軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28-2 新たな知らせと冒険者アルの問い

「具体的に聞かせてもらえますか?」

アルが真剣な顔をしてそう答えると、コールは嬉しそうにニヤニヤとして何度も頷いた。

「そなたに興味を持ってもらえているのは嬉しい。私がその話を聞いたのはケリーという第2魔導士団の大魔導士だ。彼女はエマヌエルとヴェールがピジョン通りにある怪しげな魔道具を扱う店に出入りしていると不平を言っていた。彼女によるとそこは蛮族と関わりがあるともっぱらの噂で、栄えあるプレンティス侯爵家の、それも大魔導士を争う二人がそんなところに出入りするのはどうなのかと私に意見を聞きに来たのだ」

何がそれほど嬉しいのか、アルは首をひねりつつ話を聞いた。いつ頃の話なのだろう。エマヌエルが出て来るという事は、アルがエマヌエルを倒す前の話だろう。しかし、蛮族に関わりのある魔道具店……か。それも2人が出入りしていたとなると、たしかにアルが気にするような行動と関わりがあるかもしれない。

「エマヌエルやヴェールの所属している第3魔導士団は様々な潜入工作を請け負うために特殊な役割を果たすことが多い。手段を選んではおられんのだろうと私は彼女に説明した。だが、それは余計彼女の癇に障ったらしい。彼女は以前から第3魔導士団が行っている活動でも、あまりにも手段を択ばなさすぎると不満があったようなのだ。最終的には彼女は叔父様に相談してくると言って怒って去っていってしまった」

「ケリーというとケリー男爵ですか? まだ若い、プレンティス侯爵家と血縁関係にある女性ですよね。叔父様というとプレンティス侯爵その人なのかな? 彼女は蛮族を駆除すべきものと考えていたのでしょうか?」

アルに問われて、コールは自分の眉を掻いた。

「確かにそのケリー男爵閣下だな。だが、彼女の叔父様というとプレンティス侯爵閣下ではなく、おそらくウィートン子爵閣下の事だろう。彼女の考えを詳しく確認はしなかったが、蛮族と関わりを持つ、助けを借りるといったこと自体が気に入らぬ様子であったな」

プレンティス侯爵家の大魔導士にそのような考えを持つ人間が居るのは助かる。全員を敵に回さずに済むならそれに越したことはないのだ。パトリシアから交渉してもらいプレンティス侯爵家の蛮族工作を止めることができる可能性も出てきた。そうなると、あとはそのピジョン通りにある怪しげな魔道具を扱う店の方だ。その店が残っていると結局、また同じことが繰り返されるかもしれない。もちろん蛮族に関わりがあるという噂が本当でなければ問題はないかもしれないが、……調べてみたほうが良いだろう。

「具体的な店の名前とかわかりますか?」

「たしか、《鋭い牙》だったはずだ」

魔道具屋とは思えない名前で、確かに蛮族に関わりがありそうな雰囲気があった。行ってみるかなとふと考える。

「まさか、プレンティス侯爵家の領都に行こうとしているのではあるまいな? その姿では絶対に捕まるぞ」

もちろん、そうだろう。どちらにせよセオドア王子に騎士団とは別行動をするという了承を得る必要もあるのですぐに出発なんて無理だ。アルは判っていると頷く。コールは言葉を続けた。

「せめて、私たちに 運搬(キャリアー) 呪文のオプションの説明をしてからにしてくれたまえ」

心配しているのはそっちだったか。

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アルはセオドア王子に別行動をしたいと希望を出したが、セオドア王子はもちろん、その幕僚であるビンセント子爵、パーカー子爵も非常に忙しいようで誰にも面会の機会すら得られなかった。国境都市パーカーの衛兵隊長のニコラス男爵やビンセント子爵の護衛である女性騎士のベロニカには話をしてみたが、上役の許可がないとダメだとにべもない。バネッサとコール、スタンレーがそれをいいことに何度も説明を求めにアルの滞在場所にやってきて、アルが作った呪文の書のシンボル集に感心したりしているだけであった。

アルも仕方なく、彼女たちの相手をしながら、まだ未習得の呪文の書の習得に勤しんだのだった。

そういう状況が、3日続いたある日の昼頃、パトリシアからアルに契りの指輪を経由して念話が届いた。

“アル様とセオドア王子殿下は、共に国境都市パーカーにいらっしゃるのでしょうか?”

どうしたのだろうか。毎晩のようにパトリシアとは念話で話をしているし、状況は変わっていない。

“うん、一緒だよ。とは言ってもセオドア王子殿下はお忙しいようで話はできていないけど……”

“そうなのですね。実はこちらの新生第1騎士団長ペルトン子爵や旧セネット伯爵領で陣を構える新生第2騎士団長パウエル子爵の尽力でシルヴェスター王国側との親書のやり取りが可能となりました。そのため、和平条約の締結についてシルヴェスター王国、セオドア王子殿下に申し入れをしようと考えています”

ついにか。今までは亡命状態のパウエル子爵や、タガード侯爵家がシルヴェスター王国に支援を求めていた形にしかすぎず、唯一の生き残りであるパトリシアとの正式な国交はない状態だった。パウエル子爵が率いる騎士団が問題なくパトリシアの指揮下に入り、新生テンペスト王国としてようやく国交樹立ということなのだろう。

“おー よかったね”

“はい。これも、アル様がラムジー様の信用をうまく勝ち取っていただいたおかげです”

ラムジー様、テンペスト王都に居た元伯爵で元騎士団長のあの初老の人か。アルは手紙を渡し、他には盗聴の魔道具を見つけた位しかしていないが、まぁ役に立ったのなら良かった。

“それで、条約締結に当たっては、セオドア王子殿下との直接会談を申し込むつもりです。場所としては旧セネット伯爵領領都あたりを考えています。その際に、非公式な形ですがセオドア王子殿下に、アル様が自由に今の冒険者としての行動を許していただけるようにおねがいしようと考えています。アル様としてはそれでよかったでしょうか?”

パトリシアがそう言ってくれているのは、レイン辺境伯騎士団に勝利した後、セオドア王子がアルに言った事や、使者が到達した際にビンセント子爵たちと話していた内容を伝えた結果を配慮してくれているのだろう。その上で、テンペスト王国側としても冒険者としての行動を許すということは、束縛するつもりはないという意思を伝えようとしてくれているに違いない。

いや、それで納得してしまっていいのだろうか? アルは頭を何度も掻く。ここで特に反応できなかったせいで、今までずっとパトリシアたちに甘えたまま、状況にながされてしまっているのだ。

“ちょっと待って、パトリシア。えっと……もちろん、セオドア王子にはそれでいいんだけど”

そこでアルは言い淀んだ。ぎゅっとグリィのペンダントを握りしめる。

“アル様?”

“えっと……パトリシアがテンペスト王城を取り戻してからになるんだろうけど……。パトリシアが女王になったとしても、僕はこの契りの指輪を手放したくない。ずっとパトリシアとこうやって念話をしていたい。そして、こっそりテンペストの王城にも忍び込みたい。さっき、パトリシアは自由に行動をと言ってくれていたけど、冒険者アルにはその自由もあるんだろうか?”

遂に言ってしまった。焦りながら問うたアルの言葉にパトリシアはしばらく返事をしなかった。意味は通じたのだろうか? 都合の良い申し出であることは重々わかっている。だが、アルとしてはこれが精一杯なのだ。

かなりの時間が経ったようにアルには思えた。しばらくして、パトリシアの焦ったような……そして嬉しそうな声が返って来た。

“も……もちろん……です。いつでもお待ちしています。あっ あの、できれば、来られるときには少し前に連絡を……”