軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

30-5 侵入経路調査 前編

アルとターナー卿がブライドン、フラーの案内された部屋に行ってみると、そこは城の地下にある食堂であった。隣の厨房からは肉を焼いたりスープを作ったりしているおいしそうな匂いが漂ってきている。そこで2人は空になった食器を前に何か熱心に話し合っていた。他のテーブルにはここで勤務しているのであろう数人の従士や従者らしい男女の姿も有る。

そこに入っていくと、全員がアルに気づき慌てた様子で席から立ち上がり直立不動の姿勢になった。

「あー、そのままで大丈夫です。楽にしてくださいね」

ここまで身構える必要もないのにと思い、アルはそう言った後思わず頭を掻く。

「 ゴーレム(マスターオブ) 頭(ゴーレム) 閣下、御用であればお呼び下さればいつでも駆け付けます」

駆け寄って来たブライドン、フラーはそう言う。彼らの言うように、そうしたほうが迷惑にならなかったかもしれない。ここまでとは思わなかった。今度からは気を付けよう。

「ありがとう。2人がどうしているのかと思ってね。それにこの城の魔道装置についても早く調べたい」

このまま待っていると、調査開始は明日の朝になりそうだ。先程の歓迎式典のようなものは政情不安を抱える彼らの事情でしかない。アルがそれに最後まで付き合う必要はないだろう。

「わかりました。ここに案内してくれた者に話をしてみます」

念話(テレパシー) 呪文で直接クウェンネル男爵や従士のクリントンに連絡することも出来なくはないが、そこまでの事態でもない。それのほうが良いかもしれない。

「うん、じゃぁ、おねがいするね」

駆けだした2人を見ながら、アルはターナー卿と共にテーブルに座り、直立不動で立っていたこの城に仕えている他の従士たちに身振り手振りで緊張することはなく食事をつづけてくれればよいと伝えるのだった。

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しばらくして、クリントンを筆頭にお揃いのタバードを身に付けた男女がやってきた。

「すぐに調査に入られると伺いました。申し訳ありません。かなりの距離を移動してこられたのでてっきり今日はもうこのまま休憩されるものと思い込んでおりました。失礼いたしました」

ターナー卿は3時間程の 飛行(フライ) 呪文で魔力切れを起こしていたし、休憩するのがもしかしたら普通なのかもしれない。だが、アルにとっては逆にこれが普通なのだ。

「忙しいのにご苦労様。気にすることはありません。警備用の魔道具について聞きたいです。それとそれを統括するような魔道装置ってこの城にはありますか?」

アルの問いに従士たちは顔を見合わせたが、すぐに軽く頷き合った。

「本来、警備を担当する者のみが知る話ですが、このプレンティス城の西の塔に城内警備を統括するための部屋がございます。そこには城内に設置された警備用の魔道具からの情報が全て集約されるようになっております」

「なるほど。まずはそれぞれの警備用の魔道具について確認させてください。その後、統括するための部屋に案内をおねがいします」

どういう仕組みになっているのだろう。テンペストの王城では、それぞれの警備用の魔道具が配置されている小部屋に待機し、魔道具の装置の上に浮かぶ情報を見て伝令を走らせるしかないのだ。

「全部の警備用の魔道具を回られるのですか?」

その口ぶりではかなり数があるのだろう。だが、全部見なければ意味はない。

「そうですね。全てお願いします」

「かしこまりました」

クリントンは他の従士たちに口早に指示を出す。おそらく関係する部署に事前の通達を出しているのだろう。

「ではまいりましょうか」

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プレンティス城内に設置されていた警備用の魔道具はテンペストの王城にあったものとよく似ていた。それぞれの魔道具の上には呪文を使用しているアルとターナー卿の存在が表示されていたので、魔力切れを起こしたりはしておらず、正常に動作している事も確認できた。ただし、テンペスト王城のようにそれを確認している者は誰もおらず、それぞれが置かれた小部屋は施錠されていたのだった。鍵については、現在、クウェンネル男爵配下の騎士団で厳重に管理しているらしい。もちろん 解錠(オープンロック) 呪文では開けられるだろうが、当然魔法の反応が出るので痕跡が残らずに部屋に入ることは難しそうだ。降伏以前に鍵を複製していたのではないかと疑ったが、警備関係の部屋の鍵は取り換えたらしいのでその可能性は無いようだった。

次にアルが案内された西の塔の一室は一辺およそ10メートルの広い部屋であった。入口には金属鎧を身に付けた男が2人立っていて警備は厳重である。部屋は窓がなく少し暗くなっていて、部屋の中央には直径1メートル、高さも1メートルほどの滑らかな円筒形をした魔道装置が置かれており、その上にプレンティス城を模した半透明の幻覚の立体が浮かび、そのあちこちに水色と青に光る点が広がっていた。光る点の上には小さな数字も浮かんでいる。中にいた5人ほどの男女はアルたちが入って来ると揃って敬礼をした。

「お邪魔しま……」

アルは途中で言葉を失い、部屋の中央の魔道装置をじっと見つめて近づいていく。

「ねぇ、これって、プレンティス城だよね。この光点は呪文と魔道具の反応、この塔の上の所で緑の光る点の1つはもしかして僕かな?」

アルは以前、 魔法の竜巻(マジックトルネード) の杖の捜索でこの都市に来た時にプレンティス城を空から見たことがあり、映し出されている幻覚が今の姿とでは少し違っているところもあるものの大まかな造りは変わっていなかったので、すぐにわかったのだ。

アルが今居る西の塔にあたる場所には黄緑に光る点が1つ、緑に光る点が7つである。光る点が魔道具の上に出るというのは以前、レビ商会で借りて調べた事のある警備用の魔道具と共通のものだ。あの装置は光の色で透明(赤)、幻覚(青)、魔法(緑)を区別し、魔道具からみての方向と光の強さで位置と距離を示していたが、これは魔法をさらに魔道具(黄緑)と呪文(緑)に細分化し、光点の位置を調整して幻覚と合わせることでわかりやすくしたのだろう。テンペストの王城やユージン子爵の別荘にあったものはレビ商会で使われていたものと似たようなものだったのだが、プレンティス城のものはそれらよりさらに機能が上なのかもしれない。

“アリュ、口調がくだけすぎてるから気を付けて”

グリィに注意された。興奮していたらしい。

「その通りです」

中にいた5人のうち、一番年上の男が少し誇らしげに答えた。この部屋に来る途中にクリントンに聞いた話では、この部屋の5人のうち、2人はテンペスト王国騎士団のメンバーだが、3人はプレンティス侯爵家が統治していた頃から継続している専門家ということだった。この男はその専門家に該当するのではないだろうか。このような魔道装置の運用担当者を簡単に交代出来ないという事だった。

「すごいですね。魔道具関連ではプレンティスのほうが色々と進んでいる感じがします」

“誰でも見えるようになっているっていうのはすごいね。同じような情報はテンペストの王城でも王城管理の魔道装置や王族権限を持つ者の所有となっているアシスタント・デバイスなら入手できているのだけど、言葉でしか言えない。上手く見せる方法がないのよ。研究塔も同じ。建物の幻覚を出して、該当する位置を光らせるのは良いアイデアだわ”

グリィも感心したような声を上げている。しかし、これだけの魔道装置があっても侵入者を防げなかったのか。

「ここでは、常時監視を?」

「はい、交代制で常時5人による監視体制です。入口の衛兵は2人となっています」

その5人が揃って買収されたりすることはあり得るのだろうか。3人は元プレンティス侯爵家に仕えていた者たちだが、2人はテンペスト王国騎士団だということを考えると可能性は低いと思う。一応心の片隅には置いておく必要があるのかもしれないが、それよりも別に問題があるかもしれない。

アルは警備用の魔道具を案内してもらった時に城全体を覆えておらず、通路でも端を通れば警備用の魔道具の範囲外になるようなところがあるのに気が付いていた。これはグリィが現在居る座標や案内してもらった警備用の魔道具が設置されていた位置を詳細に把握できていたことや、 魔法発見(ディテクトマジック) 呪文の効果範囲を細かく変更できることから判った事だ。そしてここにあるプレンティス城の幻影を見たときに実際の城と異なっている部分があった。これから類推すると……。アルは説明をしてくれた専門家に尋ねた。

「もしかして、プレンティス城って改築が行われた事がありますか? その時に警備用の魔道具の設置位置ってずらしたりしました?」