軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ま、ここまでは順調だな

「……よし、カイル! ドーマ!」

振り返ったイストファの瞳に映ったのは、カイルの火魔法で消滅するゴーストと……ドーマのメイスを受け霧散するもう1体のゴーストの姿。

カツンッと小さな音をたてて魔石が落ちる音が響くと、イストファはホッとすると同時に笑顔になる。

そしてそれは……イストファへと振り向いた2人も同様だった。

「おう、イストファ。こっちも見ての通りだ」

「そちらも無事でよかった」

「うん。やったね!」

「……それはいいが、ちゃんと魔石回収したか?」

「あっ」

慌ててスケルトンの残骸へと走っていくイストファへ苦笑しながら、カイル達も自分の担当の魔石を拾い上げる。

稼ぎにするにしてもイストファの武具を育てるにしても魔石は必須だ、疎かには出来ない。

「ま、ここまでは順調だな」

「ええ、この調子なら3階層のクリアは意外と早いのでは?」

「……だといいんだがな」

悩むような様子をみせるカイルに、戻ってきたイストファが「何かあるの?」と問いかける。

そんなイストファにカイルは無言で魔石を渡し、ドーマも同じようにしたところで「たいしたことじゃねえんだが」と返す。

そう、本当にカイルの勝手な考えではあるし何の根拠もない、心配性といえばそれまでのものではある。

「まだ肝心の『仕掛け』の類が出てきてねえ。油断したところでドカンっつーのも充分に有り得るぞ」

「……それは……そうかもね」

「しかし、だとしてどうするんです?」

ドーマの言葉にイストファとカイルは悩む様子をみせ……しかし、良い解決案などすぐに出てくるはずもない。

イストファとしては「3人あまり離れずに歩こう」くらいしか言えないし、カイルも良いアイデアが出てくるわけではない。

仕掛けについてはランダムらしく、ギルドでも情報が膨大過ぎて整理できていないからだ。

「……ま、気を付けて進むしかねえな」

「それしかありませんか」

頷き合い、再びイストファを先頭に船倉の中を歩き始める。

大きな船の最下層らしきこの船倉には先程の船のように荷箱がたくさん積まれているが、そちらへも注意を向けながらイストファはふと思いついた事を口に出す。

「そういえば、あの箱の中には何か入ってるのかな?」

「調べた奴もいるらしいけどな。未確認情報しかねえ、開けたきゃ開けてもいいが、リスクしか感じねえぞ」

たとえば宝石が詰まっていたという情報もあれば、朽ちた道具類が詰まっていたという情報もあるし……スケルトンが飛び出してきたという情報もある。どれも胡散臭いが、全てが真実だという可能性だってあるのだ。

「そっか。じゃあ必要が無きゃ開けない方がいいね」

「だな」

イストファとしても、そこまで執着があるわけではない。

あっさりと興味を失うと、周囲の警戒に戻る。

木箱の陰からモンスターが飛び出してくるという事は今度は無く、上の階層へとつながる階段が目の前に現れる。

「大きな蓋みたいなのがついてるね」

「船倉への出入りを制限するためのものだろうな。ま、気にする事はねえよ」

「うん」

カイルの声を受けてイストファは階段を上り、その蓋……もとい扉を押し開けようとして。

しかし「あれっ」という声をあげて更に何度か押すが、ガチャッと音が響くだけで扉が開くことは無い。

どう考えても鍵がかかっている。だが、イストファの目に見える範囲に鍵穴など存在しない。

「……カイル、鍵かかってる。たぶん外から」

「なにィ!?」

「あー……考えてみれば当然ですね」

船倉は居住空間ではなく物資の保管所なのだから、外から鍵がかかっていて当然だ。

当然だが、それでは困る。

「くそっ、そんな情報は無かったぞ……ランダムな仕掛けってのはコレか?」

「道が塞がれるってのは困るね」

言いながらイストファは自分の真上の扉を見つめる。

金属で補強されてはいるが、基本は木製。黒鉄の短剣であれば壊す事は出来そうだが……。

「どうする、壊してみる?」

「いや待て、それは最後の手段だ。壊して何が起こるか読めねえ」

たとえばダンジョン内の有名なトラップにアラームというものがある。

その仕掛けに引っかかると警報が鳴り響き周囲のモンスターを呼び寄せるというものだが……この扉にそれが仕掛けられていないとは限らない。

調べることが出来ればいいのだが、カイルは勿論イストファにもドーマにもその手段は無い。

「チッ、トラップスミスがいりゃあな」

いれば必ずどうにかなるというわけではないが、どうにかなる可能性はある。

しかし今は無いものねだりでしかない。すぐに頭の中から消去すると、カイルは考えを巡らせる。

「……周囲を探索するぞ。ここが閉じてるってこたぁ、地図はもうあてに出来ねえ。他の道を探すしかない」

道理で地図が適当なはずだ、とカイルは毒づく。きっと誰も正確な地図など描けなかったのだ。

冒険者ギルドも無数の情報を集めて統合するだけだ。何かふんわりしているなとは思っても、気付かなかった可能性がある。

「他……別の船って事?」

「分からん。まずはこの船倉をもっと奥まで調べるぞ。何があるかも分からねえ」