軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

その子は、お前等の

……そして、次の日。

冒険者ギルドの前には、暗い顔をして木の腕輪を見つめているミド……もといミリィの姿があった。

「……本当に登録できちゃいました……」

「あったりまえだろ。名前なんざ記号に過ぎねえし、余程有名な面じゃねえと……な」

言ってみれば、ミドの顔なんて誰も覚えてはいないのだ。

ミリィが新しく冒険者として……それも見習いとして登録したところで、覚えている人間なんていない。

逆に言うと顔が売れてきているイストファやカイルが多少変装したとしても見破られるだろうが、それはさておき。

「でも、それにしたって……」

言いながら、ミリィは冒険者ギルドの中に視線を向ける。

どうやら冒険者ギルドの中には「ミド」を見捨てた冒険者パーティも居たようだが、ミリィには全く気付いていないようだった。

……まあ、それも仕方ないだろう。

革鎧を纏っていた少年のミドと比べて、今の「ミリィ」は明らかに違い過ぎる。

「ま、これで後は……アイツが上手くやってくれればオッケーだな」

カイルの言うアイツ、とは勿論ステラの事だ。

彼女が今同行していないのは、「ミド」の持っていた呪法士の短剣を冒険者ギルドに拾得物として提出するためだ。

勿論ミドの生死などについては言及しないが……状況証拠が揃えば冒険者ギルドはミドを死亡判定するだろうし、場合によってはその情報がウルゾ子爵の私兵達に流れるだろう。

ミドはダンジョンで死んだ。

その話が彼等の中で真実となれば、この街にいる理由もなくなる。

無論、そう上手くいくとは限らないが……成功率は高いとカイルは考えている。

……それより問題なのは、だ。

「何見てんだテメエ」

じっとカイル達を……いや、正確にはミリィを見ている少年だ。

何度も会っている剣士の少年コード……そしてそのパーティの面々だ。

そのリーダーであるらしいコードが、ミリィをじっと見つめているのだ。

「……その子は、お前等のパーティメンバーなのか?」

「だったらなんだってんだ」

「ちょっとカイル……」

喧嘩腰のカイルをイストファは宥めるが、コードの視線の意味はイストファも気にはなっている。

ドーマも当然警戒態勢だが、コードの視線の理由はすぐに判明する。

「俺はコード。君の名前を教えてほしい」

「え、ボ、ボクですか? ミ、ミリィ……ですけど」

「そうか、ミリィ。突然だが、付き合っている男などはいるのだろうか」

「ええ!? い、居ませんよそんなの!」

「……そうか」

ガッツポーズをとるその姿を見れば、カイルでなくとも……ドーマにだって分かる。

いまいち分かってない顔をしているのはイストファだけだ。

「よかったら、今度一緒に食事でもどうだろう。似たような年齢のパーティ同士、色々と話せる事もあると思う」

「機会があったらな。さっさと行け、馴れ馴れしいんだよ」

カイルに虫をはらうような仕草で追い払われて、コードは嫌そうな顔をする。

「くっ……! まさかお前、その子を狙って……!」

「焼くぞテメエ。言っていい事と悪い事も分かんねえのか」

カイルにはそんな趣味は無いが、詳しく説明する義理もないしそのつもりもない。

だがコードには、何がカイルの逆鱗に触れたのかは全く分からない。

「な、ならなんで邪魔する」

「はいはーい。コード、いい加減にしなよ。今のあーた、超カッコ悪いぜえ」

「お、おいナタリア! 離せ!」

「いいぞナタリア。そのまま連れて行こう」

魔法士の少年ブリガッドに言われ、ナタリアはコードをそのまま引きずっていく。

「待て、待ってくれ! せめて次の約束か連絡先を……!」

「はいはい、超うぜえ。ねえブリガッド、こいつ縛っていい?」

「ダメだ」

言いながら去っていく彼らを見送り、イストファは「結構いいパーティみたいだよね」と呟く。

「……かもな。連中、バランスもとれてるし」

「僕達もそうじゃない?」

「んー……まあ、な」

イストファに答えながら、カイルは現在のパーティ構成を考える。

まずはリーダーの軽戦士イストファ。そして魔法士カイルと、神官戦士ドーマ。

それに加え、呪法士……もとい偽魔法士ミリィ。

正直に言って、かなり後衛よりな上に応用力があまりない。

カイルの見たところ、あのナタリアはトラップスミスだろう。

正直に言って、カイルも次のパーティメンバーはそうだろうと思っていたのだ。

しかしミリィを加えたことで、その計画は修正を余儀なくされた。

これ以上人数を増やすのは、あまり良くないからだ。

「……攻撃に幅は出るかもな」

「そっか、楽しみだね!」

気楽に笑うイストファを見ながら、カイルは頬を掻く。

呪法に関してはカイルも知ってはいるが、もしかすると4階層の突破に非常に役立つかもしれない力だ。

そういう意味では、トラップスミスよりも重要ではあるのだが……。

「ま、いいか。それより行こうぜ」

「うん」

「そうですね」

「はい!」

今回ステラは同行しない。街の状況を見極めてもらう必要があるし、ドラゴンなんてものが出る可能性は極めて低いからでもある。

そしてイストファ達がダンジョンに潜るのは……危険性を減らす為でもある。

美少女に生まれ変わってしまったミドを連れ、イストファ達は4階層へと戻っていく。