原」だった。

視界いっぱいに広がる草原は……しかし、ちょっと進めば自分が何処にいるかも分からなくなる不可思議な場所。

ほんの少し前にこの場所に降り立った事を思い出し、イストファはなんだか懐かしい気持ちになるが……同時に、今日此処に来た目的を思い出し気を引き締める。

「では、まず最初にカイル様から。魔法でゴブリンを倒していただけますか?」

「……ま、仕方ねえな。お前も仕事だしな」

「お気遣いに感謝いたします」

先頭を歩き出すカイルと、その後ろを歩くデュークを更にその後ろから見ながら、ドーマはイストファにそっと耳打ちする。

「……結構な大貴族だろうとは思ってましたけど、まさか王族とは驚きましたよ」

「ボクもです……お金の使い方が凄い人だな、とは思いましたけど……」

続けてミリィが反対側からコショコショと囁いて、イストファは「僕もビックリしたけど」と返す。

「でもカイルは、それで態度変えるなって言ってたよ」

「まあ……それは私も分かってますけど」

「意識はしちゃいますよね」

「そうかな……カイルはカイルだよ」

イストファのそんな言葉にドーマは「そうですね」と返し、ミリィは少し宙に視線を彷徨わせる。

「……なら、ボクは?」

「ミリィはミリィだよね?」

イストファが当然のようにそう返せば、ミリィはほんの少し微妙そうな表情になる。

実際、ミリィが期待してたのは「ミドだって分かってる」というような言葉だったのだが……イストファがすでに「ミリィ」として認識してしまっているのがよく理解できた結果となった。

「……手遅れでしたか……いえ、でもこの件が解決すれば……」

そんな事を呟くミリィにドーマは生暖かい視線を向けるが……その真横に棍棒を振り上げたゴブリンの姿が現れる。

デュークが即座に気付き、続いてイストファが反応しようとする……が、振り向かないままにドーマの裏拳がゴブリンの鼻先に命中するのが見える。

「ギャッ……」

「ハッ!」

のけぞるように姿勢を崩したゴブリンの顔面にドーマのメイスが叩きこまれ、続く頭部への一撃がゴブリンを地面へと叩きつける。

確認せずとも確実に倒したと分かる連撃に、イストファを含め全員が感嘆の声をあげる。

「す、凄いですね……今、来るのが分かったんですか?」

「あー、えっとまあ、分かっちゃいました」

「君は……そうか、神官戦士か。今のは中々だったぞ」

「うん、凄いねドーマ」

「確かにな。最初に会った頃は……いや、最初からこんなんだったか?」

カイルだけ微妙に褒めていないが、とにかく全員に褒められてドーマは嬉しそうな……少しだけ気恥ずかしそうな表情になる。

「いえ、というか……私がやっちゃいましたね。申し訳ないです」

「気にする必要はねえよ。俺は俺で……っと!」

言いかけたカイルの正面に虚空からグラスウルフが現れ、そのまま飛び掛かってくる。

「ボルト!」

「ギャン!?」

だが即座に杖を向け放たれた電撃魔法がグラスウルフを吹き飛ばし、カイルは即座に戦闘態勢に移る。

この階層に来た頃は命がけで戦う相手だったグラスウルフも、今のカイルには然程の恐怖を感じる相手ではない。

何故なら、もっと恐ろしい相手は下の階層にいくらでもいる。

それと比べれば……こんなオオカミ如き、たいしたものではない。

そして何より、カイルの魔力もあの頃とは比べ物にならない!

「くらいやがれ……ファイアブレイド!」

確実に仕留めるべく炎の刃がグラスウルフへと放たれ、黒焦げとなったグラスウルフが地面に転がる。

「……ハッ、まあ……こんなもんだな」

「お見事です、カイル様」

それを見守っていたデュークが軽く手を叩き、カイルはフンと鼻を鳴らす。

「ま、このくらいはな。どうだ、満足か?」

「ええ。陛下に良い報告が出来そうです」

「しなくていい。より面倒になるだろが」

そう言うカイルにデュークはなんとも複雑な表情をみせるが、やがてイストファへと向き直る。

「さて、では次は君だなイストファ」

「だってよ」

「うん」

イストファと位置を交代するべく歩いてくるカイルとタッチすると、イストファは前へと進み出て……しかし、そこでデュークに押し留められる。

「君が戦うのはゴブリンではない」

「え?」

思わず聞き返すイストファの腰の短剣にデュークは視線を向け、軽く頷く。

「……よし、武器も直っているな」

「え? えっと……カイルみたいにグラスウルフを相手にするみたいな」

「違う。君が相手にするのは私だ。まずは武器をもたずにかかってきたまえ」

その意味を一瞬理解できずにイストファが思わずカイル達へと振り返ったその時、イストファの肩にはすでにデュークの手が置かれていた。

「敵から視線を背けてはならない。それは致命的な隙になる」

言われると同時に、イストファは投げられ地面に転がっていく。