軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

43話

その後、話し合いは終わり私達は部屋を出た。

エトワール殿下とルディウス殿下と共に少し散歩でもしようと誘われ、王城の庭へとリヤンを伴って散歩へと出る。

出来ることならば、部屋に帰りたかった。

私は、リヤンにこそっと言った。

「部屋にどうにかちて、帰れないものか」

「無理だろ」

「かーえーりーたーい」

「だまれ」

私はリヤンに抱きかかえられており、甘い物でも食べたいなぁと空を見上げながら考えていると、私が飛び込んだ池の前についた。

もう行けと言われても、池に飛び込むつもりはない。

池に沈む感覚を思い出し、ぶるっと身震いする。

エトワール殿下が池の縁にしゃがみ、水面を見つめながら言った。

「兄上が、ロケットペンダントを、池に投げ捨てたとは思いませんでした」

「それは……あの時は、悪かった」

ルディウスの謝罪に、エトワールは、首から下げているロケットペンダントを握り締めて言った。

「いいんです。兄上は、兄上なりに、私のことを考えてくださっていたと、分かっていますから」

この会話、私いなくてもいいのではないだろうか。

すると、エトワール殿下が振り返り、私をじっと見つめて言った。

「ココレット嬢。あの時、ペンダントを見つけて下さりありがとうございました」

「え?」

「ん? あのペンダントは……ココレット嬢が見つけたのか。あ……池に落ちたって……あの時に?」

「あー……あい」

ルディウス殿下が驚きこちらを見ている。

私は、ここで私に話しが振られるのかと思っていると、エトワール殿下の横を、蝶がひらひらと飛んでいく。

もう、メアリー様の姿はそこにはないけれど。

「あの時、竜が私達を攻撃しようとして、やめた、あの時、私は確かに、メアリー姉様の気配を感じたんです」

「エトワール……それは」

「えぇ。私の、ただの妄想かもしれません。でも、そう思ったんです」

きっと。

きっと、メアリー様はこれまで何回も何回も何回も。

家族が少しでも幸せになれるようにと、自分の能力をちょっとずつ使ってきたのだと思う。

そしてそれが、私に、繋がった。

エトワール殿下が私の方へと歩み寄ると、真っすぐに目を見て尋ねた。

「ココレット嬢は、どう思いますか?」

私は微笑んでうなずいた。

「きっと、そうだと思いましゅ」

エトワール殿下は、私の言葉に嬉しそうに微笑んだ。

その微笑みは、七歳らしいものであり、とても可愛らしくて。

それでいて。

メアリー様に、本当によく似ていた。

その後、城下町の壊れた建物の修復がなされ、王国は平穏を取り戻していった。

発熱により寝込んでいたベーレン司教様はその後体調が悪化し、司教の座を辞したそうだ。

御神体については、王国を竜から守るために壊れてしまったのだと発表された。

祈りの乙女として選ばれていたミーナはかなり落ち込んだそうだけれど、緘口令が敷かれた故に、どこにも話すことが出来ずにもんもんとしているらしい。

あれから、私はまだ、公爵鄭の自分の家に帰っていない。

国王陛下から、怪我が治るまでは王城に滞在してほしいと言われて、お言葉に甘えて、のんびり、過ごしている。

「ふわぁっ。お茶が、うっまい」

リヤンの淹れてくれた紅茶を私は飲みながらほっと息をついていると、リヤンがつまらなさそうに呟いた。

「……暇だ」

「そうらねぇ。幸せだねぇ」

どうやら、王城にとどまっていることがリヤンには不服らしい。

最近リヤンは、他国の情報などを仕入れては、ここに行ったらどうか、旅に出よう、そんな風に誘ってくる。

ただ私にはまだここでやるべきことがある。

「ココレット」

「やぁ、ココレット」

「ふぇ?」

名前を呼ばれ、私は振り返ると、そこには、着飾った両親の姿があった。

お父様、お母様……二人ってこんな見た目だっただろうか。

前世の記憶を思い出すまでの私は、お父様とお母様に会えるだけで、本当に嬉しかった。

お父様とお母様には特別な何かがって、一緒にいられるだけで幸せだったのだ。

けれど、今、魔法が解けたかのように二人の輪郭がはっきりと見える。

私を見る視線には嘲りが含まれ、本当ならば会いたくない。そんな空気を纏っていた。

その姿を、ぼうっと見ていると、リヤンが小さな声で言った。

「喰ってやろうか?」

「……だめらって」

ことあるごとに喰ってやろうかと言わないでほしい。

だが、どうしてここへ?

不思議に思っていると、侍女さんが来て言った。

「申し訳ございません。どうしても、娘の様子を見たいとおっしゃられまして、国王陛下が渋々許可をだしたそうでございます。国王陛下より、”すまない。何かあればすぐに騎士に言い追い返しなさい”とのことでございます」

「ふへぇ。しゅみません。ありがとうございます」

国王陛下。渋ってくれたのか。ありがとう。

そんなことを想いながら、私はちらりと両親の後ろに憑いている、悪霊と生霊とを見る。

久しぶりなので、二人にひらひらと手を振ると、友達かのように振り返してくれた。

お父様とお母様は私が手を振っていることにきょとんとした顔だ。

「ココレット。調子はどうだい? そろそろ、家に帰って来てはどうだろうか」

「そうよ。お母様も、貴方が心配なの」

おっと、どういうつもりなのだろう。

呪い子の私はいないほうがいいのではないだろうか。

そう思っていると、お父様が言った。

「お前の名前が、エトワール殿下の婚約者候補の筆頭に上がった。部屋も公爵家の本館へと移して用意してある」

「とても喜ばしいことね。おめでとう」

なるほど。

私は可愛らしくきゅるるんとしたお目目をパチパチとさせながら言った。

「ふへぇ。いいんれしゅか? あたちをボロボロの別邸に幽閉しなくてもぉ」

その言葉に、周囲に待機していた侍女さんや騎士さん達が、ぎょっとした顔で、お父様とお母様を見る。

お父様もお母様も顔を引きつらせ、拳をぎゅっと苛立たし気に握るのが見えた。

きっとここに侍女さんや騎士さんがいなかったら、叩かれていたんだろうな。

さて、どうしたものか。

私は少し考えてから、ちょっとくらいやり返すかと、にっと笑みを浮かべた。