軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

8話

「とぅーるぅ、きっととぅる! きっととぅるー! るーんるんーるんっるー」

部屋の中で、私は記憶の中にあった歌を適当に口ずさむ。

髪の毛を前にだらりとさげて、四角い木箱のなかから私は四つん這いで登場する物まねを、リヤンに見せていた。

「……それが貞男?」

「うむ。これが貞男! 怖いれしょう? 私は一発で祓えるから怖くはないけろね!」

「怖い……そいつは何するやつなんだ?」

「え? うーん。箱から出てきて……呪いコロちゅ」

「なんで箱から出てくるんだよ」

リヤンの質問に、私はどう答えたらいいのかと腕を組んで考える。

テレビがないからビデオテープもないし…。

「わかんにゃい」

肩をすくめて可愛らしくポージングを決めて見せると、リヤンは可愛そうなものを見る目でこちらを見る。

その目、やめてほしい。

「想像力豊かだな。なぁ、そもそも霊力ってのも、祓うってのもどこで覚えたんだ?」

前世の話をしても、信じてもらえるかわからないし、そもそも私自身、断片的な記憶しかない。

だから、肩をすくめて見せた。

「あたち、てんちゃいなんだと思う」

そう呟くと、リヤンが 真面目な顔で答えた。

「 天才ってのは箱から出てくるお化けの真似なんてな、やらねえよ」

「まちがいにゃい」

パチンっと指を鳴らしてキメ顔とキメポーズをしたその時だった。

扉の鍵を開ける音が聞こえて、私はビクッとしながら慌てて言った。

「姿見せないようにちてね! 誰だろう」

私は扉の方へと向かうべきかと思いながらも、少し怖くて、扉を開けるとそこから覗き込んだ。

私達がいるのは二階の私室。

手すり越しに入り口から侍女が入ってくる姿が見えた。

数名の侍女は私を探している様子だ。

「ココレット様。ご主人様がおよびでございます」

「どちらにいらっしゃいますか」

すると、屋敷の奥の方へと向かった侍女が慌てた様子でかけてきた。

「……手付かずのパンが、捨てられていたわ。一週間に一度、使用人がごみを捨てに集めるところに」

「え? じゃあ……なにを食べていたの?」

「ほ、ほら、スープとか」

「スープだけ?」

「しかもあのスープって、味のない、あれでしょ?」

「えー……えぇ。たぶん」

私はその様子を見て、少しむっとなる。

ご飯も適当に気が向いた時にしかくれないくせに、私のお世話もなにもしてくれないくせに、お父様に連れてこいって言われて、私が食べてないことに、たぶん焦っているってことでしょう?

私が痩せてたり死んでたりしたら、きっと自分達のせいになるから。

悲しいなぁ。

私は、本当にその程度の存在なんだな。

むっとしてた気持ちが悲しみでへこんでいく。

すると後ろから、私にだけ見える状態のリヤンが呆れたように呟いた。

「おい、なにへこんでんだよ」

「だって……かなちぃ」

ついしょぼくれてそう言うと、リヤンが小さくため息をついてから、悪い笑顔を浮かべた。

「はぁ……今こそ貞男の物まねの成果を見せる時だろ。いけ! トト貞男!」

「ふぇぇぇ?」

いけ? リヤン適当すぎない?

最初こそそう思ったが、たしかにリヤンの言う事にも一理ある気がしてきた。

ここ最近、やることがないからと極めてきた貞男の物まね。発揮するならば今しかないかもしれない。

私は覚悟を決めると、リヤンに向かってうなずいた。

「やってみりゅ」

「援護は任せろ」

私とリヤンは拳を軽くぶつけ合い、気合いをいれた。

侍女達はため息をつく。

「とにかく、ココレット様を探しましょう」

「旦那様も、酷いわよね。あぁ、もう。もし死んでたらどうする?」

「でも、旦那様もそこまで怒らないんじゃないかしら。むしろ良かったと思われる可能性もあるわよ」

「たしかに。だって、不気味な子だったものね」

「そうよ。それにしても、この屋敷も古いわねぇ」

「ええ。汚いし」

「やっぱり掃除したほうがよかったかしらね」

「ええー面倒くさいよぉ。どうせあの子、放置子でしょ? 奥様なんて、早く死なないかしらってこの前言ってたわよ」

「えぇ!? 実の子に? 奥様って旦那様の前だとか弱い女性なのに、豹変の仕方がすごすぎるわぁ」

「まぁ、能力もぱっとしなかったみたいよ」

「そうなの?」

「らしいわ」

「それで結局能力なんだったの?」

「なんだったかしら……待って、なんだか寒くない?」

その時、冷ややかな風が屋敷を吹き抜けていった。

「え?」

「なに?」

ガタガタと窓が音を立て、次の瞬間、勢いよく突然開いていく。

一つばかりでなく、どんどんと立て続けに開いていくものだから、侍女達は悲鳴を上げて1ヵ所に固まった。

「きゃぁぁぁ!」

「なに!?」

「ゆ、幽霊!?」

ーーーーーギシッ…ギシッ

階段上から聞こえてくる軋む音に、皆がゆっくりと視線を上げた。

四角い箱があった。

それが開くと同時に、長い髪の毛がだらりと垂れ下がっているのが見える。

そして、細い手が、ゆっくりと伸び、床に着く。

「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」

四つん這いになり、ゆっくりと階段を這ってくるそれを見た瞬間、侍女達は悲鳴を上げて我先にとそとへと飛び出していった。

「きわぁぁぁぁ!」

「化物!!」

「いやぁぁぁぉ!」

押し合いながら逃げていくその背を見送った私は、顔を上げるとやった!と、その場で跳び跳ねた。

「わぁい! うまくいった! リヤン! 窓開けるタイミングナイスゥらよぉ!!!」

「完璧だったな」

私達はハイタッチをすると、侍女達を追い返したことを喜んだのであった。