軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

技術職ですからね……

「え、私ですか?」

「おう、さっきも言ったが、俺達の主力はイストファだ。だからイストファを3階層で通用するようにしなきゃいけねえんだ。意味は分かるだろ?」

カイルの言葉にドーマは少し考えるような様子をみせ……やがて「あー」と呟く。

「なるほど、聖属性の魔法ですか」

「なんだよ、使えんのかお前」

「いえ、使えませんけど」

「なら言うんじゃねえよ」

呆れたように言うと、カイルは「お前のウェポン系の魔法だよ」と答える。

「ウェポン系……ライトウェポンとヘビーウェポン、だっけ?」

確か武器を軽くしたり重くしたりする魔法だったな……とイストファは思い出す。

しかし、その魔法がどう関係してくるのかが分からない。

「そもそもゴーストっていうのは魔力の塊のようなもんだ。つまり、魔力を保持してない武器は通用しねえわけだが……ドーマのウェポン系の魔法は副次的な効果だとは思うが、一時的に『魔法の武器』を作り出す魔法なんだよ」

そもそもゴーストを斬る為の魔法の武器といったものは普通に武具店でも売っている。

単純に魔力を籠めただけのものから切れ味アップなどの効果を持つものまで色々だが……その最大の特徴は「効果が永遠ではない」ということだ。

武器に付けられた魔石の魔力を使い切れば終わりであり、その後は普通の武器でしかないのだ。

「だが、ドーマのウェポン系の魔法は一応付与魔法の部類だ。店で売ってる魔法の武器に頼らずとも、通用する武器を作れるわけだな」

「なるほど……」

頷くドーマだが、イストファは難しい顔で自分の腰の短剣を見つめている。

「なんだイストファ。分かんなかったか?」

「あ、いや。そういうわけじゃないんだけど……」

言いながらイストファは短剣を外し、2人に見せるように持ち上げてみせる。

「……迷宮武具って、魔石の魔力を吸収してるよね。それって、魔法の武器ってことにはならないのかな?」

「それは……」

「ならねえな」

迷ったようなドーマとは逆に、カイルはイストファの疑問を一言で切って捨てる。

「ソレは魔石を吸収するっていう変な機能を持ってるだけの普通の短剣だ。その短剣自体からは魔力は欠片も感じねえ……そもそも迷宮武具にそんな能力があったら、もっと広まってると思うぜ」

「まあ、それはそうか」

ゴーストに通用するならもっと使っている人は多いだろう。イストファにもそれは納得できる理由だった。

「そもそもおかしな武器ではあるんだよな。魔力を吸収するなら魔法をどうにかする機能があってもいいはずなんだが、そんな話は全く聞かねえし」

「意外と成長したらそうなるんじゃないですか?」

「どうかな……そもそも何処まで成長するのかも不明だぞ?」

確かに、それはフリートも分からないようではあったとイストファは思う。

この短剣も黒鉄までは成長したが、この先鋼鉄の武器になるかまでは保証されていない。

案外、ここまでの成長であったりするかもしれないのだ。

「出来れば……もっともっと、成長してほしいけどなあ」

「ま、それは祈るしかねえな。で、本題に戻すんだが……そういうわけだから今回はドーマの安全が優先事項になる。ぶっちゃけた話、俺がやられてもドーマとイストファが健在ならゴースト共はぶった斬れる」

「でも、それはカイルの魔法でも同じだよね?」

たとえばカイルの魔法で殲滅しても同じのはずだ。

そう考えて言うイストファに、カイルはニヤリと笑う。

「まあな。俺の魔法もそれなりに強くなってきたってのはマンイーター戦で証明された。だからお前を主力に、俺達全員が戦えるようにする。そういう作戦ってわけだ」

「それは……うん、大切だね」

誰か1人に頼りきりになるのではなく、仲間全員で支え合う。

そういう意味だと理解して、イストファは笑う。

「ところで、まだ守護者について聞いてませんが」

「ん? あー、キャプテンスケルトンとかいう骨野郎だ。単純に強ぇってだけで気をつける点はねえよ」

実際、マンイーターのような多彩な特殊能力を持っているわけでもない。

ゴブリンガード同様に「予想できる範囲」の能力を持った敵であり、ゴーストと比べれば御しやすい敵だとカイルは考えていた。

「でも、気を付けた方がいいと思うな」

「マンイーターの時にも真っ先にやられたのはカイルでしたしね」

「ぐっ、それは悪いと思ってるよ」

そっぽを向いてしまうカイルにイストファとドーマは苦笑する。

事実として、カイルはこの中で一番打たれ弱い。だから心配なのだが……。

「とにかく、対モンスターの話はこれで終わりだ! 次は3階層全体の情報共有するから、ちゃんと頭に叩き込めよ!」

強引に話を終わらせたカイルに合わせて、広げられた地図をイストファ達は覗き込む。

所狭しと並んだ船と海が書かれたそれは、地図というよりは海図にも似ている。

「連中も言ってたが、3階層からは罠を含めた仕掛けが出てくるようになる。本当ならトラップスミスを仲間に引き込みてえところなんだが……」

「罠を解除してくれる人だよね。何か問題があるの?」

「俺が想定してた以上に数が少ねえ。たぶん勧誘するのは無理だな」

「技術職ですからね……」

ちなみに冒険者ギルドでは、前衛は幾らでも余っている。

魔法士や神官、トラップスミスとしての才能がなく、かといってトランスポーターになるのをプライドが許さなかった者達が、あまり高い装備を必要としない軽戦士になっていたりするのだ。

……だがまあ、カイルがそれを口にする事は無い。

それを言う事が自分なりのこだわりを持って今の戦い方をしているイストファを多少なりとも傷つける事が分かっていたからだ。