軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

何か解決策がないと、同じ事だよね

「……なんとか逃げ切ったか」

走り、途中に出てきた新手のモンスターをも無視して走り抜けて、別の山へと辿り着いて。

そこでようやくイストファ達はウインドバードの追撃を躱したと確信する。

吹雪の晴れた空には何も飛んでおらず、モンスターの1体もいない。

まるで最初の場所にいるかのように地肌の見えた地面はなんとなく安心感すらあって、カイルはイストファの腕から降りる。

「助かったぜ、イストファ」

「いや、役に立てたならいいんだけど……カイル、魔力は大丈夫?」

「ダメだな。スッカラカンってやつだ。お前と出会った当初よりも魔力がないからな。なんちゃってフレイム1つ撃てやしねえぞ」

言いながらカイルは、ぜえぜえと息を切らせて座り込んだドーマへと視線を向ける。

「で、お前は大丈夫なのか?」

「大分走ったものね……ドーマ、水飲む?」

イストファの差し出した水袋を固辞すると、ドーマは深呼吸して「ふう……」と息を吐く。

「……問題ですね」

「ああ、問題だ」

「問題って……さっきの場所の事だよね」

そのくらいはイストファにだって理解できる。

あの雪深く回避すらままならない場所で、この階層で必須のカイルの魔力を空にされた。

此処から階層守護者の場所までどのくらいあるかは分からないが、カイルの魔法なしでどうにか出来ると考えるのは甘いだろう。

……となると、それをどうにかしなければいけないわけだが……。

「ここで戻っても、結局あの場所を通るわけだから……何か解決策がないと、同じ事だよね」

「そういうこったな。どうする? イストファの体力頼りでスコップか何かで除雪しながら進むってのが最適に感じるが」

「私もそれがいいと思いますが……荷物になりますよ。イストファの動きを阻害する要因は省いた方がいいのでは?」

イストファは軽戦士であり、その本質は重い鎧を着こんだ前衛には出来ない軽やかな動きにある。

荷物が増える事でそれが失われるのは本末転倒にすぎる。

……とはいえ、他の解決策が浮かばないのも確かではある。

「……まあな。だが、どうすっかな……いっそトランスポーターを勧誘するか?」

「荷物を運んでくれる人だっけ」

「言ってみれば力自慢ですね。今後を考えれば良い選択とは思いますが、迷うところではありますね」

今のイストファ達の構成は、まずイストファが回避しながら戦う前衛、軽戦士。

中距離から遠距離に魔法を放つ魔法士、カイル。そして近距離の戦闘と防御、回復や補助魔法を使う神官戦士のドーマ。

オールラウンダーである魔法戦士のステラは今のところ数に数えないから、実質この3人でいい。

そして一見バランスの良い3人ではあるが、実際のところ余裕のない構成とも言える。

「前にトラップスミスが必要って言ってなかったっけ?」

「この階層でトラップスミスはどう考えても必要ねえだろ」

「今後を考えると必要ではありますけどね」

あれもこれもと欲張れば大人数になるが、そうなると動きづらくなるという致命的な弱点がある。

1つのパーティが3人から5人ほどで構成されているのは、その人数が最適だと先人たちが証明しているからでもあるのだ。

「……とりあえず、此処にいつまでもいるのも危険じゃないかな」

「まあな。悔しくはあるが、命には代えられねえ……戻るか」

言いながら、カイルは荷物の中から帰還の宝珠を取り出す。

こうなると、今回買えたのは幸運だったとカイル自身も思ってしまう。

カイルにとって魔力がないのは武器が無いのと同じ。イストファに全てを頼れない現状、それがどれだけ不安な事かはカイル自身がよく理解できている。

「よし、全員俺を掴んでろよ!」

そうして再び地上へと戻ってきた3人は、寒くも吹雪いてもいない地上へ戻ってくると安心したように息を吐く。

「はあ……なんかこう、戻ってきたって感じがしますね」

「マントがちょっと暑いくらいだよね」

「まあな。とりあえず、どうすっか……」

「ステラさん達が気になるんだけど」

そんなイストファの意見にドーマが頷くが、カイルは静かに首を横に振る。

「そっちはとりあえず気にしても仕方がねえだろ。今は……昼ちょい過ぎってとこか」

思ったよりは時間がたってないな……思いながら、僅かな空腹を感じカイルは「飯行かねえか?」と提案する。何をするにしても、まずは飯だと、そんな事を考えたからだ。

「そういえば、お腹すいた気もするね」

「では、何か暖かいものを食べに行きませんか? ゆっくり座れるところがいいですね」

今まで寒いところにいたせいか、ドーマがそんな提案をするがイストファもカイルもそれに異存はなかった。

「そうだな。どっかの食堂に行くか。この時間なら空き始めた頃だろ」

「あんまり高いお店じゃない方がいいな」

「この街にそんな高級店がポンポンあるわけねえだろ」

言いながら、イストファ達は街中へと歩いていく。

生き残って帰ってきたという安心感と、喜びに浸っていたからだろうか。

街中に生まれていた、僅かな空気の変化に……まだ、3人は気付いていなかった。