軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

俺等はそうはならねえ

ドーマのヒールをかけられたイストファは、ちゃんと身体が問題なく動くことを確認すると「ありがとう、ドーマ」と素直な感謝の言葉を発する。

「いいえ、仲間ですから」

「カイルもありがとう。助かったよ」

「それも気にするな。ああいうのは俺の仕事だからな」

言いながら、カイルは握った拳でガッツポーズのような構えをとる。

「それより見たか!? 俺の魔法もいよいよ、一端の魔法使いレベルになってきたぜ!」

「あはは、マンイーターの時に活躍したのもカイルでしょ」

「あれはノーカンだ。最初に情けないとこ見せたからな」

「そんな事ないと思いますが……」

ワイワイと話し始める3人を、ステラの咳払いが止める。

「仲が良いのは結構なんだけど……倒したら周囲の確認を忘れちゃダメよ?」

「あ、ごめんなさい!」

ステラがいてくれる事で知らずのうちに気が抜けていたのだろうかと、イストファは慌てて周囲に視線を巡らせるが……何かがいる様子はなく、ホッと息を吐く。

「よし、進もうか」

頷き合う3人とステラは再び山道を登り始め……何の妨害もなく、広場のようになった場所に辿り着く。

ここから山頂へは道らしきものが存在せず、此処から上に登るのが正解でないだろうことが分かる。

イストファ達の目の前にあるのは、別の峰へと続く道だった。

「どう見ても、此処を進めってことだよね」

「だろうな」

「そうだと思います」

確認し合い、進もうとした時。イストファは山頂の方角から何かが飛来した事に気付き振り向く。

それは青白く美しいフォルムの鳥が数羽と……人間の大人程もある、ズラリと牙の並んだ凶悪な形の顎を備えた、翼持つ怪物。鳥と呼ぶよりは鱗の無いワニ……空舞うワニモドキといった方が近い姿だ。

それぞれの名前はアイスバード、そしてバイトワイバーンだが……わざわざ口に出して確認している暇はない。

「イストファ!」

「うん、僕はデカいのをいく!」

「よし、なら初撃は俺がいく!」

叫ぶと、カイルは杖に魔力を籠め始める。

「いくぜえ! ファイアッ! ブレイドォォォォォ!!」

ゴウ、と激しい音が響く。マンイーターを倒した時よりも濃密な炎の刃は赤い軌跡を描きながらバイトワイバーン達へと迫り、バイトワイバーンが回避した風圧でよろけたアイスバードの数羽がファイアブレイドに焼かれ燃え尽きる。

残った一羽のアイスバードはその瞬間に旋回して逃げ出し……バイトワイバーンは構わずにその巨大な口でイストファ達を噛み砕かんと降下する。

「ヘビーウェポン!」

だが、そのタイミングでドーマのヘビーウェポンがイストファの短剣にかかる。

重さを増した短剣を握り、イストファは大口を開けて迫るバイトワイバーンの前で小さく息を吸い込む。そして、バイトワイバーンが自分の鼻先に迫ろうかというその寸前に……大きく、跳ぶ。

別に何処までも高く跳ぶ必要などない。必要な高さは、その口が完全に開かれる前に鼻先まで届く程度。

開きかけた口を、上から強烈なスタンピングで閉じさせ地面に叩きつける。

「ガッ……!?」

「このおおお!」

地面に叩きつけられたバイトワイバーンの頭に、イストファの短剣が振り下ろされる。

たいした抵抗もなく突き刺さった短剣の刃はバイトワイバーンの頭骨をも砕き、一撃で絶命させる。

動かなくなったバイトワイバーンをイストファはしばらく警戒するように見つめ……やはり動かない、倒した事を確認するとハッとしたような顔で魔石を取り出し始める。

「意外に柔らかいんですね」

「顎の力はとんでもねえらしいぞ。重戦士が鎧ごと喰われた実例があるって話だ」

言いながらもカイルとドーマは周辺に視線を巡らせるが、追加がくる様子はない。

ないが……同時に気付いた事もある。それは「魔石回収したよー!」と嬉しそうに言っているイストファには言いにくい事だ。

「……この階層、滅茶苦茶魔石の回収し辛いぞ。ドロップもそうだ、どっかに落ちていっちまう」

「早めに抜けないと、お財布も寒くなりそうですね……」

「大体合ってるわよ。この階層、人気ないらしいから」

「うおっ!?」

音もなく近寄ってきていたステラにカイルとドーマは驚き振り返るが、ステラは微笑を浮かべたままだ。

「2階層や3階層の方が稼げるっていうのも皮肉な話よね。向上心が無ければ、そこに居着いちゃうもの」

「……俺等はそうはならねえ」

「期待してるわ」

「え、何の話ですか?」

駆け寄ってきたイストファにステラは「頑張ってほしいって話よ」と笑う。

その姿にフンと鼻を鳴らしながら、カイルは山々の先を見る。

「確かにこの階層は、早めに抜けるべきだが……な」

体力を僅かずつでも奪っていく寒さと、下に落ちればまず助からないという「高さ」の恐怖。

加えて稼ぎが悪いという事実は、まともな冒険者であれば足を速める理由になるだろう。

だが同時に、先程のボールバグやサンダーバードといった周囲に気を付けなければ致命的な事態になりかねないモンスターも多い。

もし、このダンジョンに作成者なんてものが存在するのであれば……そいつはかなり根性の曲がった奴だ、と。カイルはそんな事を考えていた。