軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

たぶん今なら

「何か手があるんですか!? っと!」

カイルを引き寄せて氷の矢から回避させたドーマに、カイルはニヤリと笑う。

「まあな……ファイアブレイドが出来たんだ。たぶん今ならあの鳥野郎ぐらいは!」

「なら早く!」

「分かってるよ! 体は任せた!」

「はあ!?」

ドーマの抗議を聞き流しながら、カイルは杖を構え魔力を集中させる。

こうなればもう、回避している余裕などない。

ドーマに引っ張られるままの身体をそのままに、カイルは杖へと魔力を流す。

イストファに出会ってから今に至るまでの間。フレイムの魔法すら見せかけ程度でしか使えなかった頃から、今に至るまで……カイルの魔力は少しずつではあるが増え続けていた。

このダンジョンという、モンスターを倒せば倒すほど成長する不可思議な場所で、常人からすればゼロどころかマイナスに近い状況から増え続けてきた魔力は、一流……二流にも届かないまでも、ようやく戦える程度にはなっている。

そしてこの、自分の魔法が唯一の頼りというこの状況。重いプレッシャーのかかる今この状況で……カイルは、高揚感にも似たものを感じていた。

ほとんど助けにもならなかった第1階層。イストファに無理をさせ続けた今までを思い、今こそ自分の魔法が役立つ時だと、そう強く感じるのだ。

「いくぜえ……! メガン・ボルッテクウウウウス!!」

叫ぶと同時に、カイルの杖から枝分かれする電撃が放たれる。

それはボルトとは違う、強烈な雷撃魔法。

サンダーとボルトに分かれた2つの雷系魔法のうち、雷の速さと破壊力のみに重きを置いた「ボルト」系の魔法の中でも、中位に類される魔法……メガン・ボルテクス。

地上から天空へと放たれる稲妻は吹雪く空を貫き、今まで同様に回避しようとしたアイスバード達を一瞬の内に捉え叩き砕く。

「ふうー……どうだ、流石にやったろ」

「……ええ、少なくとも見える範囲には、もう居ません」

「よし、ならイストファ……は……」

振り向くカイルとドーマの視線の先。そこではすでにスノウウルフは残り1匹となっており、丁度イストファがその残り1匹のスノウウルフを短剣で斬り裂いたところだった。

「……ふう。あ、カイル、ドーマ! そっちも終わったんだね!」

「……おう」

「あのウルフも4階層のですから、1階層のより強いんですよね?」

「……かなり、な」

カイルが強くなったようにイストファも強くなっている。

スノウウルフ2体相手でも危なげなく勝利したイストファにカイルとドーマは、イストファの成長を強く感じるが……それを見守っていたステラは、2人同様にイストファの成長を強く感じていた。

出会った頃は「魔力が無く、性格が真っすぐ」というだけが取り柄だった、小さな男の子。

それが今は……魔力が無いのはそのままだが身体能力が大幅に上昇し、技術をも身に着けている。

理想的だ。実に理想的な成長といっていい。あれだけ強くなれば多少は調子にのってきても良い頃だが、その様子も見受けられない。恐らくは、性格に歪んだところが一切ないせいだろう。

どんな善人に見える人間でも僅かにでも虚栄心があれば、強くなる自分に万能感を覚えてくる。

自分こそが最強のように勘違いし、他人を見下す部分が出てくるのだ。

だが、イストファにその様子は全くない。

仲間に恵まれたのもあるだろう。カイルもドーマも、今どき珍しいぐらいに他人を思いやれる性格だ。

このエルトリアがそうなのかもと思った事もあったが、ステラの見る限りそういう人間を多く輩出するというわけでもなさそうだ。

「……ステラさん! 出発しますけど大丈夫ですか!?」

「ええ、大丈夫よ! 気にせず進んでちょうだい!」

そう叫び返せば、イストファは頷き再び先へと進み始める。

その後ろをカイル、ドーマと続き……最後尾をステラが歩く。

このまま……そう、このまま成長すればきっと、イストファは超一流の戦士として名を馳せるだろうとステラは思う。

魔力に関しては成長の余地がないのでこのままだろうし、それは大きな弱点ではあるが……ステラにとっては好ましい点でしかない。

今回この4階層で会ったのは偶然だが、こうして成長を確認できてよかったと、ステラは強くそう思う。

「……このまま成長してほしいわね」

真っすぐ、大きく……自分の予想もつかないような成長をしてほしい。

そんな事を思うステラは上機嫌で、しかしすぐに訝しげに空を見上げる。

「それにしても……やっぱり出ないわね」

ドラゴンが出た。そんな通報が冒険者ギルドにあったのは数日前の事だ。

イストファ達の出会った劣化ゴブリンヒーローや密林の追跡者の情報、そして3階層でキングスクイードと思われる目撃情報が相次いだ事で冒険者ギルドは「ドラゴン……当然劣化体ではあるだろうが、居る可能性はある」ということで、丁度街にいたステラに指名で依頼がきたのだ。

ステラも「本当にドラゴンがいるのであれば多少は面白い」と受けたのだが、その影すら見えない。

自分を避けているのかとイストファ達と行動してみていても、やはり出てこない。

「……何か別のモンスターと勘違いしたのかしらね?」

吹雪と高山という状況の中、勘違いする事だってあるだろう。

今すぐ断定は出来ないが……イストファ達の後ろを歩きながら、ステラはそんな事を考えていた。