軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ですが、じゃねえ

その言葉通り、宿に戻ったイストファを迎えたのは、カイルの驚いたような顔と……デュークを認識した後の、これ以上ないくらいに嫌そうな顔だった。

「……おいイストファ。そいつが誰だか知ってんのか」

「えっと、なんか偉い騎士団長様で、カイルを探してる……人?」

「説明したはずだが、結局その認識なのか……まあ、完全に間違っているわけではないから構わないが」

そう言うと、デュークはカイルの前で膝をつく。

「お久しぶりでございます」

「あー、やめろやめろ。ったく……まだこいつにゃ、ロクに説明してねえんだぞ」

「然様でございましたか」

「然様じゃねーんだよ。何の用……いや、待て。お前はちょっと其処に居ろ」

言いながらベッドから立ち上がると、カイルは所在無げにしていたイストファとがっしりと肩を組む。

「おいイストファ。今から俺はどうでもいい事を言うが、それで態度を変えたりすんなよ。分かったか?」

「え、うん。カイルがお貴族様って話だよね?」

「実は、もうちょい偉い」

「……大貴族様?」

「もうちょい上だな」

「上って……」

「王族だ。第4王子なんだよ、俺はよ」

「えっ」

ヒュッと顔色が悪くなるイストファを、肩を組んだままカイルはグリグリと拳を突き付ける。

「態度変えんなって言ったよな」

「え、ええ……? でも王子様……」

「お前はその親友だって忘れんなよ。俺に『様』とかつけたらマジで怒るからな」

「ん、んんー……うん」

「よし。あとお前の装備がボロボロの件も後で聞かせてもらうからな」

そのまま肩をバンと叩き、カイルはデュークへと振り返る。

「話は済んだ。で? 何の用だデューク。俺はしばらく修行の旅に出るって伝えたはずだぞ」

「カイラ……いえ、カイル様。それについては伺っております。ですが私が本日参りましたのは、国王陛下のご意向です」

「親父が? 今更なんだってんだ」

「そう仰らないでください。陛下はカイル様の事をこの上なく気にかけておいでです」

「フン、心にもない事を言うんじゃねえよ」

カイルの言葉にデュークは答えず、無言。

それがイストファには全ての答えであるような気がしたが……デュークはしばらくの無言の後、再度口を開く。

「陛下は、カイル様の成長を見てくるようにと仰せでした」

「どうせ無駄だって言いたかったのか?」

「……こうしてお会いして私は驚きました。カイル様から感じる魔力は、前にお会いした時とは比べ物になりません」

「おだてるんじゃねえ。今の俺の魔力が平均と比べてどの程度かは、俺が一番知ってる」

今のカイルの魔力は、駆け出し魔法士よりは上という程度。

お世辞にも魔力が多いとはいえない。

「陛下は常々言っておられました。魔力が高ければカイル様こそが」

「やめろ。俺はそんなもんの為に此処に来たわけじゃねえ」

「……存じております」

「存じてねえから言うんだろ。俺は単純に魔法が好きでたまらねえだけだ。権力争いに巻き込むんじゃねえと、何度も言ったよな?」

「はい。ですが」

「ですが、じゃねえ」

そう言うと、カイルはイストファにチラリと視線を向ける。

「……だが、お前には礼を言わなきゃいけないのかもしれねえな」

「お礼、ですか?」

「お前の顔が嫌過ぎて後回しにしちまったが、イストファの事だ。どう見ても只事じゃねえトラブルに巻き込まれてるが……デューク、お前が手助けしたんだろ?」

「……はい。実は、その件にも関わるお話がございます」

「あ?」

イストファの話のせいか、先程よりは聞く耳を持っている風に見えるカイルに心の中だけで苦笑すると、デュークはイストファと会った時の事を説明する。

そして、その話を聞くとカイルはガリガリと苛立たしげに頭を掻く。

「……はあー……あいつ等は関わってこねえと計算してたんだがな。一体何が原因だ?」

「あいつ等、というのが誰かはさておきまして。恐らくは『密林のローブ』がこの街のダンジョンから発見された件かと。あれは王宮でも話題になりましたから」

「アレはパーティ名での報告のはずだぞ」

「やはりカイル様達でしたか」

言われてカイルはチッと舌打ちするが、デュークは構わずに話を続ける。

「これは私の想像になりますが……同じように『密林のローブ』とカイル様を繋げた者が居たのだと思います。そして、そんな者がどう考えるかというと……」

「無能が途端に次代の王候補に早変わりってか? くだらねえ」

「そう思わない者もおります」

「その為に馬鹿貴族を煽って隠れ蓑にして、ってか? ついでに俺と同じ年頃の連中も殺して攪乱ってわけだ」

心の底から軽蔑するような目でカイルは何処か遠い場所を見つめ、大きな溜息をつく。

「……それで? そいつを理解したお前はどうする気なんだ、デューク」

「可能であればこの街に潜んでいるかもしれない残りのアサシンの撃滅を。しかる後、王都に急ぎ戻り陛下の裁可を仰ぎます。これは王家に対する重大な犯罪です」

「好きにしろよ」

「では、アサシンの撃滅が済むまでの間、カイル様の警護もさせていただきたいのですが」

「ふざけんな。俺が王家の人間だって看板背負って歩くようなもんだろうが」

「しかし……」

「しかし、じゃねえんだよ。その派手な鎧脱いでくりゃ多少は考えたものを、明日には街中に噂が回ってるぞ」

「むう……」

残念そうに呻いたデュークだったが、やがて何かを思いついたようにイストファへと振り向く。

「では、私はアサシンに立ち向かったこの勇気ある少年イストファに興味を持ったということにしましょう。それならば、嘘ではございませんし」

「イストファ、嫌なら嫌って言っていいぞ」

「え、ええ……?」

突然話を振られたイストファは困惑するような声をあげたが……やがてデュークからの圧に負けるように「まあ、別に構いませんけど……」と呟くのだった。