軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

24-1 チャニング村の安全確認

レビ会頭やエリックの救出を祝った翌日、チャニング村の様子が気になったアルは、レビ会頭たちに様子を見てくると告げ 飛行(フライ) の呪文を使って空路、村に飛んできていた。

一応、パーカー子爵がマーローの街を治める代官であるマーロー男爵や父に手紙は出してくれているのだが、小さな村のことでもあり、心配であったのだ。

遠征軍に従軍している長兄ギュスターブやナレシュたちについても気にはなっていたのだが、こちらは一足先に屋敷に入っていたルエラから、現在、遠征軍は旧セリーナ伯爵の居城のあった領都セリーナを包囲中で、大きな損害は発生していないと聞いて、一安心していた。状況がわかっているということはもちろん連絡もとれているということだろうし、今の所は大丈夫なのだろう。

村を見渡せる丘の上に立ち、父に 念話(テレパシー) を送る。村の様子はいつもと特に変わったようには見えなかった。

出発前にレビ会頭にいきなり村に顔は出さずに、外から 念話(テレパシー) などで事前に連絡をとったほうが良いと勧められ、確かにその通りだと思ったアルはおそるおそる 念話(テレパシー) 呪文を使う。なんとなく面映ゆい。

“父さん。元気ー?”

“アルフレッド? アルフレッドか? これは??”

父ネルソンの反応はかなり混乱しているようだった。 念話(テレパシー) 呪文を受けるのは初めてなのかもしれない。

“これはね、 念話(テレパシー) 呪文だよ”

“そうなのか……。こんな魔法もあるのだな。とりあえずアルフレッドは無事か。少し安心した”

やはり心配をかけていたらしい。アルとしても、父の反応を見る限り、特に異変はなさそうなので一安心だ。

“いろいろとあってね。村に行っても問題なさそう?”

“いや、良くない。今も賞金目当ての冒険者たちがずっと屋敷の周りをうろうろしている。だが、母さんたちもアルフレッドには会いたがるだろう。暗くなってからこっそり家に来られるか?”

そんな事になっているのか。2時間かかったが、来てよかった。その冒険者はプレンティス侯爵家の魔導士が仮装した姿である可能性もないわけではない。どうやって行こうか。 隠蔽(コンシール) 呪文でもよいが、 動物(アニマル) 変身(トランスフォーメーション) 呪文で小鳥、いや以前ヒースと会った時と同じようにケーンの姿を借りて行くほうが着替える手間などもなくて楽かもしれない。

“赤毛の冒険者に化けて行くよ。ケルって名乗る。30分ぐらいでつくかな。怪しまないで村に入れてくれる?”

“大丈夫なのか? すぐばれるような仮装じゃないだろうな”

父は心配してくれているが、普通なら大丈夫だろう。誰にでも因縁をつけてくるような連中でさえなければ。そして、そういう連中なら呪文を使って対処しても問題ないのではないだろうか。

“なんとかするよ。仮装としては完璧”

“わかった。村の入口までネヴィルに迎えに行かせる。赤毛の冒険者で名前はケルだな”

アルはよろしくと言って、 念話(テレパシー) を終えた。 探知回避(ステルス) 呪文の対象にできる呪文は3つだけなので、 動物(アニマル) 変身(トランスフォーメーション) 呪文以外で残せるのは2つだけになる。どれにするか迷ったが、 浮遊眼(フローティングアイ) 呪文、 魔法感知(センスマジック) 呪文の2つにして、それ以外の呪文は解除しておく。ケーンに変身し、3つの呪文には 探知回避(ステルス) 呪文を使う。

「グリィ、大丈夫だよね?」

浮遊眼を少し浮かばせ、自分自身の姿をぐるっと見ながら、グリィにも尋ねてみる。 魔法感知(センスマジック) にうっすらと反応するのは釦型のマジックバッグだけ。これは襟の裏につけて見えないようにする。これでどこからどうみてもかけだしの冒険者……。いや、鎧や剣は新人にしては使い込まれ過ぎているだろうか。

“たしかに鎧はちょっと良すぎるかもだけど、大丈夫じゃないのかな? 中古の物を買う冒険者も居るんだし……”

じっと観察されれば怪しまれるかもしれないが、今回はネヴィルが迎えに来てくれる予定なのでさっさと行けば大丈夫だろう。アルは村の入口に急いだ。

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村の入口では従士のネヴィルと一緒に妹のメアリーが待っていた。見知らぬ男の二人組も居て、一応身を隠しているつもりなのか、積まれた麦束の山の陰に座り込んでいる。魔法はまったく感知しない。大丈夫そうだ。

「こんにちは。ネヴィルさん、メアリーさんも」

アルは陽気な声で二人に話しかけた。見知らぬ男二人もじっとアルの様子を見ながら話し合っているが、すこし落胆した様子で首を振っている所を見ると、アルではないと判断してくれたのではないだろうか。

「やぁ、君がケルさんか。よろしく」

「ケルー? よろしくね」

アルは大丈夫そうだと胸をなでおろしつつ、ネヴィルたちにお辞儀をする。2人は品定めをするようにアルの姿をじろじろと見て、眼を合わせて頷きあう。納得してくれたらしい。

「よろしくおねがいします」

ネヴィルたちに迎えられたアルはそのまま見張りの2人の男たちの前を通り抜け、屋敷に早足でむかったのだった。

「アルフレッド、アルフレッドなのよね? 無事でよかった」

屋敷の居間に入るなり、少し涙を浮かべて迎えてくれたのは、母のパメラであった。他にもネルソン、兄のジャスパー、姉のルーシーも居る。

「うん。ちょっとまってね。呪文を解くから」

そう言って、アルは 動物(アニマル) 変身(トランスフォーメーション) 呪文を解除して元の姿に戻る。部屋にいた皆は驚きに眼をみはった。

「すごいな。ほんとアルの呪文にはいつも驚かされる」

父は驚嘆の声を上げた。他の者たちも驚いている様子である。

「心配かけてごめんね。それも、今回はいろいろと迷惑もかけてしまってるみたいでさ」

「何を言ってるんだ。胸を張ればいい。パーカー子爵様がアルは謀略に巻き込まれただけで、悪い事はしていないから安心してよいってわざわざ手紙をくれたんだ」

ジャスパーがそう言いながら、嬉しそうにアルの肩を叩く。

「ジャスパー兄さん、子爵は閣下よ。様じゃないわ」

ルーシーが嬉しそうな表情のまま、冗談交じりの口調でジャスパーの言葉を窘める。今まではあまり細かい事を言う姉ではなかったのだが、長兄のギュスターブが騎士爵を叙爵し、次兄であるジャスパーがネルソンの名代を務める可能性が出てきたというので礼儀作法について気にしているのかもしれない。

「そ、そうだな。パーカー子爵閣下だ。でも、子爵閣下が手紙をくれるんだ。これはすごいことじゃないか?」

ジャスパーは言い直す。パーカー子爵の手紙をアルはみていないが、この様子からすると詳細な話を伝えてくれているのかもしれない。ありがたい事だ。

「それでも、賞金目当ての冒険者が来てるんでしょ?」

アルが尋ねると、ネルソンがすこし渋面をつくりながら頷いた。

「そうだ。3日程前から、村に見知らぬ冒険者が10人ほど来てな。その中の1人にネヴィルが声をかけてどうしたんだと聞いてみた。最初は渋っていたらしいが、少し酒を飲ませたら、アルフレッドに金貨100枚の賞金がかかっているとマーローの街の冒険者ギルドで評判になっているというのを白状したんだ。ここに来ている連中は、元々仲間同士というわけでもなかったらしいが、アルフレッドがこの村の領主の息子だというのをどこかで聞きつけた連中らしい。今もこの屋敷と村の入口を交代で何人か見張っている」

「えええええっ 金貨100枚? そうなんだ……10人も?」

村の入口に居たのはそのうちの2人ということだろう。印象的には柄の悪そうな連中だ。チャニング村に住んでいる者は少ない。何か問題があった時には基本的に領主であるネルソンを中心に従士が居て、あとは男性の村人たちが手伝ってもらって対処するのである。もし10人を相手に力づくでという話なら大変な事になるし、怪我人がでるかもしれない。

「うむ。まだ何か悪い事をしているというわけではないが、村の外れの広場にテントを張って寝泊りしていてな。村の女性では怯えているのも居る。一応、ルーシーやメアリーたちにも1人では出歩くなと言ってある」

「ちょっと待ってね」

アルはそう言って、 浮遊眼(フローティングアイ) の眼を屋敷の周囲をぐるっと移動させてみた。確かに屋敷の裏口あたりに、村の入り口に居たのと同じような風体の男が2人居た。村の外れの広場を見てみると、そこに居たのは7人で、焚火で何かの肉を炙りつつ、まだ明るいのに酒を飲んでいる。持っている武器や鎧からして、腕が立ちそうなのは居らず、領都でいうセブンスネークのような悪名高い連中ほど悪い人間には見えない。もちろん魔法の反応などなかった。

プレンティス侯爵家がちょっかいを出してきてないか心配をしていたのだが、この戦力だとそんなことはないだろう。せいぜい近くのマーローの街を治めるマーロー男爵がチンピラまがいのことをしている冒険者に情報を流したといった程度ではないだろうか。

「微妙だけど、それほど腕が立つのは居なさそう」

「そう見るか」

自信が無さそうな父にアルは軽く頷いた。ギュスターブなら脅かして追い出せるかもしれないが、彼は遠征中だ。アルが顔を出すのは逆に賞金首をねらう連中を集めてしまう事になるだろう。どうすればよいだろうか。

「僕の冤罪についてはギュスターブ兄さんも行っているテンペスト王国への遠征軍が帰ってきたら解決するはずだから、それまではちょっと我慢して欲しい。とは言ってもこのままなのはちょっと問題だろうから、知り合いの冒険者に頼んでみるよ。オーソンって覚えてる?」

彼なら、あれぐらいの連中の相手なら難なくあしらえるだろう。まだ国境都市パーカーに居るはずである。以前、此処に滞在して一緒にカクレホラアナグマを狩ったこともある。彼が無理ならレビ商会の傭兵で手の空いているのが居ないか聞いてみるというのでもいいかもしれない。

「ああ、彼なら信頼できそうだ」

「オーソンさんは頼りになるわ」

おや? ルーシーの反応が良い気がする。気のせいだろうか。

「オーソンか、知り合いの人にしばらく滞在できないかお願いしてみるよ。出来るだけ早く来てもらうようにする」

「わかった。頼むよ」

「おねがいね。アルフレッドも気を付けるのよ」

アルはにっこりと微笑んで頷いた。

「じゃぁ、僕は早速、パーカーに戻って調整してくる」

アルはそう言って 動物(アニマル) 変身(トランスフォーメーション) 呪文を使い、ケルの姿に戻った。みんな再びその効果に目を瞠っている。

「気を付けるのよ」

「うん。じゃあまたね」

アルは軽く手を振って、急いで村を出ると、ふたたび空を飛び、国境都市パーカーに向かったのだった。