軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

冒険ってのはそういうものよね

そしてイストファ達は再び4階層へと転送の宝珠で辿り着く。

冷えて澄んだ空気と、燦燦と輝く太陽。雲の上に存在する文字通り天上のこの場所は、どことなく非現実的にも思えてしまうが……確かな現実だ。

「あら、来たみたいね」

「お待たせしました、ステラさん」

イストファ達に先んじて来ていたステラは、イストファ達を見て軽く頷く。

「防寒用のマントか……いい選択ね。でも少しとはいえ戦闘の感覚も変わるから注意しなさいね」

「はい!」

「それより、そろそろ話してもいいんじゃねえのか?」

元気に頷くイストファを脇に避け……られはしないが、とにかくグイと押しながらカイルはステラを睨む。

「此処、結局何が出るんだ。わざわざ金級冒険者が受けるような仕事って何だ?」

「ドラゴンらしいわよ」

「そうか、ドラゴン……」

言いかけて、カイルは「はあ!?」と大声をあげる。ドーマも「えっ……」と驚きの声をあげていて、唯一イストファだけが何を驚いているのかが分からない、といったような顔をしている。

「マジで言ってんのか!? 4階層だぞ!?」

「そうですよ! いくらなんでもドラゴンだなんて……急に難易度が上がりすぎでしょう!」

「私もそう思うし眉唾なんだけどね。でも出るっていうんだから仕方ないじゃない」

カイルとドーマにどこ吹く風といった風にステラは肩を竦める。

ステラだって話半分だが、ギルドからの正式な依頼だから確認しないわけにもいかない。

それに……本当にドラゴンだったら、この階層を探索しているレベルの冒険者では確実に命を落とす。

イストファの事を考えた時、ステラはこの依頼を仕方なくではあるが受けようと思ったのだ。

「あの……」

「ん? どうしたのイストファ」

「そもそも、なんですけど。ドラゴンって……なんですか?」

その言葉にカイルは目を見開き、ドーマは「え……」と絶句したように呟き、ステラは口元を押さえる。

「お、イストファ……本気で言ってんのか?」

「え? う、うん。有名なモンスターなんだろうなってのは分かるけど」

「ドラゴンだぞ!? 英雄譚でも飽きるほど出てくるだろーが!」

「そんな事言われても!」

イストファの肩を掴んでガクガクと揺らすカイルに、イストファは「英雄譚なんか聞いたことないよ」と返す。

事実、英雄譚の類を歌う吟遊詩人は街の酒場には行っても、小さな農村にまでは中々行ったりはしない。

彼等の歌は商売道具であり飯の種。生活に余裕の無さそうな場所を回っているほどお金に余裕があるというわけでもないのだ。そうなると当然、そんな場所で暮らしていたイストファが英雄譚を聞いているはずもない。加えてドラゴンなどというモンスターがその辺りを散歩しているはずもないのだから、イストファにとっては国王よりも縁遠い存在でしかない。

「あのね、イストファ。ドラゴンってのは……んー、なんて言ったらいいのかしら。平たく言えば『外』にいるモンスターでは最強種の一角ね。勿論、個体差はあるし世界最強ってわけでもないけれど」

ドラゴン。その姿は個体差が大きいが、一般的に描かれる姿は全身を固い鱗で覆った翼持つ生き物である。

英雄譚では邪悪な最後の敵として描写され、「伝説の名剣」で打ち倒すのが定番だが……そんなものがなければ倒せないと言われるほどにその鱗は高い防御力を誇り、有名な「火のブレス」をはじめとした様々なブレス攻撃を持つと言われ、魔法すら操るドラゴンがいるともされている。

そして……そのドラゴンは、ダンジョンの外にも実際に生息が確認されているのだ。

「え、外に……いるんですか?」

「いるわよ。縄張り意識が強すぎて出不精だし、英雄譚みたいに人間のお姫様を誘拐したりはしないけどね」

「ボルザーグ山のレッドドラゴンは有名だな。ドラゴンスレイヤーを目指す馬鹿が死にまくるから、確か今は国軍が見張ってるはずだけどな」

そう、火の能力に長けたレッドドラゴン。風の能力に長けたグリーンドラゴン、水の能力に長けたブルードラゴン、土の能力に長けたブラウンドラゴン……等々。伝説の類まで遡れば、様々なドラゴンが確認されている。そして外に住む彼等の多くは、その怒りをかわない限りは非常に温厚……というよりは人間に無関心である。だがダンジョンの中であれば話は別だ。

ダンジョンのモンスターは全ての生物に敵対的であり、ドラゴンであっても例外であるはずがない。

そして、そんなものがウロウロしているのであれば……ステラに依頼がくるのは当然の流れでもあった。

「そんな凄い相手を……ステラさんが?」

「ええ、そうよ。まあ、この階層に本当に出るんだったらグリーンドラゴンかホワイトドラゴンってところでしょうけどね」

「つーか、どうなってんだ此処のダンジョンは。3階層のキングスクイードもそうだが、強力なモンスターが沸きすぎじゃねえか?」

カイルの舌打ちを交えた愚痴に、ステラは「そうかもしれないわね」と答える。

「私もそれなりにベテランだけど、ダンジョンに特殊モンスターが連続出現した例は知らないわ。一体何が起こっているのかは……少しばかり気になるかしらね」

「何かがあるって、ことですか?」

そんなイストファの不安げな質問に、ステラは「さあ?」と笑顔を返す。

「私は予言者じゃないもの。でも、何かが立ち塞がるのなら斬り裂いて押し通ればいいだけのことよ」

冒険ってのはそういうものよね、と……ステラはそう言って楽しそうに笑った。