軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

あながち間違ってはいねえぞ

「……やった、んだよね?」

目の前に転がるマンイーターの死骸を見つめながら、イストファは油断せず呟く。

死んだふりをして誘っているという可能性も捨てきれず、イストファはゆっくりと近づいてマンイーターの頭部に短剣を突き刺す。

刺した短剣は何の抵抗もなく突き刺さり……すぐにゴリッという音が響く。

その正体にイストファが気付き急いで切り開けば、そこにはイストファの手の中に納まる程度の大きさの魔石が1つ。

「カイル、ドーマ!」

「おう、これで2階層もクリアだな」

「途中どうなるかと思いましたが……やりましたね!」

駆け寄るイストファにカイルとドーマも笑みを見せ……ほぼ自然な動きで、イストファとカイルは拳をぶつけ合う。

そしてお互いに小さな笑い声を零し……そんな2人の様子にドーマが「えっ」と声をあげる。

「なんですか今の」

「え、あっ。えーと……友情の儀式的な」

「久方の大勝利だったしな」

「私聞いてませんよそんなの」

言われて、イストファとカイルは顔を見合わせる。「そういえば言ってなかったしやってなかったな」とお互いの顔には書いてある。何となくタイミングを逃していたのもある。

「友情の儀式って……なんですかそれ、ズルいじゃないですか。2人とも私には友情感じてないんですか?」

「いや、そんな事ぁねえけどよ」

「あ、それじゃあやり直そうよ。ね?」

ちょっと不満げなドーマにイストファはオロオロとしながらもそう提案し……今度は、3人で円陣を組むようにして拳を打ち合わせる。

「……ふむ、ちょっと楽しいですね」

「うし、じゃあ次の階層に行ってみるか。イストファ、その魔石はとっとけよ」

「うん」

次に来る時の為に3階層の登録の宝珠に触れておかなければならない。

それが分かっているからこそ3人はマンイーターが塞いでいた3階層への階段……森の中にポツンと存在する石の階段を降りていく。

「ねえ、カイル。3階層って、どんな場所かな?」

「ん? ああ、当然情報は買ってる。驚くと思うぞ、お前」

「そう言うって事は、きっと1階層とも2階層とも全然違う場所なんでしょうね」

ドーマの言葉にカイルはニヤリと笑って……しかし、答えない。

ついてからの楽しみだとでもいうかのような態度にドーマは軽く肩を竦め……そうして、イストファを先頭にして3人は階段を降りきる。そして、そこに広がっていた光景に感嘆の声をあげる。

「うわあ……! な、何これ!?」

「船……!? いえ、これは……」

3人が降り立ったのは、今まで同様に地面。

背後は切り立った崖のようになっており、何処かの岸壁であるかのようにも見えた。

そんな3人の目の前にあるのは、丁度その場所から乗り込めるようになっている、帆船の甲板。

だが岸壁にぶつかったせいなのか破損しており、とても航行できるような状態には見えない。

そして……何よりもイストファやドーマを驚かせカイルにも感嘆の声をあげさせたのは、同じような船が視界の先に無数に浮かんでいた事だった。

「なんだか風がしょっぱい感じがする……」

「潮の匂いってやつだな。こんな状況だからアレだが、今度は海ってわけだ……勿論本物じゃなくてダンジョンだけどな」

風に海面が揺れる音と、船がきしむ音が響く。

どこか寂しげな、けれど恐ろしげな響き。不安を誘うようなその音をそのままにカイルは周囲を見回し「お、あった」と声をあげる。

「見ろ、こんなところに登録の宝珠があるぞ。さっさと触って戻ろうぜ」

「うん」

「そう、ですね」

イストファ達は順番に登録の宝珠に触れ……もう1度、3階層の光景を眺める。

空全体に雲が立ち込め今にでも雨が降りそうな雰囲気のこの階層だが、海に詳しい者が見れば「ひと嵐きそうな天候」とでも称するだろう。

海に浮かぶ船の数々は勿論ダンジョンの生み出したものではあるのだが……イストファに思わず唾を呑み込ませるような迫力が存在していた。

「これって……なんなんだろう」

「あー……『末路の海域』っていう名前らしいぜ」

「末路?」

「まあ、確かに壊れた船ですが」

「違う違う。どうにもな、これとそっくりな場所が昔存在したらしいんだよ」

その言葉にイストファは驚いたような声をあげ、ドーマは「なるほど」と呟く。

「え、じゃあ……こんなに船が集まった場所があったんだ?」

「驚くのは其処かよ……まあ、いいけどよ。で、だ。どうにも遥か昔に存在した海賊王ザバーグの墓の辺りが丁度こうだったらしくてな。この階層の出口には、丁度その海賊王の墓らしき砦があるらしいぜ?」

「……偶然、ではないでしょうね」

「ああ。何しろ海賊王ザバーグの墓とその周辺海域は突如、消失したらしいからな。ざっと数百年前、もう誰も覚えてないような時代の話だ」

海賊王ザバーグの遺産と海賊王の後継者の地位を狙い集まって、何らかの原因によって2度と帰らなかった者達の船の集まる海域に酷似しているとされたからこそ、この3階層の名は末路の海域。

まさかその消えた場所が此処にあるってわけでもねえだろうがな、とカイルは笑う。

けれど……それは何とも怖い話だとイストファは思う。

「なんだか……その人達がまだ此処に居そうな感じだね」

「あながち間違ってはいねえぞ」

「え?」

「何しろ此処にはスケルトンやゴーストも出るって話だからな。正直、今襲ってきてもおかしくはねえ」

だから早く戻るぞ、と。そんなカイルの提案は……イストファにもドーマにも、すぐに受け入れられたのだ。