軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それは……頼もしいですけど

「それは……頼もしいですけど、いいんでしょうか?」

「本当はイストファ達と一緒の方がいいんでしょうけど、あの宿は高いですからね」

言いながらふう、とドーマは息を吐く。

星見の羊亭。

イストファとカイル……というよりはステラとカイルの泊まっている宿だ。

迷宮都市の宿屋の中では三番目か四番目くらいに高級な宿屋であり、宿泊費は相応の額である。

ドーマの財布事情でも泊まる事が出来ないわけではないが、あまり無駄遣い出来るわけでもない。

「だよね。僕もステラさんの好意で一緒に泊まってるけど……値段聞くと顔が青くなりそうだもの」

申し訳なさそうに言うイストファだが、いざイストファが「自分の力で宿に泊まります!」と言ったところでステラが師匠権限を発動させるのでは……とドーマは考えている。

何しろ、イストファが「払える分だけでも払わせてください」と言うのを師匠権限で封じているのだ。

確か将来的な結婚が云々とか言っていたようだが……全く諦めていないように見えるのはドーマの気のせいではないだろう。

「え、一緒に? あのエルフの人とですか?」

「うん。僕の師匠なんだ」

「そ、そうなんですか……」

ミリィは説明を求めるようにドーマに視線を送ってくるが、ドーマだって上手く説明できる自信などない。

唯一理解できるのは、イストファには恋愛がどうのこうのという思考が一切存在しないということくらいだ。

まあ、そこは今どうにかすべき点でもないとドーマは考えている。

思春期というものは何かと面倒なもので、あのコードとかいう剣士のように人間関係に関してナイーブになりがちなのだ。

常にギリギリを歩んでいる現状で、そういったものは命取りになりかねない。

だからドーマは、今ミリィに必要であろう言葉だけを伝えることにする。

「ええ、そうなんです。人には色々な事情がありますが、その一つということです」

「な、なるほど?」

ごまかしだ。これ以上ないくらいにごまかしだ。

だがミリィには充分だったようで「なるほど……そうですね」などと呟いている。

「それじゃあ、早く戻りましょうか。カイルさんもお腹空かせてるでしょうし」

「そうだね」

「ええ」

暗い夜道を歩き、進む3人だったが……そんな3人を、ジロジロと見ている者達がいるのが分かる。

これ程露骨だとイストファだけではなくドーマも、そしてミリィも気付く。

「……見られてますね」

「うん。たぶん襲ってこないとは思うけど」

「警戒はしないといけませんね」

言いながらドーマは腰のメイスに手を添える。

路地裏から見ている落ちぶれ者はたいした武器を持っている様子もなく、今のイストファ達であれば容易に取り押さえられるだろうが……それが警戒しない理由にはならない。

そうして警戒しながら3人は宿への帰り道を急ぎ、無事に星見の羊亭へと戻ったのだが……そんな3人を迎えたのは、自室で果実水とナッツを楽しんでいるカイルだった。

「ん? 帰ってきたか。その荷物の多さを見る限り、買い物は上手くいったみたいだが……なんか匂うな。飯も買ってきたのか?」

「そうですけど……カイル、それは?」

包んでもらった食事を机に置いたドーマに、カイルは果実水を一口飲んで「オヤツだな」と答える。

「買ってきたの?」

「いや。ルームサービスってやつだ。街中で買うよりゃ割高なのは事実だが、こうして手軽だしな……お前等も食うか?」

言いながらカイルはイストファにナッツの皿を叩いて示し……ドーマが一つ摘まみポリッと齧る。

「でも、結構高級なやつだと思いますよコレ。高かったんじゃ……」

「いや、結構……あー、いや。うん。安物ではねえな」

恐らく結構安い、と言おうとしたのだろう……だがイストファをチラリと見るとカイルはそう言い直す。

ちなみにドーマの予想は正解で、貴族にも出せるような高級品であったりする。

「あ、カイル。お財布返すね」

「おう」

イストファに渡された財布をカイルはまたしても中身を見ずに受け取り、その様子を見ていたミリィが「確認とかしなくていいんですか?」と思わず聞いてしまうが……カイルは一瞬不思議そうな顔をした後に納得したように頷く。

「しねえよ。ていうか、そもそも信用してなきゃ財布を預けたりしねえし……最悪無くなったとしても大丈夫な額しか入れてねえよ」

「そ、そうなんです……か」

服の購入代金でかなりのものだった事を知っているミリィはイストファとドーマをチラリと見るが……イストファが苦笑しドーマが額を指で押さえているのを見て、自分の金銭感覚が間違っていない事を悟る。

「あ、それとカイル。魔石が売れたから代金渡すね」

「おう……つーかイストファ。なんかあったか?」

パラダイスバードの魔石の代金の入った小袋を机に置いたイストファだったが、カイルの指摘に「えっ」と声をあげる。

「ど、どうして」

「どうして分かったのかってか? 親友だからに決まってんだろ」

「カイル……」

「と、言いてえとこではあるんだけどな。衛兵隊の連中がさっき来てたんだよ」

言いながら、カイルは今は閉まっている窓の外を見通すように視線を向ける。

「……丁度俺等くらいの年代を狙った事件が発生してるらしい。それ絡みじゃねえのか?」