軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1-5 盗賊のアジト探索

日暮れ近くになって2人は小高いところから廃墟に見える村を見下ろしていた。雨はポツリポツリと降りだしており、かなり肌寒い。追跡してきた足跡はいずれもその村の中に向かっていた。

「あの廃村に入ったみたいだね。あと1時間雨が降り出すのが早かったら見つけられなかったかもしれない。とりあえず無事盗賊連中の根城にたどり着けたってことかねぇ」

バーバラの言葉にアルは頷く。その廃墟の村は襲撃をうけたところからは結局北に8キロほど行った荒地と森との境目あたりだった。周囲の畑は荒れ放題となっていて、一見したところだれも住んでいないように見える。こういった辺境では開墾に失敗して誰も居なくなった村というのはたまにあり、ここもそういったところのひとつだろう。だが、よく見ると害獣除けの柵は上手にカモフラージュされつつも整えられていたし、村長のものだったらしい一番立派な家と一番大きい建物である教会の扉と窓が閉まっているところを見るとその2つを利用しているようだった。

「もう少し近づいて詳しく調べていいですか? 残ってた人数が少なかったらいいんだけど……」

バーバラは当たり前だと言った様子で頷いた。2人は見張りなどに注意しながら慎重に村に近づき始める。ある程度まで近づいたアルはまた手袋を脱ぐと地面に手を付けた。

『 知覚強化(センソリーブースト) 』 -触覚強化

地面を伝わる振動から人数を導き出していく。

「立派な家にかなり居るけど……建物の中は反響があって難しいな……10人以上は居そうだけど……何か探し物でもしてるみたいに歩き回ってます。教会にはたぶん2人です。こっちはじっとしてますね」

「ふぅん、その 知覚強化(センソリーブースト) の呪文で話し声は聞こえないのかい?」

バーバラの言葉にアルは首を振った。

「歩く振動とかは意外と遠くまで響くんですが、声は風の音とかに紛れるんでもうちょっと近づかないと難しいですね。 浮遊眼(フローティングアイ) 呪文が使えたら良かったんですが、そっちはまだ無理です」

いろいろと魔法が使えそうな彼も万能ではないらしい。

「いいさ、もうすぐ日が暮れる。どこかに行くにしても夜が明けてからだろう。しばらく様子を見るよ」

バーバラは村を見下ろす位置で茂みの陰に膝をついた。アルも躊躇することなくその横に身を隠す。彼女自身、斥候の専門職というわけではないが、それに劣らぬほどの経験と技能を身につけていると自負していた。だが、彼の働きはそれに遜色ないものだった。中級学校を卒業したばかりの少年がそれほどの技を身に着けているというのに感心した。

「若いのになかなか良いね。領都の冒険者ギルドじゃ斥候職としてやってたって言ってたけど、あっちはそんなにレベルが高いのかい?」

「こういう追跡とかは幼い頃からやってたからかな。うちは一応村の領主という事になってましたが、山の中の村ですから農作業ができる土地もあまりなくて、小麦どころか大麦すらもろくに採れず、まともに税収なんてありませんでした。それなのに領主としての仕事は山積み、なので家族全員が働かない訳にはいかなかった。僕も幼いころから父たちに狩りや採集を教わり、初級学校の終わりごろには一人で山に行ってたんです。おかげで領都に来てからは冒険者としてやっていけてます」

そう言ってアルはまた地面に手をついて呪文を行使した。周囲に何かいないか確認しているにちがいない。魔法使いが行う索敵というと先ほど彼が言っていた 浮遊眼(フローティングアイ) 呪文だが、あれを使える魔法使いも数が少なく大抵は騎士団に所属して高い給料をもらっているはずだ。彼が使っている呪文はあまり聞いたことがないものだが、こうやって一緒に活動していての感想から言うとかなり役に立ちそうでもある。

「なるほどねぇ、でも、中級学校行きながらどうして冒険者なんてやってたんだい? さっきの話だったら魔法をずっと勉強したかったんじゃなかったのかい? 素直に魔法ばっかり勉強してたらよかったじゃないか」

その問いにアルは苦笑いを浮かべた。

「そりゃぁ、僕もできればそうしたかったです。でもそう言えるような余裕はとてもありませんでした。父は気にするなって言ってくれてましたが、金銭的には厳しかったんです。とは言っても、中級学校をあきらめるっていう選択肢も選びたくはなかった。先生に魔法を教えてもらえる機会なんてなかなかないですからね。なので少しでも学費を補うために在学中も稼ぐ必要がありました。それに、もちろん卒業後も魔法を引き続き研究したいと思っていたので、そのためにも冒険者の道を選ぶのが一番の近道だろうとも考えたんです」

初級学校は10才までだ。もちろん行きながら家業を手伝ったりする子供は多いのだが、1人で蛮族や魔獣の出る山に行き、狩りや採集まで行うというのは珍しい。その経験が斥候職としての今に結びついているということだろう。それに、呪文を学ぶのに金がかかるというのはバーバラも聞いたことがあった。一つの呪文の書を買うのに数金貨、場合によっては数十金貨払う必要があるらしい。たしかに普通の仕事でそれだけの金を貯めるのは難しいだろう。

「それなら騎士団に雇ってもらったほうがいいんじゃないか? あんたの腕なら採用されるだろう。それこそナレシュ様にお願いしたら一発なんじゃないかねぇ」

「うーん、僕ぐらいの魔法使いは他にもいると思いますし、騎士団に入ったら戦争に役立つ呪文ばっかり憶えさせられて自由に研究はできないでしょう。それに、僕の夢は第4階層呪文を見つける事なんです。騎士団に入るとそれもできなくなる」

「そうかい、なるほどねぇ……いろいろわかったよ。まぁ、あんたも頑張りな」

彼の年齢でこれほどの魔法使いは他には居ないと思ったが、これ以上の話は盗賊たちを片付けた後で飲みながらでもすることにしよう。バーバラはそう考え、改めて周りを見回したのだった。