軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

僕達は仲間だし、もう友達だよ

そしてイストファから一通りの話を聞いたカイルは「なるほどな……」と考え込むように頷く。

全てが偶然と考えるには、あまりにも繋がりすぎている。

ならば一連の事はウルゾ子爵の私兵による影響と考えるのが自然だ。

「……とりあえず、ウルゾ子爵の私兵どもが貼って回ってる手配書と事件に関連性があるってとこまでは確実だろう」

それは衛兵だって予想しているはずだとカイルは考えている。

だからこそ、この街では少し顔の売れてきているカイル達に会いに来たのだろう事は間違いない。

現在の被害状況の把握。つまりはそういうことだ。

「実際の襲撃犯は落ちぶれ者、ということですか? 彼等が手配書を見て事件を起こしたと?」

「可能性はある。今のところ、一番平和な可能性だ」

「……それって、実際には子爵の私兵がやってるって意味?」

ドーマとカイルの話に、イストファがそんな予想をたてて……カイルは、頷いてみせる。

「可能性は充分にある。たとえば、落ちぶれ者に攫わせて、子爵の私兵が手を下すとか……な」

「え……」

その言葉にミリィの顔が青くなり、イストファが「大丈夫だよ」とフォローを入れる。

「そんなのミリィのせいじゃないよ。大体、ステラさんのおかげで『ミド』は死んだってことになってるはずだし」

「ああ、たぶん連中も『ミド』は死亡の方向で考えてるだろうな」

「なら、どうして……」

そう、問題はそこだ。

カイルは、ステラによる「ミド」の死亡工作は上手くいったと考えている。

金級冒険者が「呪法士の武器」を拾得物として渡した事で、冒険者ギルドは「ミドの遺品」として処理する事を何も言わずとも考え付いたはずだ。

事実、ミドを連れて行ったパーティもそのように報告しただろうし、ウルゾ子爵の私兵どもの面倒さを考えれば、利用しないはずがない。

よって、もう「ミドの短剣」はウルゾ子爵の私兵に引き渡されたか売られたかは分からないが……もうウルゾ子爵の私兵の手にあると考えていいはずだ。

では、彼等は何故ミドの手配書などを用意しているのか?

何故ウルゾ子爵の下へ帰らないのか?

それが分からなければ繋がらないが……想像する事は出来る。

そしてその想像通りだとすると、とても面倒な話になってしまうのだ。

「カイル?」

カイルがその想像で嫌そうな顔になっているのを見て、イストファが心配そうに声をかける。

「たぶん、だけどな……連中が欲してるのは手柄っつーか……ウルゾ子爵への土産だろうな」

「どういうこと?」

「あー……ミドは死んだわけだ。たぶん、連中はそれには納得してる」

「うん」

「だがな、それはミドが何処かで勝手に死んだって話で、貴族的には『取り逃がした』って考える奴も居るんだよ。で、ウルゾ子爵はそういうタイプだ……って話なんだろう」

つまり、そうだとするとウルゾ子爵の私兵には現在手柄がない。

いや……ないどころかマイナスであるのかもしれない。

となると、ウルゾ子爵の私兵は今手ぶらに等しく、戻るわけにはいかないのだ。

「しかし、そうだとしても無辜の人間を殺すというのは余計にマイナスなのでは?」

「それについては、2つほど理由が考えられるな」

1つ目は、「実は生きていた」という可能性を追っているという理由。

万が一を考えれば、あくまで彼等にとってはやる価値のあることだろう。

2つ目は……これはあまり考えたくない事ではあるのだが、ミドではない呪法士を探している可能性。

これを見つけて殺す事が出来れば「ミドは殺せなかったが別の呪法士を殺した」として手柄にすることが出来る。

「そんな……」

「落ちぶれ者を使ってる以上、比重としては後者の可能性が重いかもしれねえな。呪法を使って逃げでもしてくれりゃ確定ってわけだ」

なんとも腐りきった話ではある。だが、貴族的な論理でもある。

「どうにか出来ないのかな」

「どうにかするのは衛兵の仕事だな。俺達に出来ることは一切無い」

心を痛めているイストファを見ているとカイルもどうにかしたいとは思うが、これは本当にどうしようもない。

カイルの使える力を使おうにも、どのみち王都を通す必要がある。

そして王都にはもう衛兵達が迷宮伯へ向けた使者を出しているはずであり、そちらが戻ってくる方がどう考えても早い。

それで全てが解決するだろうことを考えれば、カイルは何もするべきではない。

そして、それでもどうにかしようと考えるなら……それこそウルゾ子爵の私兵をどうにかするしかない。

だがそれはもっと面倒な事態を引き起こす。

「……ダンジョンに潜ってるしかねえな。嵐をやり過ごすのと、そう変わらねえ」

「ボクのせい、ですよね……」

「そ、それは違うよ!」

「そうですよ! 悪いのは……」

「ああ、ウルゾ子爵の馬鹿野郎が全部悪い。ミリィは悪くねえ」

イストファとドーマの台詞を引き継ぎ、カイルは溜息と共にそんな言葉を吐き出す。

「呪法差別なんざ馬鹿くせえ。ちょっと魔法の知識がありゃあ、そんなもん間違ってると分かりそうなもんだがな」

「で、ですが……」

「ですが、じゃねえんだよ。堂々としてろミリィ。お前はもう、俺達の仲間なんだからよ。だろ? イストファ、ドーマ」

カイルに言われ、イストファとドーマも力強く頷く。

「そうだよ、ミリィ! 僕達は仲間だし、もう友達だよ」

「ええ、そうですね。イストファの言う通りです」

「イストファの一番の親友は俺だけどな」

「ちょっとカイルは黙ってください」

良い事を言った直後に変な対抗意識を出し始めたカイルをドーマが呆れたような目で見て……そんな空気に包まれたミリィは……泣きながら、笑っていた。